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アミウズ その4

某日、何時もの様に何時もの場所をキノコ探索。
ふと足元のキノコが目に入った。

これはウズタケだ。

 

ウズタケはヒダが同心円状に広がっているのが特徴で

発生の少ない珍しいキノコとの事だが
このフィールドでは安定的に発生している様で

大体年に一回は遭遇している。

 

なので「ほう、今年も遭遇出来たな」と撮影。

ふと周囲を見回すと他の個体も発見。


稀菌とされるウズタケにしては発生の多いポイントとは言え、
一度に複数の個体に遭遇する事は多くない。
複数遭遇も久し振りだなぁ、と思いながら
更に見回すとまた別の個体が。
と、幾つもあるでは無いか!

このフィールドに通う様になって15年以上経つが

こんな事は初めてだ!
 
更に周囲を確認。
すると、次々にウズタケ個体を確認出来た。

発生の少ない、珍しいキノコである筈のウズタケが
こんなに集中して発生しているなんて事もあるのだなぁ・・・・・・

 

そして全てが地際に発生しているので

基本的にどの個体も周囲の枝や枯葉を巻き込む

「突き抜け物件(©役に立たないきのこ@at384さん)」だった。

 

中には弧を描くように並んでいたポイントも。

これは菌輪なのだろうか。

そもそもウズタケが菌輪を描く様な発生を
する種類なのかどうかは知らないのだが。

 

そんなこんなで、この山道を挟んだ一帯で

少なくとも20個体の発生を確認。


ただ、とても地味な色だし

群生や束生している訳でも無いし
しかも地面スレスレに発生しているので
沢山生えている様に見えないのが何とも残念。
とは言え、これはかなり珍しい事なのでは無いだろうか。

因みにweb検索してもウズタケの大量発生の記事は発見出来ず。

かなり珍しいだろう現象に立ち会えた事に一人ほくそ笑むw

 

 

所でウズタケは同心円状のヒダが特徴のキノコなのだが
時として網目状(管孔状)になる事があり
それは「アミウズタケ」と呼ばれる由。

そしてウズタケをアミウズタケと同一種とする意見と、
ウズタケはアミウズタケの変種とする意見とがあるのだとか。

 

その辺り、図鑑ではどう記載されているのだろうか。

取り敢えず手当たり次第に調べてみた。

とは言え、ウズタケが掲載されている図鑑自体かなり少なく、
当方が調べた範囲では以下の4冊だけだった。
それぞれの解説と共に列挙する。

 

・『日本のきのこ』山と渓谷社刊
  「ウズタケ」として掲載しているが、解説文の中で
  ウズタケはアミウズタケの変種と記載している

  ヨーロッパには管孔型、

  日本・北米にはウズタケ型が多いの記述あり

 

・『山渓フィールドブックス きのこ』山と渓谷社刊
  「ウズタケ」のみの掲載
  ヒダの様子を「同心円状〜迷路状〜管孔状」
  としているが、「アミウズタケ」の解説は無し

 
・『原色日本新菌類図鑑』保育社刊
  「ウズタケ」として掲載しているが、
  ウズタケとアミウズタケを同一種とするGilbertson
  の説を紹介しつつ、ウズタケをアミウズタケの変種とする
  今関の意見を付記している

 

・『北陸のきのこ図鑑』橋本確文堂刊
  「(アミ)ウズタケ」として掲載しているが、解説文で
  「管孔が同心円状になるウズタケとされる場合もあり、
   区別しない場合もあるので和名のアミに( )を
   付してある。」と付記している

 

上記で見る限り、両者の立ち位置は決定されてはいない様だ。

勿論、最新の学会情報を当方は知らないので

今はどうなのかは判らないのだが。

 

と言う訳でウズタケに遭遇する度に
出来るだけヒダの様子を確認する事にしている。

それを以下に列挙。

 

こちらはかなり網目が顕著な個体。

これだけを見たらウズタケとは思えないよなぁ。

 

こちらは管孔と同心円が混在している個体。

この場所ではこのタイプがとても多い。


こちらはきれいな同心円状の個体。

この場所ではこのタイプはかなり珍しい。

この場所で多くのウズタケに遭遇している当方も

ここまでちゃんとウズタケなのは初めてかもなぁ。

 

この場所で発生するウズタケは実は殆どがアミウズタケだ。

と言う事はこの場所にあるウズタケ菌は

ヨーロッパ型と言う事になるのかな。

 

 

同心円型ウズタケを採取しようとした所、

根元がごっそりと出て来た。

このウズタケがたまたま植物の根を巻き込んでいた為に

地下に広がっていた菌糸と共に掘り出された様だ。

となると、この一帯の地下には

この様な菌糸の塊が広がっていると言う事になるのだろうなぁ。

想像すると凄い事だよなぁ。

 

となると、この様に↓

弧(菌輪の一部)を描いて発生していても

不思議ではない事なのだろうなぁ。

元々発生が多くないキノコだから

菌輪を描ける程の量を発生させるのが

難しいだけなのかも知れないよなあ。

 

 

採取したウズタケを帰宅後詳細に撮影。

菌糸はウズタケ本体と同じ褐色なのだなぁ。

 

今迄も採取した個体の根元に

褐色のモケモケがちょっと付いていた事はあったが

此処まで顕著なのは初めて。

ウズタケの標本が世界中にどれだけあるのかは判らないが

こう言う状態の物はひょっとして世界初???

そうだったら面白いなぁ。

 

 

所で、キノコが発生している場所の事を

キノコマニア達は「シロ」と言う。

元々はマツタケの発生する場所の事を指し

それは地中でマット状に広がるマツタケの菌糸が

白い事に由来しているとの事。

マツタケが発生している地面を掘ると

マツタケの白い菌糸マットが見えるのだと言う。

 

マツタケはそのシロの辺縁部に発生する為に

時として列をなして発生する事があり

それが円を描いている場合を菌輪と言う。

実際には地中の障害物に邪魔をされたり等で

綺麗な円になっている事は多くないので

円が途切れた円弧状だったり

円の半径が大きい場合は直線状になっていたりもする。

そして、そこから敷衍してキノコの発生地点の事を

「シロ」と称している。

 

ウズタケも本来は菌輪を描いて

発生する事のある種類なのだろう。

だが、ウズタケは元々発生が多くないので

列を描く事が殆ど無いだけなのだろうなぁ。

 

発生が少ないキノコ、と言う事は

通常の状態なら他のキノコに負けてしまって

中々生えて来る事が出来無い、と言う事なのだろう。

だが今年の名古屋は雨が少なかった上に

夏の異常な暑さが長期間に及んだ。

その為、例年に無い程キノコの発生が少なかった。

多くのキノコに取って

発生したくても発生出来無い状態だったのだろう。

それ程迄に菌糸が痛みつけれ弱ってしまったのだろう。

だが、ウズタケの菌糸はその気候に弱る事も無く

他のキノコ達の勢力が弱ったのをこの時とばかりに

発生したのでは無いだろうか。

 

マツタケは実はとても弱いキノコで

他のキノコに簡単に負けてしまうので

腐葉土の少ない、貧栄養の状態の土にしか

発生出来無いと言う。

昔々は枯葉や落ち枝は日々の家庭の燃料とする為に

森林から徹底的に持ち去られていた。

そうすると腐葉土が作られ難い為に

土壌が貧栄養である事が通常の状態だった。

その為、多くのキノコは発生する事が難しく

貧栄養土壌でも生育が出来るマツタケにとっては

好条件だったのだ。

 

やがて燃料事情が変わり

枯葉や落ち枝が持ち去られず

放置される様になって土壌は富栄養化した。

そうなると他のキノコが勢力を伸ばす様になり

競争力の弱いマツタケは勢力争いに負けてしまった。

現在、マツタケの発生が少なくとても高価なのは

それが原因だと言う。

 

ウズタケにも同じ事が言えるのでは無いだろうか。

競争力の弱いウズタケは
普段はじっと耐えて地中で息を潜めていて

たまに1本程度のキノコを発生させるのが精一杯なのだが

多くのキノコが弱った気候の今年はスキを突く様に

それ!今だ!!とばかりに発生したのでは無いだろうか。

今迄に無い大発生と、今年の気候を鑑みるに

そう思えてならない。

 

それにしても、このウズタケ達が生えていた範囲は

ざっと見ただけで少なくとも20m四方はある。

競争力の弱いだろうウズタケが

他のキノコ達とシノギを削りながら

それだけの範囲のシロを形成する為に

どれだけの年月を要したのだろうか。

そして今年の様な発生のチャンスを

どれだけ待ち続けたのだろうか。

考えると気が遠くなりそうだ。

 

となると、発生が少ないとされている他のキノコも

何かの条件で大発生する事があるのかも知れないよなぁ。

近年は「異常気象」と言われる事が多いが

それは大きな気候変動の現れかも知れない訳で

今迄とは違う気候が今後定着するのかも知れないのだ。

と言う事は、これまで見掛ける事の少ない、

又は全く無かったキノコが

次々続々と大発生する可能性もある訳だ。

それはそれで楽しみではあるなぁ♪

来年以降もどんなキノコが姿を見せてくれるのか

ワクワクドキドキが止まらないよ♪

 

 

普通に今迄通りに季節が流れて

例年通りのキノコが沢山生えて来てくれる事も

望みたいのだけどね・・・・・・(;´Д`)

 

 

 

※過去記事・関連記事も併せてお読み頂けましたら幸いです
アーカイブス→
こちら

 

 

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| 多孔菌科 | 00:01 | comments(2) | - | pookmark |
270度 (どうしても その2)

何時もの様にフィールドを散策。

此処の所、良い感じで雨が降ってくれていないので

全般的にキノコが少ない。

 

仕方無いよなぁ、と思いつつ歩いていると目に入った物が。

うん、あれはホウロクタケだなぁ。

名古屋地域では元々発生の多い種類だが

この某緑地公園では特に多い。

正直「またか・・・・・・」と思ってしまった。

この辺のホウロクタケは何回も撮影しているしなぁ。

なのでスルーしようかと思ってしまった。

 

だが、何かちょっと違和感が。

気になったので近寄って見てみる。

これは一体?

