救出と成仏
画像はマツオウジ。
2009年4月24日、名古屋市内にて撮影。
公園内の松の古い切り株に、唐突に生えていた。


まるで何処かのキャラみたいだw

こんな目立つ場所に、目立つ形のキノコだから
誰かに悪さされないか、ちょっと心配だ。

近くに転がっていた松の丸太からも
マツオウジが何本も生えていた。

こちらはもう少し育つのを待ってから収穫しようかな。

5日後、様子を見に行ったら
数本が折り取られていた。
しかも、縦に裂かれたり
細かくちぎられた物が周辺に捨てられいた。

左側の物がそれ。
散らばっていた物を集めて
生き残っていた個体と並べて撮影した。

キノコは何故かその様な扱いを受ける事が多い。
食毒関係無く、意味も無く踏み潰されたり
蹴り折られている事が多いのだ。
恐らく、キノコは気味悪い、と言う
先入観を持っている人が多いからなのだろう。
だが、このマツオウジは
一部は縦に裂いて捨てられていた。
キノコに多少興味がある人が
「縦に裂けるキノコは食べられる」の話を知っていて
それを試してみたのかも知れない。
で、縦に裂けたは良い物の
結局気味悪がって投げ捨てた、
と言う事だったのだろうか。

このままでは残ったマツオウジも
どんな目に遭わされるか判らない。
踏み潰されたり、蹴り折られたりするのも可哀相だ。
それに、此処の所晴天続きで
やや干からびて来ている。
更に晴天が続くそうなので
このままでは今後の成長は望めず
ただ干乾びて枯れてしまうだけだろう。
それも勿体無い。
なので、採取して持ち帰る事にした。

こちらは例のヤツ。
どうやら無事だった様だ。


成長して、更に何処かのキャラっぽくなっているw
だから蹴り折られずに無事だったのだろうか。

早速収穫。



「ぎゃ〜〜〜〜っ!!」
と断末魔が聞こえてきそうだw

他の生き残っている物も合わせて収穫。




折角なら、と、料理上手でキノコ好きな友人に郵送。
その際、
 「是非丸焼きにして相棒に喰わせるべし!」
とメッセージしたら
本当にそうして食べさせたらしいw

こう言う食べ方で、実際に美味しかったのかどうかは不明……

とにかく、これでこのマツオウジ達も
無駄死にする事無く
無事成仏出来た事だろう。
(-人-) ナム〜


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| ヒラタケ科 | 00:09 | comments(0) | trackbacks(0) |
掘り出し物
2009/05/09の事。
名古屋のオオセミタケはもう終わってしまった様だ。
今年は発生が早かった分、終わるのも早かった。
この日、やっと見付けた1本も、既に萎びていた。

これでは資料として送る事も出来無い。

標本として採取するのも忍びない。
コイツには、このまま此処で胞子を飛散して貰って
7年後の再会を待つ事にしよう。
だが、一応念の為、
掘り取りをして確認だけはして置こう。

早速掘り出しを始めたのだが
木の根が邪魔をして寄主が取り出せない。
根切りで何とか切断して引き抜き
寄主を取り出す事に成功した。

その後、この個体は埋め戻した。


所で、根を引き抜いた際に
何かが飛び出る様にしてボトッと落ちた。
何だろう、と拾い上げてみると
それもセミの幼虫だった。
そして、体から何か出ている。

こ、これは?

なんと、ツブノセミタケだった。
オオセミタケのすぐ隣に
ツブノセミタケがあったのだ。
全然気付かなかった……
それこそ、思わぬ掘り出し物だ。

ツブノセミタケはオオセミタケと違って
子実体が何年にも渡って成長して行く。
図鑑によると、子実体を発生させて
4年目にやっと結実をするのらしい。
見た所、このツブノセミタケは既に
2〜3年は成長していた様に見える。

今まで気付かなかったなぁ。

ツブノセミタケはひたすら地味で
更に地上部が小さく目立たないので
結構気合いを入れて探さないと
中々見付けられないのだ。
ちょっと油断をしてしまっていた。

オオセミタケと違って
ツブノセミタケは寄主が地下深くにある場合が多い。
更に、柄が細い為に
掘り出そうとしても
途中でギロチンをしてしまう事も多い。
所が今回は、柄が短かったとは言え
無傷の状態でポロッと出て来た。
この様にツブノセミタケが
偶然の機会に寄主と子実体が
無傷で掘り出される、と言う例は
多分少ないだろうなぁ。