なにかちょっと厚みが妙な感じ。

どうやら90度回転物件の様子。

 ※硬質菌が発生基部ごと90度転回してしまった為に

  傘が異常な成長をしている物の事、と勝手に決めました

  過去記事『どうしても』を参照の事(→こちら

  ○○物件の名称は「役に立たないきのこ」さんの

  『突き抜け物件』のインスパイア?です(→こちら

 

だが、90度回転物件にしても何か妙だ。

良く良く見ると

厚み部分の輪郭が不思議な感じ。

 

ギアナ高地のテーブルマウンテンみたいだなぁ。

 西田進のホームぺージ: パタゴニアとギアナ高地(2)---- ギアナ高地の旅より引用

 

その一つ、画面左奥の個体を更に観察する。


当方から見て右側側面がこちら。

 

左側側面がこちら。

どっちの面にも管孔と傘表面の構造が見える。

どうやらこれは180回転物件だった模様。

       ※過去記事『どうしても』を参照の事(→こちら

そしてそれが更に90度回転し

新たに傘を成長させている状態なのだろう。

つまりこれは270度回転物件なのだろう。

 

だが、通常の90度回転物件なら管孔面の方をメインに

新たな傘が進展する筈だ。

こちらはカワラタケの90度回転物件。

管孔面のある方向に新たな傘が発達しているので

まるで強風に流された様な形状になっている。

 

だが、今回のホウロクタケは

元々が180度回転物件だったので

裏表両面に管孔が出来て居て

それが両方とも生きている状態だった為、

両側へ傘が発達する事になったのだろう。

その為、まるでテーブルマウンテンの様な

輪郭が出来たのだろう。

 

何とも逞しい話だなあ。

とにかく、どうしても管孔面を地面に向けて

展開させたい訳なのだよなぁ。

凄い生命力だ。

 

だが、それってどんな感覚なのだろうかなぁ。

裏と表、と言う厳然とした組織の違いがあって

それがある日180度回転して突然逆にされたのだ。

その為、本来下側だった管孔面が上側に、

本来上側だった傘面が下側になってしまった。

この非常事態に対応したのが

下側になってしまった傘の面に管孔を発達させ

上側になってしまった管孔面に傘の組織を発達させる事だったのだ。

 

その途中、組織を逆転させて生育している最中の状態って

むず痒いと言うか、気持ち悪く感じたりしないのかなぁ。

当方だったらきっと耐えられないと思うよ。

しかもこのホウロクタケは180度回転されて

組織を反転させている最中に

更に90度回転されて、また違う方向に組織を作り変えている状態。

むず痒くて気持ち悪くて仕方無い筈だ。

まぁ、キノコに感覚神経が無い(多分)のが幸いなのだろうなぁ。

 

所で、このホウロクタケはまだ成長途上。

この後テーブルマウンテンがどの様になって行くのか

今後も観察して行きたい。

 

ひょっとしたら更に転がされて角度が変わってしまい、

また違う形状に成長して行くのかも知れないよなぁ・・・・・・

 

 

 

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| 多孔菌科 | 00:01 | comments(2) | - | pookmark |
カワウソタケの事

こちらはカワウソタケ。

最初の遭遇は2005年8月、代々木公園にて。

 

その次は2009年8月、岐阜県高山市内にて。

 

初見から2例続けてこんな感じの物に遭遇していたので

カワウソタケはこう言う感じの

色合いと質感なのかと思ってしまったのだが

実はこれは自らが放出した胞子をかぶってしまっている状態。

実際、周囲の葉が胞子をかぶって茶色になってしまっている。

 

胞子をかぶっていないとこんな感じ。

 

発生初期はこんな感じ。

丸っこくて可愛い♪

 

図鑑には「広葉樹の枯れ木に発生する」とあるが
桜の木に特異的に発生する硬質菌だ。

上掲画像も全て桜の木から発生している。
枯れた桜だけでなく、弱った部分にも発生する。

 

 『標準原色図鑑全集 菌類(きのこ・かび)』 保育社
 『日本のきのこ』 山と渓谷社

 『原色日本菌類図鑑』 保育社

 『原色日本新菌類図鑑』 保育社
 『山渓フィールドブックきのこ』 山と渓谷社 

 『カラー版きのこ図鑑』家の光協会 

 『猿の腰掛け類きのこ図鑑』 地球社

 

等の全国版のキノコ図鑑には掲載されているので
目にした事のある人は多いだろう。

だが、全国版でも上掲以外の図鑑にはまず掲載されていない。

 

そして、新旧合わせれば100種は超えるであろう
数ある地方のキノコ図鑑には殆ど掲載されていない。

当方の調べた限りでは

 

 『庄内のきのこ』 鶴岡書店
 『岩手・青森のきのこ500種』 トリョーコム
 『茨城のきのこ』 茨城新聞社
 『北陸のきのこ図鑑』 橋本確文堂
 『岡山のキノコ』 山陽新聞社

 

だけだった。


桜の木は日本中にあるのだから
カワウソタケも日本中で発生して居るの思うのだが
食でも毒でも無く、薬効も特に無いらしいので
興味を持つ人が少ないからなのだろうなぁ。

 

以前は日本特産種と考えられていた様だが
今は日本の他、韓国・台湾でも確認されている模様。
となると中国にもありそうだが当方には調べ切れなかった。
web検索では「北アメリカ,ヨーロッパにも分布する」とあったが
日本からの桜の移植によって持ち込まれた物かも知れない。

 

この妙な名前は、黄褐色〜茶褐色の粗毛が
傘に密に生えている様子をカワウソの毛皮に見立てたらしい。
当方はカワウソの実物を間近で見た事が無いのだが
まぁこんな風な感じなのだろうかなぁ。

カワウソの毛並みが他の獣達のそれとどれだけ違っていて、
どの部分が「これぞカワウソ!」なのかは判らないが。

 

因みに日本在来のニホンカワウソは
1979年(昭和54年)を最後に目撃例が無く
現在は絶滅したとされている。
『日本産菌類集覧』によると
「カワウソタケ」と命名したのは安田篤で1913年との事。
当然、安田はニホンカワウソ本体、

もしくはその毛皮を実見していて

そう命名したのだろう。

 

因みにキツネタケイタチタケムジナタケムササビタケがあるが
カワウソタケとは全く遠い種類。
しかしカワウソタケの近縁種には「ラッコタケ」と言うのがある由。
どれも褐色系の似た色合いだ。

 

キツネ、イタチが先に使われていた為に仕方無く
残っていた「カワウソ」にしたのかと思ったのだが
同書によると和名登録されたのは

 キツネタケ:1954年
 イタチタケ:1938年
 ムジナタケ:1954年
 ムササビタケ:1951年
 ラッコタケ:1955年

との事。
となると、安田篤は仕方無くでは無く
「この風合いはキツネでもイタチでも無く
 絶対カワウソだ!」
と思ってカワウソタケと命名した事になる。

 

このキノコの命名をしようとした時に
何故真っ先に一般的とは思えないカワウソを選んだのか、
そもそも何故カワウソなのかは今となっては不明。
もうちょっと違う命名もあったろうになぁ。
それとも安田にとってはキツネやイタチに比べて
カワウソの方が身近だったのだろうか。


100年あまり前の当時はカワウソの毛皮は
そんなにもありふれた物だったのだろうかなぁ。

他のキノコでもそうだが

安田により命名されたキノコの和名は

今となっては難解なのが幾つもあるんだよなぁ・・・・・・

(安田篤によるキノコの命名まとめ→こちら

 

で、カワウソタケが先にあったので
色合いから連想してキツネタケ他の命名がされたのかなぁ。
ラッコタケはカワウソタケよりも暗い色合い、との事なので
カワウソに合わせてラッコにしたのだろうなぁ。
それも今となっては判らないけれど。

 


カワウソタケの2022年現在の学名は Inonotus mikadoi。
米国の菌類学者カーティス・ゲーツ・ロイドにより
1912年に新種登録された。
Inonotus は「背面に毛が生えた」の意で
傘面が粗毛に覆われている事による
カワウソタケ属のキノコ全体の説明。
mikadoi とは「帝」、つまり天皇陛下の事。
ロイドと陛下に直接交流があったのかどうかは不明だが
「日本の象徴である桜」に特異的に発生する事から
「日本の象徴である天皇陛下」に献名した、と

当方は勝手に推測している。

 

だが、どちらかと言えば
カワウソタケは桜の木に取って良い菌ではない。
何より見た目的にもよろしくない。
そう言うキノコに天皇陛下の名前を冠するのはどうなんだろうかなぁ。
下手したら不敬にならないのかなぁ。
当時は「不敬罪」と言う法律もあった訳だし。
過激な右翼だったら黙っていないのでは無いだろうか。
菌類学会の総会に過激な右翼が乗り込んで来たりしかねない。
まぁ、過激な右翼にキノコマニアが居ない(多分)のが
幸いしているのだろうなあ。


最初の学名の登録は大正元年。
和名登録は翌年になる。
今とは天皇陛下の位置づけはかなり違う筈だ。
それなのに何故安田はカワウソタケと命名したのだろう。
「mikadoi」の意味に気付かなかったのかなぁ。
メールや電話が当たり前の今みたいに
気軽に連絡の取れる時代では無かったにしても

登録者のロイドに聞かなかったのかなぁ。

それとも何も考えていなかったのかなぁ。
勿論それも今となっては判らない。

 

そして、更に言えば

「日本の象徴である桜」に発生するから
「日本の象徴である天皇陛下」に献名されたキノコが

殆どのキノコ図鑑に掲載されていない、と言うのも

どうなんだろうなぁ。

学名の由来からしたら全日本国民が

知っておくべきキノコなのかも知れないのになぁ・・・・・・

 

 

過激な右翼がこのblogを見ない事を祈るよ。

 

 


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| 多孔菌科 | 00:00 | comments(0) | - | pookmark |
乱れたり乱れなかったり(焙烙その2)

こちらはホウロクタケ。

マットな質感と、ポツポツとしたコブの様な装飾?が

特徴的な硬質菌の一種だ。

ホウロクタケに関しては以前、記事にした事がある(→こちら)。

 

その際に少し触れたが
通常の傘裏は管孔が均等に並んでいるが
時として迷路状になる、との事だ。
ホウロクタケの報告・命名者の安田篤は
管孔が迷路状になる個体を別種と見なし

迷路状の物を「ミダレホウロクタケ」と報告した。
だが、それはただの個体差とされ、

「ミダレホウロクタケ」の名は幻となった様だ。

以下、『原色日本新菌類図鑑』より引用。

 

  ホウロクタケは普通整然たる管孔状であり、

  孔の径も0.5〜1mmと狭い。
  しかし管孔はくずれやすくしばしば迷路状になり、
  安田はその形の菌を

  ミダレホウロクタケD.diskinsii Yasuda(新種)として
  ホウロクタケと区別したことがあるが、

  単なる変異形であることはいうまでもない。
 

ケンもホロロとでも言う様な書かれ方だ・・・・・・

 

以前の記事で当方は「ミダレホウロクタケ」の画像を揚げた。

20200331hourokutake (15).JPG

20200331hourokutake (16).JPG

ホウロクタケは東大阪時代には見た事は無かったのだが
名古屋東部では発生がとても多く
季節を問わず探索に行くと必ずの様に何度も遭遇しているが
管孔が迷路状になった物はその一度の一個体しかなかった。

 

以来、ホウロクタケを見付ける度に
傘裏を覗き込み、管孔面を確認しているのだが
どれもが通常の均等に並んだ管孔だった。
この数年で恐らく100枚以上のホウロクタケの裏側を見ているが
その後一度も遭遇していない。

 

ここまで例の少ない物とは思わなかったなぁ。
前回の時はそんなに珍しい物とは思っていなかったので
ピンポイントの場所を記憶していなかったのが残念。

前回遭遇した際に標本として保存しておけば良かったなぁ・・・・・・

 

 

そんなある日、何時もの様にフィールドを探索していた。
そしてまたホウロクタケに遭遇。

まず上から撮影。


そして下から覗き込む。

これも均等に並んだ管孔だった。
まぁ仕方無い。

それは当然だ。

 

それにしてもホウロクタケは

傘の色や形状、模様が千差万別で

一つ一つが大きく違っているので

どれも見ていて楽しくなってしまう。

色合いや質感がクッキーみたいで更に楽しい。

なので遭遇する度につい撮影してしまう。

それを以下に列挙。

当方同様に楽しんで頂けますれば幸いです。

 

こちらは白い粉砂糖が少し掛かってる感じ。

 

こちらは粉砂糖が少し多めかな?

 

そして下から覗き込む。

これも均等に並んだ管孔だった。

 

こちらはコーヒー系?

砂糖衣も多目で美味しそう。

 

そして下から覗き込む。

これも均等に並んだ管孔。

 

こちらは砂糖衣が過剰なタイプ。

美味しそう♪

 

管孔も何となく砂糖ぽくてカワ(・∀・)イイ!!

 

こちらは粉砂糖の掛かっていないタイプ。

 

管孔は通常の物だった。

 

こちらは黄な粉?

 

こちらはバウムクーヘン?

 

管孔は通常の物。

 

その後も探索を続ける。

この日は特にホウロクタケに多く遭遇した。
そしてまたホウロクタケが。

まず上から撮影。

 

そして下を覗き込む。

これも丸い管孔だ。
まぁ仕方無い。

それは当然だ。

 

同じ切り株から生えている別の個体。

こちらも同様にまず上から撮影。

 

そして下から覗き込む。

これも丸い管孔だ。
まぁ仕方無い。

それは当然だ。

 

さて、移動して探索を続けようかな。

一応念の為、他の個体も確認してみようかな。

まず上から撮影。


そして下を覗き込む。

こ、これは!?

管孔が迷路状だ!
「ミダレホウロクタケ」だ!


まさかこんな所に「ミダレホウロクタケ」があったなんて。
場所と周囲の環境を見ると
前回遭遇したのは正に此処だったのかも知れない。

 

この切り株には沢山のホウロクタケが発生している。
最初、その中の一枚の裏側を見て
それが普通の管孔だったので
全てが普通のホウロクタケと判断してしまっていたが
その中の一部が「ミダレホウロクタケ」だったのだ。

 

ざっと確認した所、
20個程の子実体がこの切り株から発生していた。
そして「ミダレホウロクタケ」だったのは
先の一つと、隣接して発生して居た2個の

合わせて3個だけだった。

これはどういう事だろう。

 

当方はホウロクタケとミダレホウロクタケは
系統差なのだと何となく思っていた。
ホウロクタケの中で、とある系統の物が
ミダレホウロクタケになる、もしくは
ミダレホウロクタケになりやすいのかと思っていた。

 

例えば劣性遺伝か優性遺伝みたいに
とあるグループに出現しやすい形質みたいに思っていた。

だから一本の枯れ木から発生しているホウロクタケは
一つが綺麗な管孔だったら
どの子実体も同じ形の管孔をしている物だ、と単純に思っていた。
ミダレホウロクタケがあったとしたら
その枯れ木に生えている物は全て、

もしくは大部分が管孔が迷路状になるのだ漠然と思っていた。

 

この切り株の周辺一帯に
ホウロクタケの生えている枯れ木は幾つもあったのだが
そのどれもが普通のホウロクタケだった。
だが、この切り株はそうではなかった。
沢山生えているホウロクタケの中で
その中の一部だけがミダレホウロクタケだったのだ。
同じ菌糸から発生している筈なのに
その中の一部がミダレホウロクタケになるのだ。

 

此処の枯れ木に発生しているホウロクタケの中で
まさかこのミダレホウロクタケの部分だけが
別系統の菌糸から発生している、と言う訳では無いだろう。

管孔面が迷路状になる、何かの理由がこの部分にはあるのだろうか。
この一部分だけ先祖帰りしたみたいな事なのだろうか。
それとも逆に、この部分だけが進化の先取りをしているのだろうか。

またはこの部分だけ子実体を発生させる際に
何らかのバグを生じてしまい、それが結果として
「ミダレホウロクタケ」と呼ばれる物になった、

と言う事なのだろうか。

 

管孔をわざわざ迷路状にするからには

そこに何らかの理由があるのだろうけどなぁ。

先祖帰りだとしたら迷路状である事にはデメリットが、
進化の先取りだとしたら迷路状になる事に
メリットがあるからそうなった、となるのだろうが、
果たしてどちらなのだろうか。
それとも、たまたまで意味が無い事なのだろうか。
うーむ、良く判らないなぁ・・・・・・

 


所で突然話が変わるが「イブキ」と言う種類の樹木がある。

その中の一品種「カイヅカイブキ」は
生け垣や街路樹で見かける事が多い。
イブキは通常この様なウロコ状の形の葉をしているのだが

 

一部が杉の葉の様な形状になる事がある。


一本の木の中で良く探せば

杉の葉状になっている場所が必ず何処かにあるくらい
その発生頻度はとても高い。

それはその一部分だけが先祖帰りしてしまっているとの事で
イブキが杉の仲間から進化した事の証明なのらしい。

 尚、上掲画像のオレンジ色の部分は「リンゴの赤星病」と言う菌の冬胞子堆です。

 気になる方は当blogの過去記事『近隣との距離』をご参照下さい(→こちら)。

 

余談だが当方の先祖の墓のある埼玉県川口市の長徳寺には

高さ13mに及ぶビャクシン(イブキの別名)の大木があり
県の天然記念物に指定されている。

    川口市立文化財センターのサイト「川口の文化財」より転載
そして一番下に生えている大きな一枝が
丸々杉の葉の形になっており
そこまで大々的なのは珍しい由。

 

で、一部分が杉の葉の様になっているからと言って
その部分が別系統のイブキ(ビャクシン)が

生えている、と言う訳ではない。
一本の木の中でたまたまその部分だけが
何らかの原因で先祖帰りという形の成長をしてしまったのだ。

 

してみるとこの「ミダレホウロクタケ」も
同様なのだと考えられないだろうか。
一つの枯れ木に蔓延しているホウロクタケの菌糸から
発生した複数の子実体の一部が
先祖帰りか進化の先取りかは不明だが
「ミダレホウロクタケ」と言う形で
成長してしまった、と言う事なのでは無いだろうか。
そう考えれば辻褄が合う気がする。

 

同じ菌糸から発生する子実体の中で
何らかの原因で管孔が迷路状になってしまう事がある。
どう言う原因でそうなるのかは判らないが
ホウロクタケはそう言う形質を持っている種である、
と言う事なのだろう。

 