で、このツブノセミタケ。
まだ子実体が生えかけなので
経過観察をする為に埋め戻す事にした。
そして、当方には判る様に、
それでいて他の人には判らない様な、
ちょっとした目印をして置いた。

06/12、その後の様子を見に行く。
埋め戻したツブノセミタケは無事に定着している様だ。

良かった。
このまま、また胞子を撒いて欲しい物だ。

ついでに周辺を探索する。
すると、更に未熟なツブノセミタケを発見。


数えたら、全部で11体見付かった。
此処はちょっとした壷だった様だ。

こちらの個体には子嚢果が形成されていた。


茶色のツブツブが子嚢果だ。
と言う事は、この子実体は4年目、と言う事になるのだろうなぁ。

試しに1体掘り出しに挑戦する。

だが、寄主は深くにある様だ。
かなり掘り進めないと届かない様子。

なので、今回は此処までで諦めて埋め戻した。
また暫くして子実体が成熟したら
別の個体でチャレンジしてみようかな。

偶然とは言え、この場所にオオセミタケ以外の
セミ生冬虫夏草が発生している事が判った。
ひょっとしたら、他の種類もあるかも知れないなぁ。
これから注意して探してみよう。
この場所の楽しみが、また一つ増えたw


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| 昆虫寄生菌 | 00:01 | comments(5) | trackbacks(0) |
マスタケはややこしい
以前、ヒラフスベの事について記事を書いた(→こちら)。
その中で、アイカワタケ、ヒラフスベ、マスタケの3種の関係は複雑だ、として
論文要旨の紹介をした(→こちらの論文要旨の2段目)。
(以下、その内容の引用 改行:まねき屋)。 
日本産のアイカワタケ属3分類群
(アイカワタケ‘Laetiporus sulphureus var. sulphureus’auct. jap.,
マスタケ L. sulphureus var. miniatus,
ヒラフスベ L. versisporus) の関係を
分子系統解析および交配試験によって明らかにした.
核リボソームDNAのITS領域,elongation factor 1αおよび
βtubulin領域の系統解析の結果,
日本産のアイカワタケ属菌は,管孔が黄色いタイプのマスタケ,
管孔が白いタイプのマスタケ,
アイカワタケ/ヒラフスベ Iグループ,IIグループの4つに分かれた.
ヒラフスベはアイカワタケと同一のクレードに属することから,
アイカワタケのアナモルフであることが明らかになった.
アイカワタケ/ヒラフスベの菌株の中には,
1菌株内にDNA多型がみられるものがあった.
また,3領域で,グループI および IIに属する菌株の
組み合わせが異なった.
アイカワタケ/ヒラフスベグループは二つの個体群が交雑して
形成されつつある個体群である可能性が示された.
単胞子分離菌株を用いた交配試験では,
管孔が黄色いタイプのマスタケ,管孔が白いタイプのマスタケ,
アイカワタケ/ヒラフスベの3グループに分かれた.
以上の結果より,日本産のアイカワタケ属菌は
従来の解釈とは異なる3分類群に分けられることが明らかになった.
論文の文体に馴染みが無く、専門用語を良く知らず
加えて読解力に欠けていた為に
判った様な判らない様な、やっぱり良く判らないなぁ……と思っていた。

マスタケとアイカワタケは外見上とても良く似ている。
当方はアイカワタケにはまだ出逢った事は無いのだが
マスタケは何回か画像に収めている。
こちらは2006/09/09、岐阜県内にて撮影した物。


長辺が30cm近い、大きな個体だった。

見上げると、雄大に感じた。

所で、マスタケと、幼菌のシロカイメンタケは
外見上とても良く似ている、と言う(→こちら)。
外見で見分けるポイントとしては
シロカイメンタケはあまり重生しない、環紋が無い点、との事。
上のマスタケ画像は、その点シロカイメンタケとやや判断が難しいが
多分マスタケで合っていると思う。

こちらの画像は典型的なマスタケだと思う。

2004/09/19、岐阜県内にて撮影。


『日本のきのこ』では、 マスタケは針葉樹生、
アイカワタケは広葉樹生、ヒラフスベは材上生と一応書かれているが、
実際にはマスタケの項に
アイカワタケとは傘の色の違いと針葉樹生の点で区別されるが
中間型とみなされる物もある
と、悩まされてしまう事が書かれている。