結局、「ミダレホウロクタケ」は
ホウロクタケの個体差に過ぎない、と言う
最初の結論に至る、と。

ただ、その発生頻度はイブキに比べると
かなり低い、と言う事は言えそうだ。
あくまでも当方の観察範囲内の話ではあるけれど。


それにしても今まで一つの発生場所に対して
1〜2個の子実体の裏面しか確認していなかったよ。
そうなると、ひょっとしたら
今迄沢山の「ミダレホウロクタケ」を
見逃していたのかも知れないのだよなぁ。

 

これからは全ての裏面を確認しないとならなくなったなぁ。

面倒臭いが仕方無い。
それもそんな事に気付いてしまったキノコマニアの宿命だ。
これから遭遇するであろう、全てのホウロクタケの裏面を
可能な限り見て行く事にするよ。

 

勿論、誰に頼まれた訳でも無いのだけれどね・・・・・・


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| 多孔菌科 | 00:00 | comments(0) | - | pookmark |
出血

「キノコが好きだ!」と周囲に公言していると
キノコグッズやキノコのお土産を貰ったりする事がある。
そして、「このキノコ何?」と
画像が送られて来る事も少なくない。
 
この画像もその一つ。

撮影者Mさんの話によると、
場所は名古屋の中心街のビルの一角、
歩道の植え込みの中に発生していたものとの事。

地方都市とは言え、名古屋は都会だ。
そのド真ん中のオフィス街に
こんなのが生えていたらびっくりするよなぁ。

 

一見、この形からするとマンネンタケの様に見える。
黒い色合いからするとマゴジャクシ
そのどちらも艶があるのが通常なのだが
画像のキノコにはその艶が無い。

マゴジャクシは針葉樹の枯れ木に発生するが

画像の街路樹はどう見ても針葉樹では無い。
そもそも全体的に何か雰囲気も違うよなぁ。

一体何だこれは???

 

所でMさんもキノコ好きで
地元の緑地公園でのキノコ探索会にも参加する程のマニア。
なので、キノコを同定するには
どんな画像が必要なのかを判っていて
キノコの裏側の画像もちゃんと送ってくれた。

矢張りマンネンタケぽいなぁ。


だが、その画像を見て気が付いた。
綺麗な赤い部分が沢山あるでは無いか。

これは触ったりして傷付いた部分が変色したのだろう。
マンネンタケやマゴジャクシはこんな変色はしない。
マンネンタケに似て、この様に変色するキノコに
思い当たる物がある。
それはコマタケだ。

 

コマタケは硬質菌の一種。
掲載されている図鑑は多くない。

一般販売されているキノコ図鑑では

 『原色日本新菌類図鑑』保育社刊

 『山渓フィールドブックス きのこ』山と渓谷社刊

の2冊だけの様だ。


コマタケは真っ直ぐ延びた柄を中心に

円盤型の傘を発生させるキノコで

その形状がまるで独楽の様に見える事から
「独楽茸=コマタケ」と命名された由。

大分県農林水産研究指導センター林業研究部きのこグループのサイトより引用)

マレーシア・サラワク州シンガイ山の一部の菌類活動より引用)

 

だが、柄が真っすぐにならず円盤型の傘にならない場合は
この様にマンネンタケの様な外観になってしまう。


その為、傷付けた部分が血の様に赤く変色する点から
「シュッケツマンネンタケ」と命名された事もある様だ。

その部分、上記の保育社刊の図鑑から引用。

 生育時の子実体に傷をつけると血のように赤いしみができるので、
 安田はシュッケツマンネンタケの和名を、また新種として 
 Polyporus juxtarugosus Yas. の名を与えたが、
 Corner によるとこの性質は

 コマタケ属の他の種でもしばしば見られると言う。

と言う訳でその名は採用されなかったらしい。

 

尚、この部分に関しては『日本産菌類集覧』では

コマタケの命名者は安田篤、

シュッケツマンネンタケの命名者は澤田兼吉、

学名Polyporus juxtarugosus の命名者は Lloyd となっている。

保育社図鑑の方が正しいのだろうか・・・・・・

 


その後、Mさんがそのキノコを採って来てくれた。
こんなに沢山生えていたのかー

折角なので色々な角度から撮影してみた。

 

 

まず一番右の個体をアップに。

ん?白い毛が生えてる?

 

な訳は無くて、誰かの長い髪の毛を巻き込んで成長した様だ。

思わぬ突き抜け物件w

 

硬質菌は髪の毛みたいな

簡単に動く物すら巻き込んで成長するのだなぁ。

それにしても、この髪の毛を落とした人も

こんな風にキノコに巻き込まれて

見も知らない当方の手に渡るとは思ってなかっただろうよなぁw

面白いけど、ちょっと気持ち悪いかな・・・・・・

 

裏返してみる。

黒い部分は元は赤かった部分だろう。

白かった部分もかなり黒ずんでいるのは

成長し終えて古くなった個体だからなのか。

 

 

もう一つもアップに。

これが送られて来た画像の個体だ。

こちらの裏側はまだ白い。

この個体は新鮮なのだなぁ。

が、赤かった部分はすっかり黒くなっている。

 

と、良く見たら細い葉っぱ巻き込んでいる。

これも突き抜け物件だったのだなぁw

 

 

大きな個体をアップに。

裏返してみると、これは二つの個体が融合した物の様だ。

裏側はまだ白い部分が多い。

この個体達はまだ新鮮な様だ。

 

試しに傷付けてみる。

30秒程で真っ赤になった。

 

そして10分後には完全に黒くなっていた。

気が付いたらこうなっていたので

何分後に黒くなったのか、正確には不明。

確信は無いけど多分5分後くらいには黒くなったのだとは思う。

 

 

小さな個体もアップに。

キチンとコマタケの特徴を持っているなぁ。

これも何かを巻き込んでいるw

 

 

生えていた状態を想像してみる。


こんな感じだったのだろうなぁ。

マンネンタケに見えてしまうのも仕方無いよなぁ。

 


図鑑によるとコマタケは南方系のキノコとの事。

以下、平成元年(1989)刊の上掲の保育社図鑑より引用。

 アジア熱帯地方の菌で、熱帯では普通であるが

 日本では沖縄から九州、四国の南部に発生
 

実際、地方のキノコ図鑑では

 『熊本のきのこ』熊本きのこ会編(1992年)

 『大分と九州のきのこ』大分きのこ会編(2010年)

には掲載されている。

また、15年くらい前に熊本の人がSNSにコマタケの記事をupし
「当地では良く発生している」と書いていた記憶もある。

尚、四国地方を始め、全国で刊行されている地方のキノコ図鑑には

当方が調べた限りでは掲載されている物は無い様だ。


「コマタケ」をwebで検索したところ
2021年8月30日現在でhitしたのは83件。
学名の Amauroderma rugosum でも94件だった。
これは元々発生が多くない、

キノコ食文化の盛んな信州東北北海道には発生していない、

と言う事情に加えて

堅くて食べられない上に毒でも薬でも無い、

色も地味な目立たないキノコ、
と言う理由によるのだろう。

 

山口県の吉敷川周辺のキノコを探索して居る

『きのこワールド』内の『きのこ図鑑』というサイトによると
2013年に撮影したコマタケのページ

「暖帯性で稀とあるが、市内でよく見かけるようになった」とある。
矢張り段々北上して行っているのかも知れない。
そして2021年に名古屋でも確認された訳だ。
勿論、2021年に初めて生えて来た、と言う訳では無いだろうが。

 

と、思っていたら実は2020年の時点で
埼玉県北本市での発生が確認されているらしい(→こちら)。
なんだ、名古屋はとっくの昔に通り過ぎていた様だ。
残念w

 

尚、そのサイトにも記述があるが平成8年(1996)刊行の

 『猿の腰掛け類きのこ図鑑』神奈川キノコの会編

にもコマタケが掲載されている。

その標本はつくば市内の植物温室内に発生した物、との事。

当時は温室内と言う限られた環境に発生していた様だが

その後は野外にも普通に発生する様になったのだろう。

 


さて、名古屋の中心部と言えば都会の例に漏れず
ヒートアイランド現象の激しい場所だ。
大都会の真ん中にこんなキノコが発生するのは
一見すると不思議な感じだが
ヒートアイランド現象によって
熱帯地域の気候により近い環境になっている、と考えれば
当然の事なのかも知れない。
それに加えて温暖化の影響も勿論あるのだろう。

 

同様の事はオオシロカラカサタケでも言える。
オオシロカラカサタケも元々は南方系のキノコで
段々と発生地域が北上しているのが観察されている。
千葉菌類談話会通信29号によると

2010年時点で宮城県での発生が記録されていると言う。

オオシロカラカサタケについては過去に記事にしているので

ご興味ある方はご参照下さい(→こちらこちら)。

 

因みにオオシロカラカサタケは毒キノコで

毎年の様に中毒事故がある為か

発生の北上の様子が詳細に調査されているが

コマタケに関してはその様な研究は無い様だ。

 


所で、名古屋のヒートアイランド現象によって
発生した熱気が上昇気流によって流れ
下降して地上に降りる場所が岐阜県多治見市との事。
その為、日本最高気温が多治見市で観測された事もある。
因みに、関東で言えば熊谷市や伊勢崎市辺りが

その場所に当たると言う。

ひょっとしたら北本市でコマタケが発生した、と言うのも

それと関係があるのかも知れないなぁ。

 

で、それで考えれば気温の点で名古屋市内よりも

より熱帯環境に近いであろう多治見市近辺にも
コマタケが発生していても不思議は無いのだが
多治見市にはコマタケに気が付く程の
キノコマニアが居ないのかも知れないなぁ。
まぁ、当方の狭いネットワークには
引っ掛かっていないだけかも知れないけどね。

 

 

しかし、都会の真ん中のこんな小さな植え込みに
良くぞコマタケの胞子が辿り着いて
こうやってキノコを発生させるまでに成長したものだ。
目に見えない大きさの胞子が
どれだけ離れた場所からかは判らないけど
風に流されて此処に降り立ち成長し
こうやって姿を現したのだよなぁ。
その不思議さがキノコの魅力の一つな訳で
興味が尽きない点だ。

 

そしてMさん、良くぞこのコマタケに気付いてくれた。

綺麗なオフィスビルの真ん前の植え込みに生えていたのだから

Mさんが気付かなければこのコマタケは
得体の知れない物、雑草扱いで駆除・廃棄されていた筈だ。


今までにもきっとそうやって
幾つものコマタケが誰に気付かれる事も無く
闇に葬られてしまっていたのだろうなぁ。


学術的にどうかは判らないが
当方的にはとても貴重な資料を入手出来た。
正に奇跡的な出逢い。
Mさん、キノコヌシ様、本当にありがとうございました。

 

さて、そうなると次はコマタケが生えている状況を
この目で見てみたいものだ。
辺縁部とは言え名古屋市内、
当方の周辺にも生えている可能性だってある筈だ。
実は当方も今まで見逃してしまっていたかも知れないよなぁ。
そして折角なら独楽の形をした子実体も見てみたいよ。


フィールドを探索する楽しみがまた増えた♪

 

 

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| 多孔菌科 | 00:00 | comments(2) | - | pookmark |
どうしても

こちらはホウロクタケ。


各種の広葉樹の枯れ木に発生する硬質菌で
名古屋東部では毎年必ず何度も遭遇している。
アジアに分布する種との事だが

東大阪や滋賀県栗東市では一度も見た事が無かったので
棲息地域に多少の偏向はあるのかも知れない。
 
ホウロクタケに関しては以前にも記事にした事があるので
興味のある方はそちらをご覧頂きたい(→こちら)。

先にも書いたが、名古屋東部ではごく普通に見かけるキノコだ。
前回の記事を書いて以降も幾つも遭遇している。

 

こちらは比較的大きな個体。

質感から見ると、老熟した個体の様だ。

 

と、こちらのホウロクタケ。
傘の質感が少し妙だ。



近寄って良く見てみる。

どうやら傘の表面に管孔が広がっている様子。

これは一体どう言う事なんだろう???

 

このホウロクタケは地面に放置された丸太に発生している。
想像するに、キノコを発生させた後に
丸太が転がって裏返しになってしまったのだろう。

 

大多数のキノコは胞子を放出する器官であるヒダや管孔を

傘の裏側に形成している。
それはその位置でないと

基本的に胞子を上手く放出する事が出来無いからだ。

このホウロクタケはこれから、と言う時に
人為的か偶然かは不明だが発生基物である丸太が転がってしまい
管孔部分が裏向きにされてしまったのだろう。

 

これは一大事だ。

何とかして管孔を地面に向けて形成しなければならない。
そこでこのホウロクタケが取った方法が
今現在、地面の側を向いている傘表面に

管孔を形成する事にしたのだろう。

 

因みに、そのホウロクタケを裏返してみた。

管孔の様子が矢張り通常では無い様子。

管孔部分に傘表面に当たる組織を形成した状態なのだろうかなぁ。

 


似た様な状況の物は今迄に何度か遭遇した事がある。
それは枯れ木が倒壊し横倒しになって
発生状態が90度変わってしまった状態のカワラタケ等だ。

これは地面に対し90度の角度になってしまった為に

管孔面をどうしても下に向けなければならず

苦肉の策として垂直方向になってしまった子実体から

新たな子実体を水平方向に発生させたのだ。

その所為でまるで強風にたなびいている様な外見になってしまったw

 

こちらは茶色タイプのカワラタケ。

こちらは強風には吹かれなかった様だw

花びらの様で華やかな印象。

 

こちらはシロハカワラタケ。

こちらもとても派手。

 

こちらはツガサルノコシカケ。

こちらも90度方向が違ってしまっている。

カワラタケ程派手では無いが

新たな子実体を発生させて何とか対応しようとしている。

 

木材腐朽菌は基物である樹木を腐朽・分解させるのだから

その結果、基物の強度が弱くなり

何時しか重力に負けて倒壊してしまう様になるのは必然だろう。

となると、この様に管孔面の向きが

思わぬ方向になってしまう事は少なくないのかも知れない。

その為に、そう言う緊急事態を回避する能力を

予め備えているのだろう。

 

画像で見た感じではツガサルノコシカケは

まだ成長途中と思われるのでちょっと違うが

カワラタケ達を見ると

結果的に管孔部分の面積が増えている様な気がするなぁ。

災い転じて福となす、て所だろうか。

まぁ、通常なら必要のない筈のかなりな労力を費やしている訳だから

それでトントンと言う事なのかな?

 

とにかく、どうしても管孔面を

地面に向けて形成しなければならないから必死だよなぁ。
90度傾きの場合だったら上掲のカワラタケ達の様な対処になるが

このホウロクタケの様に180度の場合はそうは行かない。


その為、この裏返ってしまったホウロクタケは
本来は管孔部分を支え、保護する役割であった
傘の表面(裏返った時点では裏面になるが)に

管孔を形成して何とか異常事態を回避しなければならなかったのだ。

そして頑張って管孔を形成したと思ったら

人為的か偶然かは不明だが器物である丸太がまた転がってしまい

再度傘の上下が逆になってしまった。

つまり、元の状態に戻ったのだ。

 

ホウロクタケにして見たら

折角頑張って問題の対処をしたのに

それを「無」にされてしまった状態だ。

何の為に努力をしたのか。

ただもう無駄な労力を使わされた事になる。

それまでの努力をそれこそ根底から覆された訳だ。

このホウロクタケには同情してしまうよ。

これが人為的な事なら、その人を恨みもするだろう。

 

所で考えたら、自然界に於いて

器物の枯れ木が倒壊して位置が90度変わる事はあるだろうが

180度や360度変化する、と言う事は無いのではないだろうか。

丸太、と言う人為的な加工品だからこそ

転がって上下が反転する状況が起こってしまうと考えられる。

となると、このホウロクタケは

人間の行いによって翻弄された可哀想なヤツ、と言う事になる。

そんな場所に発生してしまった己の不運を嘆くしか無いよなぁ。

(-人-) ナム~

 

 

所で、この裏返ってしまった管孔から胞子は放出されるのだろうか。

そして、元々あった管孔からも胞子は放出されるのだろうか。

両方から放出されるのだったら一粒で2度おいしい状態だが

そんな器用な事が出来るのかなぁ。

其処までの観察が出来無かったのは残念だった。

今後またこう言う個体に遭遇したら

その辺も注意して観察してみたい物だ。

 

まぁ、キノコに取ってはそんな状況になりたくは無いだろうけど。

 

 

 

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| 多孔菌科 | 00:00 | comments(2) | - | pookmark |
ブドウタケの事

こちらはブドウタケ。

 

 

濃いブドウ色が特徴的。


裏側もブドウ色っぽい感じ。

 

帰宅後撮影したのだが乾燥した為に色合いが変わってしまっていた。

裏側の色合いも濃くなった感じ。


ブドウタケと言ってもブドウの木や葉、実に生える訳ではない。
ブドウの実の様な歯応えであったり味や香りがする訳でもない。

見た通り、ブドウ色が特徴的なので「ブドウタケ」と命名された由。

ブドウタケはその名に関わらず針葉樹の枯れ木に発生する。
こちらの個体は山中にあった小さな神社の鳥居から発生していた。
 
実は10年程前にもブドウタケと思われるキノコに遭遇している。
それも、とある神社の鳥居の地際だった。

と言って別にブドウタケが信心深いキノコと言う訳では無い。

 

多くの簡易な鳥居は大抵は杉の丸太に防腐処理を施し

そしてペンキを塗装して作成されている。
その状態ではキノコが発生する事は中々無い事だ。


だが、長年風雨に晒された為に防腐剤の効力が低下し
その為にこのブドウタケの発生を見たのだろう。

かなりハードな環境だが
そんな環境を乗り越えて発生した訳なのだから
ブドウタケはかなりのツワモノだと言える。


だが、逆に考えると他のキノコが敬遠する様な、
他のキノコの発生が難しい様な環境でないと
ブドウタケは他の菌に負けてしまって
生えて来れない、と言う訳なのかも知れない。

そして、どちらも地面から離れていない場所に発生していた、

と言う事は、発生に当たっては枯れ木の中の水分量が
ある程度高くないとダメ、と言う事と考えられるのではないだろうか。

実際、ブドウタケと思われるキノコに遭遇した他の場面も
地面に横たわった枯れ木からの発生だった。

 

こちらはかなり褐色が強い個体。

 

こちらは全体にブドウ色の個体。

裏側は淡い紫色。

 

こちらはかなり波打った達だ。

 

この個体にはホウロクタケの様な

コブ状の部分が。(ホウロクタケの記事→こちら

裏側はこちらも淡い紫色。

 

こちらは幼菌の為なのか縁のっ白い部分が大きい。

 

こちらはかなり不定形の発生具合。

こんな風になる事もあるのだなぁ。

 

どれも見るからに枯れ木は湿っている様に感じる。

矢張り枯れ木内の水分量が大事なのかも知れないなぁ。

 

ブドウタケは図鑑的にはレア菌と言う訳ではないが
フィールドで遭遇する機会が多くない気がする。
それはやはりブドウタケが
他のキノコが発生を遠慮する様な環境を好む、
そんな環境でしか生きられないキノコだからなのだろう。
ニッチな環境と言うのはやはりあまり多くないからこそ
ニッチな訳なのだよなぁ。
web上での情報が少ないのは毒でも食用でも薬用でもなく
特に大きくもならない地味なキノコだからだろうけど。