『原色日本新菌類図鑑』では、
マスタケはアイカワタケの変種とした
としながらも、「再検討が必要である」とも記述されている。
また、世界各地、日本各地からの採取例を上げ
両種の分類について問題提起をしている。

その後に刊行された『北陸のきのこ』ではマスタケの項で
以前は広葉樹に発生し
黄色子実体のものをアイカワタケ、
針葉樹に発生し朱色のものをマスタケとして区別したが
最近の研究結果から統一された
と記述されている。 

その上で、上記の論文を読むと、何だか良く判らなかったのだ。


所が、『緑化樹木腐朽病害ハンドブック』と言う本を見ていたら
その辺りの事が、非常に簡潔に記されていた。
【アイカワタケの解説文より】
従来アイカワタケとヒラフスベは別種と考えられてきたが
最近の遺伝子解析による研究で同じ種であることが明らかにされた。

【マスタケの解説文より】
最近の遺伝子解析を用いた研究により、
針葉樹に発生するマスタケ、広葉樹に発生するマスタケ、アイカワタケは
それぞれ別種らしいことが分かってきた。
つまり、ヒラフスベはアイカワタケの別形態であり
実は同一種だったのだ。
そして、マスタケには針葉樹タイプ、広葉樹タイプがあり
広葉樹タイプのマスタケが、アイカワタケと混同されたのが
混乱の原因だった様だ。

だから、以前の日記で当方が

 アイカワタケ、マスタケの中の
 厚膜胞子を形成する性質が突出して進化したのが
 このヒラフスベなのかも知れないなぁ。

と、偉そうに書いた部分は明らかに間違っていた事になる。

ヒラフスベが管孔を滅多に形成しない、有性生殖をしない、と言うのも
アイカワタケが無性生殖をする為に成長した物が
ヒラフスベだった訳なのだから、それも当然だろう。

常に新しい情報を元にしないと
この様に間違った事を書いてしまって
恥をかく事になる、と言う典型的な事例だなぁ……

過去記事を今更全面改訂も出来無いので
此処に訂正させて頂きます。
ヒラフスベ達に対して
誤解を与えてしまっていましたらお許し下さいませ。


所で、最近また
「白いキノコ」「白いきのこ」の語句での検索が増えています。
ヒラフスベの幼菌をその語で検索している例もある様です。

こちらは2005/08/09、東京の井の頭公園にて撮影。
ご参考まで。


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| 多孔菌科 | 00:00 | comments(2) | trackbacks(0) |
予想的中
今年の3月26日の事。
とある場所を歩いていて、クマゼミの屍骸を拾った。
その場所は、道路に面した、ちょっとした林の周縁部。
歩道から丁度目の高さにあった法面の
雑草に絡まる様に転がっていた。
咄嗟にぱっと拾ったので、転がっている状態の画像を
撮る事をうっかり忘れてしまっていた……

セミの屍骸をわざわざ拾ったのには理由がある。

画像で判る様に、この屍骸は翅がボロボロだ。
この時期はまだセミは出て来ていない。
なので、当然このクマゼミは
前年の夏に出て来た物だ、と言う事になる。
半年以上の風雨に晒されたので、
この様に翅が風化してしまったのだ。

一見、当たり前の事の様だが、実は不思議な事なのだ。
セミに限らず、昆虫の屍骸は
通常ならばアリにすぐ運ばれて、地上には残らない。
だが、この屍骸は半年以上も放って置かれているのだ。

この場所は、車道に面した地面とは言え
林の隣接部なので、アリが棲んでいないとは考え難い。
つまり、このクマゼミの屍骸は
アリが持って行きたがらなかった物なのだ。
それは何故か。

冬虫夏草等の昆虫寄生菌は
寄生した屍骸がアリに運ばれて
分解されてしまっては自分が成長出来無い。
その為、菌はそれを回避する為に、
忌避物質を出してアリに運ばれるのを防いでいる、と言う。
と言う事は、このクマゼミの屍骸は
何かの菌に寄生されているのでは無いだろうか。
だから翅がボロボロになるまで放って置かれているのでは無いだろうか。