 

 

所で、上掲のブドウタケ。

画像によってかなり物が違って見える。

当方は顕微鏡を持たないのでキノコの同定は

あくまでも画像の絵合わせと、図鑑の記述に頼るしか無い。

なのでそれらが本当にブドウタケかどうか、

確定的な事が言えない点は御了解願いたい。

 

因みにブドウタケが掲載されている図鑑は多くは無いが

メジャー所の図鑑には掲載されているので

ご覧になった方は多いかも知れない。

以下、掲載されている図鑑の記述を抜き書き。

 

『日本のきのこ』山と渓谷社刊
  傘はほぼ半円形
  幅4〜10cm、厚さ0.5〜1cm程
  扁平〜貝殻状〜波型
  ぶどう色〜暗紫褐色で環紋を表す
  管孔は微細
  松類の切り株に重生
  熱帯系の菌、ヨーロッパには無く、日本には普通 

 

『原色日本新菌類図鑑』保育社刊
  傘は幅4〜10cm、厚さ0.5〜1cm程
  扁平〜やや貝殻状に湾曲、乾けば一層強く湾曲
  縁は薄く鋭く、表面は殆ど無毛
  濃いブドウ色〜暗紫褐色〜紫黒色
  濃淡の環紋と浅い環溝を表す
  下面はブドウ色〜紫黒色、孔口は微細
  針葉樹、特に松の切り株に重なり合って群生
  分布:北アメリカ東南部、東半球熱地域、日本

 

『山渓フィールドブックス きのこ』山と渓谷社
  マツ類などの枯れ木上に発生
  南西諸島〜熱帯地域では広葉樹枯木上
  傘は半円形〜棚型またはやや不定形
  扁平で薄い
  帯紫褐色〜暗紫褐色
  多数の環溝
  孔口は薄紫色〜紫褐色、微細

 

『カラー版きのこ図鑑』家の光協会刊
  マツ類の枯れ木上、熱帯地域等では広葉樹上
  傘は半円形、扁平で縁部は薄く鋭い
  帯紫褐色〜暗褐色
  細かい環紋を多数備える
  裏面は淡紫色〜紫褐色、孔口は極めて微細 

 

同じ種類のキノコの解説だから似た記述になるのは当然だが

良く読むと微妙に違っている部分もある。

色合いや環紋の具合に関しての記述に結構差があるが

その記述の違いは個体差だ、と言う事にした。

上掲画像の個体達もどれかの記述に当て嵌まっている、

と思えたのでブドウタケと判断した次第。

一つの図鑑の記述だけを拠り所にすると

判断を誤る可能性もあるので色々見比べる事も大事かな、と。

 

ホウロクタケのコブ状部分に関しては

どの図鑑にも記述は無かったのだが

『カラー版きのこ図鑑』掲載画像の個体には

ホウロクタケの様なコブ状部分があったので

これもブドウタケの個体差と考えた。

取り敢えず、記事中の同定に関しては

あくまでも当方の「個人の感想です」と言う事で。

 


それにしても「ブドウ+タケ」と言う命名もなかなか面白い。
『日本産菌類収攬』によるとブドウタケは安田篤による命名、との事。

色合いを基準にした判りやすい命名ではあるが

今後ブドウの木から特異的に発生するキノコが発見されたとしたら

ややこしい事になるかも知れないなぁ。

 

以前「色名+タケ」のキノコの和名を取り上げたが(→こちら
今回もそれをやってみることにした。
ブドウタケの「ブドウ」は色合いの事なのだが
それを「果実の名前+タケ」と解釈し
「八百屋などで買える物の品名+タケ等」として
該当するキノコの和名を

日本産きのこ目録2020』を元に探してみた。

尚、「モドキ」等の別の語の付いた物は除外した。

 

 アケビタケ
 アズキタケ
 アンズタケ
 イモタケ 
 カキシメジ
 カボチャタケ
 クリタケ
 クルミタケ

 ザボンタケ
 ジャガイモタケ
 スグリタケ
 ダイダイイグチ
 ダイダイガサ
 ダイダイシメジ
 ダイダイタケ
 ブドウシメジ
 ブドウタケ
 ホオズキタケ 

 ムカゴタケ

 レモンハツ

 ワサビタケ

 

以上、21種類。

 カキノミタケ

 ダイコンシメジ

が抜けているとのご指摘を頂きました。

合計は23種類となります。

hさん、有難う御座居ました!

 

これが多いのか少ないのかは何とも。

興味がある方はそれぞれ画像検索して頂きたいが

殆どが色合いか形状から命名されている様子。

他には八百屋では売っていないが

 ドングリタケ

 ナタネハツ

と言うのもあった。

 

 

今後、どんな和名のキノコが新たに出て来るのか、

色々と期待したい所。

当方が命名者になれる可能性がまず無いのは残念だけど。

 

 

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| 多孔菌科 | 00:04 | comments(2) | - | pookmark |
貴重なニッケイタケ?

こちらはニッケイタケ。

 
林内地上に発生し、特に珍しくはない種類だが
傘径が2cm程度で色合いも褐色系で地味な上、
あまり大量に群生する種類でも無い為に目立たない事が多い。

だが、綺麗な同心円状の環紋と絹のような光沢が美しいので
気を付けて見ると道の脇などで目に入りやすいかもしれない。

 

小さくて華奢だが硬質菌なので堅くて丈夫。

当然食べられないが一部の硬質菌(アシグロタケ等)の様に
出汁用として使えるのかどうかは不明。
調べた限り、試した人は居ない様だ。

上述したように何分小さく、
大群生して大量に収穫出来る種類では無い為に
試してみる気にもなれないだろう。
当方も試す気は無い
 
ニッケイタケのニッケイは香料のニッキ、シナモンの事。

とは言え、ニッキの様な味や匂いがする訳ではなく
単に傘の色合いから命名された由。

その点は少し残念だ。
もしニッキの匂いがするとしたら
硬質菌だから長持ちしただろうになぁ。

 

因みに学名もシナモンの色合いから取って

「Coltricia cinnamomea」となっている。

Coltricia はイタリア語でキノコの意、

cinnamomea はニッケイ色の、の意。

「ニッケイ色のキノコ」なのでそのまま「ニッケイタケ」の事になる。


『日本産菌類収覧』によると

ニッケイタケの学名登録は最初は200年以上前に

オランダの植物学者

ニコラウス・フォン・ジャカンによって行われた由。

最初は硬質菌と言う事でサルノコシカケなどと一纏めにされて

Polyporus属とされていた様だが、

現在は上記の様にColtricia属となっている。

そして和名の「ニッケイタケ」は1904年に安田篤による命名の由。

安田が独自に「ニッケイ色のキノコなのでニッケイタケとした」のか

「学名がニッケイ色のキノコなので

 和訳してニッケイタケとした」のかは判然としなかった。

 


さてこのニッケイタケ。
東大阪時代には全くお目に掛かれなかったのだが
岐阜山中と名古屋市各所ではほぼ毎年遭遇している。
大阪東部に比べたら東海地域は
ニッケイタケ的には住みやすいのかも知れない。
当方が追い続けているキノコの一つ、ウズタケは

ニッケイタケとは同じオツネンタケモドキ属に分類されているので
とても近縁な種類とされている。
とすると、東海地域はオツネンタケモドキ属にとって
住みやすい地域と言う事なのだろうかなぁ。
 
上述の様に小さくて地味なのだが
色合いや紋様の個体差が大きいので
遭遇する度に撮影するのも中々に楽しい。

 

大体はこの様にニッケイ色。

 

 

暗褐色の物も結構多い。

 

こちらの個体。

周縁部が淡い色合いなのは成長過程だからなのだろうか。

 

こちらの個体。
 

表面の艶が消え妙に毛羽立っているのは老菌だからなのか

それとも個体差なのかは不明。

 

まだデジカメを持っていなかった頃。

岐阜山中で暗紫色の物を見た事があったのだが

画像を残せなかったのは残念だった。

別種だったのかも知れないが、今となっては不明。

ニッケイタケにしか見えなかったのだけどなぁ・・・・・・


この個体は暗紫褐色、と言う事になるのかな。 
所でこの画像。

周囲の黒くて細いニョロニョロした物。
これは一体何なのだろう???


一瞬、冬虫夏草か何かと思って「お!?」と色めきたったのだが
どうやらこれはニッケイタケの幼菌の様だ。
良く見ると手前には傘の開きかけの個体も。


ニッケイタケはこの様に柄の部分がスルスルと延びてから
先端が広がって傘になる訳なのだなぁ。
いや、これは意外だった。
 
キノコの幼菌時代の姿というのは
種類によっては成菌のそれとは全く違っていたりする。
予めそれと知っていなければ何だか判らなかったり
別の種類の物と間違えてしまう事も少なくない。
これも正にそうだなぁ。


成菌の側にあったし傘の開きかけがあったから
これが幼菌か、と判断出来たけど
これ単体だったら判らなかっただろうなぁ。
色々な状態の物を見て行く事が本当に大事だなぁ。

 

こちらは別の場所での物。

開き掛けで乾燥して成長が止まってしまったのか

そのまま枯れてしまっている。

上掲の生えかけ画像が無かったら

これもニッケイタケとは判断出来無かったかもなぁ。

 

 
と、このニッケイタケ、何か妙だ。因みに左側のキノコは恐らくモミジタケ。

 

手に取って裏返してみる。

傘裏の質感が異様で孔口は全く見えない。

 

通常はこの画像の右側個体の様に裏側には管孔があるのだが

 

こちらの個体はそれが何かに塞がれてしまっている。

どうやら菌に冒されている様子。
 
キノコに寄生する菌といえばヒポミケス菌が知られている。
ヒポミケス菌はキノコ専門に寄生する菌で
色々な種類がそれぞれに対応した種類のキノコに寄生し
寄主のキノコを変形させる。
ヒポミケス菌に関しては何回か記事にしたことがある(→こちら)。
 
となれば、

ニッケイタケに寄生するヒポミケス菌があっても不思議はない。
とは言え、ニッケイタケは今まで結構な数を見てきたが
この様な状態の物は初めて見た。
当方はヒポミケス菌が好きなので
個人的に色々調べたりもしているが
ニッケイタイケに寄生する種類の事は聞いたことが無い。


勿論、在野のイチ素人、野良学問の当方が
知れる事なんて範囲が限られる。
だから一概には言えないのだが
結構珍しい物なのかも知れないなぁ。
なので折角なら、と持ち帰る事にした。
で、乾燥保存。
 
その後もヒポミケス菌関連の事を色々探ったのだが
それらしい情報は出てこなかった。
元々ヒポミケス菌に関する資料はあまり多くない。
更に、日本語以外に疎く
専門の研究者ではない当方には
海外の文献を渉猟するのも限界がある。
それでも何とか引っかかったのが 
アメリカのキノコアドバイザー?的な人、
Gary Lincoff氏のサイトの中の
キノコ観察会で観察できたキノコのデータ一覧の中の情報。

 

Gary Lincoff氏は

ニューヨーク植物園でガイドをしているキノコ研究者
amazonで著書が幾つも出て来る程著名な人らしい。

氏は定期的にWOLFE’S POND PARKでキノコ観察会を行っている様子。

WOLFE’S POND PARK=ウルフズポンドパークは

直訳すると狼池公園。

ニューヨークの近くにある海沿いの公園で
2000エーカーが森林保護区になっている由。
2000エーカーは809ヘクタール≒8.1㎢
つまり東京ドーム170個分、
東京都国立市、名古屋市熱田区、大阪市鶴見区と同じくらい、
横浜市西区より大きいくらいの広さとの事。

その例えがどの程度伝わるかは判らないが、

とにかく広大だと言う事は判って頂けた事と思う。

そんな広大な場所に「池公園」と名付けてしまうのは

矢張りアメリカは巨大な国だからこそなのだろうなぁ。

そして2017年6月8日に行われた観察会で作成されたリストの中に

「Hypomyces on Coltricia cinnamomea」

の記述があった(→こちら)。

だがこれ以上の情報は無い。

画像も無いので当方の採取した物と同じかどうかも判らないが

Coltricia cinnamomea に発生したHypomyces菌と言う事なので 

同じ様な状態の物だったのでは無いだろうか。


やはり珍しい物なのかも知れないなぁ。
と言う事はこれは貴重な標本なのかもなぁ。
ひょっとして世界で2例目とか!?
まさかねw

 

 元々発生が多くない

   ×

 ヒポミケス菌に興味を持っている人が少ない

   ×

 ネット上にヒポミケス菌の事をupする人が少ない

 

なのでとにかく情報が多くないので検索しても出て来ないのだろうなぁ。

希少性はどうか判らないが取り敢えず数量的な意味だけだとしても

貴重な標本である事は間違いない。

 

 
全国の、そして世界のヒポミケス菌研究者の皆様。
もし、この標本が研究の為に必要でしたら
喜んで提供させて頂ますですので
当方に是非ご一報を。

 

そう言うアカデミックな方々が
こんな場末のblogを読んでくれているとも思えないけれどw


 

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| 多孔菌科 | 00:03 | comments(2) | - | pookmark |
IKB

10月のある日、瀬戸の某所を散策中、こんな物に遭遇した。

aikouyaku-201130 (4).JPG

目映いばかりの鮮やかな青い木の枝。

何故こんな所にイヴ・クラインの作品が!?

 

イヴ・クラインはフランスの現代芸術家。

様々な活動をしたが、中でも有名なのは

鮮やかな青で塗った多くの作品を制作した事だろう。

イヴ・クラインは自身の理想の青い顔料を開発し

それを「インターナショナル・クライン・ブルー(IKB)」と命名し

その顔料を使用して多くの作品を制作した。

IKBについては特許も取得していると言う。

 

こちらはギリシャ彫刻で有名な「サモトラケのニケ」を

IKBで塗った物。

IKB1.jpg

                 (アート・キュリオさんのサイトより引用)

他にもキャンバスを一面IKBで塗った作品や

人体に塗り、キャンバスに押し付けた「人拓」も有名だ。

ご興味がある方は公式サイトをご覧頂きたい。

           イヴ・クラインの公式サイトより作品一覧

 

そしてその一連の中に木の枝をIKBで塗った作品がある。

IKB2.jpg

      (『世界一周!で漏らしてみる』さんのサイトより引用)

このイブ・クラインの作品が

瀬戸の森の中に放置されているとはっ!!

 

 

勿論これはイヴ・クラインの作品では無い。

アイコウヤクタケと言うキノコに覆われた枯れ枝だ。

アイコウヤクタケは「藍膏薬茸」の事。

「膏薬茸」とは枯れ木の表面に薄く広がるキノコの総称。

文字通り、「藍色の膏薬茸」だ。

 

しかし見れば見る程鮮やかに青い。

aikouyaku-201130 (3).JPG

aikouyaku-201130 (2).JPG

aikouyaku-201130 (1).JPG

aikouyaku-201130 (5).JPG

とても天然自然の色合いとは思えない。

どうみてもIKBだよw

 

拡大してみると所々に小さな穴が見える

aikouyaku-201130 (6).JPG

これは成熟して居る証拠との事。

 

若い部分には白い菌糸が見える。

aikouyaku-201130 (7).JPG

この部分もやがて青くなるのだろう。

 

アイコウヤクタケは世界的汎布種、との事だが

掲載されている図鑑はかなり少ない。

だが、山渓刊『日本のきのこ』や

山渓フィールドブックス『きのこ』と言った

有名所の図鑑には掲載されているので

画像をご覧になった方は多いかも知れない。

 

それにしても見るからにIKBだよなぁ。

aikouyaku-201130 (3).JPG

先にも書いたがアイコウヤクタケは世界的汎布種なので

フランスにも発生して居るのかも知れない。

ひょったしたらイヴ・クラインは

フランスの森の中でアイコウヤクタケを見て

IKBを思い付いたのかも知れないよなぁ。

キノコが現代美術で独自の境地を開いた、と考えるのも

ちょっと面白いw

 

まぁ、本人に聞いてみないと判らないし

本当にそうだとしても素直に答えてくれるかどうか判らない。

そもそも、イヴ・クラインはとっくに故人になっている。

これは永遠の謎だなぁ・・・・・・

 

 

コウヤクタケの様な背着生のキノコの仲間は

白色系や褐色系等の地味な色合いの物が多いのだが

アイコウヤクタケの他にも鮮やかな色合いのキノコが幾つか存在する。

青いコウヤクタケに対して「アカコウヤクタケ」と言うのがある。

それがこちら。

akakoiyaku-201130 (1).JPG

akakoiyaku-201130 (2).JPG

名前こそアイコウヤクタケに対抗してアカコウヤクタケだが

見た目はかなり違っている。

膏薬と言うよりワッペンを貼ったと言うべきか

カイガラムシが貼り付いた、と言うべきか。

 

他にヤナギノアカコウヤクタケと言うのもあるが

そちらはゼラチンの質感なのでイメージとしては

コウヤクタケと言うよりはヒメキクラゲに近い気がする(→こちら)。

鮮やかさ、と言う点ではちょっと弱いかもなぁ。

 

赤い色で膏薬状に張り付いたキノコで言うとヒイロハリタケがある。

hiirohari-20-1130 (1).JPG

hiirohari-20-1130 (2).JPG

だが、全体に針状突起があるので

膏薬のイメージからははなれてしまうかもなぁ。

当方が調べた限りでは鮮やかな赤のコウヤクタケは見当たらなかった。

 

だが、それに近くなる物はある。

それはヒイロタケ。

hiirotake-201130 (1).JPG

ヒイロタケは普段はご覧の様な傘を作るキノコだが

時として背着的に広がる事がある。

 

こちらは枝の断面に背着的に広がっている物。

hiirotake-201130 (2).JPG

 

こちらは樹皮の上に背着的に広がっている物。

hiirotake-201130 (3).JPG

「アカコウヤクタケ」と言う名前だと

こう言うのをイメージしてしまうよなぁ。

それにぴったりなのが無いのは残念w

それにしてもこれらの赤いキノコも

ややもすると天然自然の色合いには見えない。

 

 

こちらは紫色のコウヤクタケ型キノコ。

だが名前は「スミレウロコタケ」。

sumireuroko-201130.JPG

「ウロコタケ」と言うのも背着生キノコに良く使われる名称だ。

 

外見的に良く似たキノコに「カミウロコタケ」がある。

kamiuroko-201130 (2).JPG

kamiuroko-201130 (1).JPG

漢字で書くと「紙鱗茸」との事。

スミレウロコタケとの外見的な違いは

スミレウロコタケは薄く平滑に広がるのに対して

カミウロコタケは厚みのあるフェルト状の質感、との事。

その質感を厚手の和紙にでも例えたのだろうか。

だが、時としてその見分けが難しい物もある。

この2種も中々に綺麗な色合いだ。

 

 

こちらは鮮やかな黄色。

nioiuriko-201130 (1).JPG

nioiuriko-201130 (2).JPG

とても薄く平滑に広がっているのでニオイウロコタケかも知れない。

 

こちらは桜の老木の樹皮に広がっていた物。
nioiuriko-201130 (3).JPG

nioiuriko-201130 (4).JPG

nioiuriko-201130 (5).JPG

不思議と樹皮の凹部分にだけ広がっていた。

これもニオイウロコタケかもなぁ。

 