と、気になったので、拾って持ち帰り
培養してみる事にしたのだ。
この様に、転がっているセミの屍骸から
発生する物としては「セミノハリセンボン(→こちら)」が考えられる。
なので、それが出て来る可能性が高いのでは無いだろうか。

で、11日後の4月7日の様子がこちら。

チョロチョロと針状の物が出ている。
矢張り、このクマゼミの屍骸は
セミノハリセンボンに寄生されていたのだ。

こちらは4月11日の様子。

更に針が出て来た。

こちらは4月15日の様子。


こちらは4月20日の様子。


こちらは4月28日の様子。

すっかりハリセンボンになったw

こちらは5月14日の様子。

全身胞子だらけだw

アップで見ると、シモバシラの霜柱みたいに見える。

(シモバシラの霜柱→こちら

通常、セミノハリセンボンの子実体は
まち針状と言う事になっている。
だが、画像の物はまるでシモバシラの様だ。
考えるに、自然下では常に風の刺激を受けている為に
胞子は形成されるそばから飛ばされている。
だが、タッパの中で追培養していると完全な無風状態だ。
胞子は飛ばされる事無く次々に形成されて行くので
数珠繋ぎ状に塊になってしまうのだろう。
それが丁度シモバシラの様に見えるのだろう。


所で、このクマゼミの屍骸は
ご覧の様にセミノハリセンボン菌に感染していた。
だが、環境が合わなかった為に発生する事が出来無かった。
じっと潜伏し、発生出来る環境になるのを待っていたのだ。

セミノハリセンボンの発生には十分な湿度が必要だ。
だが、この屍骸があった元々の場所は、
とても乾燥した場所だった為
そのままでは発生する事は出来無かった筈だ。
セミノハリセンボン菌が
どれだけの期間、屍骸内で潜伏が出来るのかは判らないが
そう何年も待ち続ける事は出来無いだろう。

とすると、この屍骸はセミノハリセンボンの発生が出来無いままに
やがて朽ち果ててしまう事になっていたのかも知れない。
または、風に飛ばされ道に落ちて
人や車に踏み潰されていたかも知れないし
ゴミとして処分されていたかも知れないのだ。

セミノハリセンボンは、
『冬虫夏草図鑑』には「各種の林内地上に無造作に発生する」と
記載されている様に、
本当に無造作に転がっているセミの屍骸から発生する。
遥か昔々は車道や住宅地など無く
何処でも森や林だったろう。
なので、何時寿命が尽きて、どんな状態で転がろうと
セミノハリセンボンは発生しやすかったのだろう。

だが、その頃と環境はすっかり変わってしまった。
セミノハリセンボンの発生に向かない場所が
あまりにも多くなってしまっている。
なので、今回のクマゼミの屍骸の様に
感染しても子実体を発生させる事の出来無い個体も
少なくないのでは無いだろうか。

してみると、時々街中の歩道や、ベランダに
セミの屍骸が転がっている事があるのだが
それらもひょっとしたら「保菌者」なのかも
知れないのだよなぁ……

これからそう言うのを見付けたら
可能な限り培養してみようかなw


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| 昆虫寄生菌 | 00:00 | comments(4) | trackbacks(0) |
薄紅……か?
以前、ウスベニイタチタケの事を書いた(→こちら)。

その記事中で、

 乾燥気味の時、と言う特殊な状態を元に命名されても……

との内容を書いた所、ある人から

 新種登録の際、基準になる標本(タイプ標本)は乾燥標本だから
 乾燥状態で命名するのは当然では?

とのご指摘を頂いた。

成る程、確かにそうかも知れない。
これはちょっと盲点だったなぁ。

だが、矢張り疑問が残るので
本当にそうなのかどうか、実験してみる事にした。

こちらは5/9に出逢ったウスベニイタチタケ。


矢張り薄紅とは言えないと思う。


こちらは収穫して約3時間後の状態。

これだと確かに「薄紅」だと言えるかも知れない。

こちらは翌日の様子。

「薄紅」とは言えなくなってしまったw

矢張り、「薄紅」と言えるのは、
「乾燥気味」と言う、至極特殊な状況下だけだった様だ。
命名した人が、本種を発見した状況が
たまたま「乾燥気味」だったのだろうか。

誤解を生んでしまいそうな命名だと思うけどなぁ……(^ω^;)


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| ヒトヨタケ科 | 00:06 | comments(5) | trackbacks(0) |
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