こちらは良く似ているがイボ状の突起が沢山あるので

コガネヒメシワタケかも知れない。

koganehimeshiwa-201130 (1).JPG

koganehimeshiwa-201130 (2).JPG

それにしても鮮やかな黄色だ。

森の中で遭遇した時はびっくりしてしまったよ。

 

ニオイウロコタケもコガネヒメシワタケも

掲載されている図鑑は少なく、web上の情報も殆ど無い。

ニオイウロコタケに関しては『北陸のきのこ図鑑』に

「生時香りあり」と書かれているが

それがどの様な香りなのかは他の図鑑含め一切書かれていなかった。

今度遭遇した際には確認してみないとなぁ。

 

それにしてもこんな鮮やかな色合いを無視して

解説すられていない香りの部分だけに注目して命名されているのは

何故なんだろうかなぁ。

因みに、『日本産菌類集覧』によると

上掲のカミウロコタケもニオイウロコタケも命名者は安田篤との事。

なるほど〜、と言うか何と言うか・・・・・・(参照→こちら)。

 

更に調べるとアイコウヤクタケもアカコウヤクタケも

スミレウロコタケも安田の命名だった。

だったら「キイロコウヤクタケ」とか「コガネコウヤクタケ」でも

良かったと素人考えでは思うのだけど

どうしても「匂い」の部分を押し出したかったのだろうなぁ。

今となってはその意図は判らないけれど。

 

 

さて、このように鮮やかな色合いの背着生菌は色々あるが

それぞれが混在した状態で発生して居るのは見た事が無い。

どれも一種類だけが枯れ木を覆っている状態の物ばかりだ。

発生に際して他の菌を寄せ付けない何かの戦略があるのだろうかなぁ。

枯れ木を独占完了してからでないと発生出来無いのだろうかなぁ。

良く判らないや。

 

 

折角だから色々な色合いのコウヤクタケ類が

混生して居たら綺麗で面白いと思うのだけどなぁ。

当方が遭遇した唯一の例がこちら。

sumire&hiiro-201130.JPG

カミウロコタケ?と背着生ヒイロタケが近接して発生していた物。

ヒイロタケは本来コウヤクタケ型では無いので

「鮮やかなコウヤクタケが混生して居る」

と言う例にはならないのだが、まぁ御愛嬌?と言う事で。

とは言え、これも中々珍しい例かも知れない。

 

まぁ、この広い世界の事。

何処かには赤青黄紫の鮮やかなコウヤクタケが

混生した枯れ木があるのかも知れない。

 

今の時期ならクリスマスにぴったりかもなぁ。

一度見てみたい物だ♪

(-人-) ナム~

 


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| 多孔菌科 | 00:05 | comments(2) | - | pookmark |
アミウズ その3

ウズタケは図鑑によると発生の少ないキノコ、との事。

だが名古屋東部には毎年発生して居るポイントがある。

その場所で今年も発生を確認。

本当にこのポイントはウズタケに取って住みやすい環境なのだなぁ。

 

因みに前回書いたウズタケの記事は2017年(→こちら)。

こちらは2018年に発生していた物。

uzutake2020 (6).JPG

uzutake2020 (8).JPG

このポイントに発生するウズタケは不定形の物ばかりだ。

 

裏側はこの様にウズタケの特徴を現している。

uzutake2020 (7).JPG

 

だが、枯葉や木の実を巻き込んでグロとも言える様相。

uzutake2020 (11).JPG

uzutake2020 (9).JPG

uzutake2020 (10).JPG

こんなに色々な物を巻き込んでグシャグシャの状態で

キチンと胞子の散布が出来るのかどうか、心配になってしまうよ。

 

 

こちらは同じ場所で2019年に遭遇した物。

uzutake2020 (2).JPG

uzutake2020 (1).JPG

知らなければとてもキノコには見えない。

 

裏側は更に混沌としている。

uzutake2020 (5).JPG

uzutake2020 (3).JPG

uzutake2020 (4).JPG

最早何が何だか判らない、と言った感じ。

当方は此処がウズタケの発生ポイントだと言う事を知っているから

これもウズタケなのだろうと推察出来るけど。

それにしてもあまりにもアバンギャルドだ。

ウズタケ界の前衛の最先端で、あまりにも突き抜け過ぎて

キノコの面影すら無くなってしまった、と言った所だろうか。

若い芸術家にあり勝ちな独りよがりみたいな物か。

このウズタケがそう言うつもりなのかどうかは判らないけれど。

 

 

こちらは2020年に遭遇した物。

同じ敷地内だが先の2点とは少し離れた場所。

uzutake2020 (12).JPG

uzutake2020 (13).JPG

この場所に発生するウズタケは比較的図鑑掲載画像に近い。

先の2点がああも異形になるのは局所的な環境の影響なのだろうかなぁ。

 

裏側の渦模様も割りと綺麗。

uzutake2020 (14).JPG

虫に喰われて渦が消えている部分もあるが。

 

所でこの個体、採取したらこの様に柄が地中で横に伸びていた。

uzutake2020 (15).JPG

これはまさか地下茎みたいになっていて、

他の個体と繋がっているのか???

 

と一瞬色めき立ったのだが、勿論そんな事は無かった。

たまたまこんな形になってしまっただけらしい。

 

 

更に別の場所にはこんな物が。

uzutake2020 (20).JPG

パッと見、何が何だか判らなかった。

 

近寄って手にして見ると、こんな様子。

uzutake2020 (22).JPG

uzutake2020 (21).JPG

uzutake2020 (19).JPG

ウズタケを木の若苗が貫いていて

その部分だけが取り残された状態になっていたのだ。

 

自然の状態で、その部分だけが綺麗に取り残されるとは思えない。

人為的にこうなったと考えざるを得ないよなぁ。

ウズタケに取り囲まれてしまった木の若苗の保護の為だったら

ウズタケを全て撤去するよなぁ。

わざとこの部分だけを残してる、と言う事になるよなぁ。

何故だ???

謎だ。

面白がってこう言う風にしたのかなぁ・・・・・・

 

所でこの同じ場所で8年前にこんなウズタケに遭遇して居る。

uzutake2012 (1).JPG

uzutake2012 (2).JPG

この時は笹の一枝が貫いていた。

まぁ、そう言う事もあるよなぁ、と受け流していたのだが

同じ場所で同じ状況のウズタケが発生する、と言うのも不思議だ。

この場所のウズタケは枝とかを傘に巻き込むのが仕様なのか?

実は「マキコミウズタケ」と言う新種とか???

んなアホなw

 

と、ふと疑問に思った。

キノコが成長する際に硬い物を巻き込んでしまう事はままある。

例えばこのコフキサルノコシカケ?は

金網のフェンスを巻き込んで成長してしまっている。

oominokohuki (1).JPG

 

oominokohuki (2).JPG

金網は硬い上に、押しても動かないので

こうやって巻き込みながら成長せざるを得ないだろう。

 

だが、木の若苗や笹の一枝は硬い物では無い。

ちょっと押せばしならせて追いやる事は出来る。

だが、ウズタケはそうしなかった。

しならせて追いやる事はせずに包み込んでしまったのだ。

 

成長の仕方を考えると

傘が成長して広がって行く時に何か障害物に当たっても

それを押しのけようとはせずに

接触点はそのままにして周りが成長・伸長する事によって

結果的にその障害物を取り込んでしまう、

と言う事になるのだろうなぁ。

 

柔らかいキノコ・軟質菌ならともかく、

硬質菌でそう言う成長の仕方をするのが不思議な気がする。

逆に、軟質菌で傘が障害物を取り巻いて成長した物は

見た事が無い様に思う。

軟質菌の場合は障害物を押しやるか、

障害物に負けて自分が変形してしまっているか、の

どちらかだった気がするなぁ。

 

とすると、軟質菌と硬質菌では

「傘が大きくなる」と言う現象に於いて

成長の仕組みが違う、と言う事になるのだなぁ。

まぁ、確かに組織そのものが違うのだから

子実体の伸長のメカニズムが違うのは当然かも知れないけれど。

 

因みにこちらはカイメンタケ。

このカイメンタケも周辺の柔らかい葉を取り込んでしまっている。

少なくともある種の硬質菌はそう言う成長をしやすい、

と言う事なのかも知れないなぁ。

上掲のウズタケ画像で、枯葉や木の実を巻き込んでいるのも

その所為なのだろうなぁ。

 

 

さて、そこで考えた。

そんな動かしやすい物でさえ取り込んでしまうのならば

何かを其処に置いてキノコに取り込ませる事も出来る筈だ。

例えば、美少女やヒーロー系のフィギュアを置いておけば

そのフィギュアをキノコがぐるりと取り囲んだ状態で

成長するのではないだろうか。

となると「キノコに取り込まれて〇〇ピーンチ!」

なオブジェが出来るかもw

 

まぁ、作ってみたいのは山々だが

これから成長するであろう若い硬質菌を見付けるのは

中々に難しい。

そして、森の中にフィギュアを置いておいて

硬質菌が成長するまでその場に置かれている可能性は

かなり低いだろう。

子供や、その趣味の人が持って行ってしまうか

森の管理者にゴミとして処分されてしまうのがオチだ。

その制作にはかなりの困難を極めそうだ。

 

とは言え、機会があったらチャレンジしてみたいなぁ。

何時そのチャンスに邂逅出来るか判らないから

その為のフィギュアを毎日持ち歩く、と言うのも

中々にハードルの高い行為ではあるけどね・・・・・・

 

 

※過去記事・関連記事も併せてお読み頂けましたら幸いです
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