某日、何時もの様に何時もの場所をキノコ探索。
ふと足元のキノコが目に入った。
これはウズタケだ。
ウズタケはヒダが同心円状に広がっているのが特徴で
発生の少ない珍しいキノコとの事だが
このフィールドでは安定的に発生している様で
大体年に一回は遭遇している。
なので「ほう、今年も遭遇出来たな」と撮影。
ふと周囲を見回すと他の個体も発見。
稀菌とされるウズタケにしては発生の多いポイントとは言え、
一度に複数の個体に遭遇する事は多くない。
複数遭遇も久し振りだなぁ、と思いながら
更に見回すとまた別の個体が。
と、幾つもあるでは無いか!
このフィールドに通う様になって15年以上経つが
こんな事は初めてだ!
更に周囲を確認。
すると、次々にウズタケ個体を確認出来た。
発生の少ない、珍しいキノコである筈のウズタケが
こんなに集中して発生しているなんて事もあるのだなぁ・・・・・・
そして全てが地際に発生しているので
基本的にどの個体も周囲の枝や枯葉を巻き込む
「突き抜け物件(©役に立たないきのこ@at384さん)」だった。
中には弧を描くように並んでいたポイントも。
これは菌輪なのだろうか。
そもそもウズタケが菌輪を描く様な発生を
する種類なのかどうかは知らないのだが。
そんなこんなで、この山道を挟んだ一帯で
少なくとも20個体の発生を確認。
ただ、とても地味な色だし
群生や束生している訳でも無いし
しかも地面スレスレに発生しているので
沢山生えている様に見えないのが何とも残念。
とは言え、これはかなり珍しい事なのでは無いだろうか。
因みにweb検索してもウズタケの大量発生の記事は発見出来ず。
かなり珍しいだろう現象に立ち会えた事に一人ほくそ笑むw
所でウズタケは同心円状のヒダが特徴のキノコなのだが
時として網目状(管孔状)になる事があり
それは「アミウズタケ」と呼ばれる由。
そしてウズタケをアミウズタケと同一種とする意見と、
ウズタケはアミウズタケの変種とする意見とがあるのだとか。
その辺り、図鑑ではどう記載されているのだろうか。
取り敢えず手当たり次第に調べてみた。
とは言え、ウズタケが掲載されている図鑑自体かなり少なく、
当方が調べた範囲では以下の4冊だけだった。
それぞれの解説と共に列挙する。
・『日本のきのこ』山と渓谷社刊
「ウズタケ」として掲載しているが、解説文の中で
ウズタケはアミウズタケの変種と記載している
ヨーロッパには管孔型、
日本・北米にはウズタケ型が多いの記述あり
・『山渓フィールドブックス きのこ』山と渓谷社刊
「ウズタケ」のみの掲載
ヒダの様子を「同心円状〜迷路状〜管孔状」
としているが、「アミウズタケ」の解説は無し
・『原色日本新菌類図鑑』保育社刊
「ウズタケ」として掲載しているが、
ウズタケとアミウズタケを同一種とするGilbertson
の説を紹介しつつ、ウズタケをアミウズタケの変種とする
今関の意見を付記している
・『北陸のきのこ図鑑』橋本確文堂刊
「(アミ)ウズタケ」として掲載しているが、解説文で
「管孔が同心円状になるウズタケとされる場合もあり、
区別しない場合もあるので和名のアミに( )を
付してある。」と付記している
上記で見る限り、両者の立ち位置は決定されてはいない様だ。
勿論、最新の学会情報を当方は知らないので
今はどうなのかは判らないのだが。
と言う訳でウズタケに遭遇する度に
出来るだけヒダの様子を確認する事にしている。
それを以下に列挙。
こちらはかなり網目が顕著な個体。
これだけを見たらウズタケとは思えないよなぁ。
こちらは管孔と同心円が混在している個体。
この場所ではこのタイプがとても多い。
こちらはきれいな同心円状の個体。
この場所ではこのタイプはかなり珍しい。
この場所で多くのウズタケに遭遇している当方も
ここまでちゃんとウズタケなのは初めてかもなぁ。
この場所で発生するウズタケは実は殆どがアミウズタケだ。
と言う事はこの場所にあるウズタケ菌は
ヨーロッパ型と言う事になるのかな。
同心円型ウズタケを採取しようとした所、
根元がごっそりと出て来た。
このウズタケがたまたま植物の根を巻き込んでいた為に
地下に広がっていた菌糸と共に掘り出された様だ。
となると、この一帯の地下には
この様な菌糸の塊が広がっていると言う事になるのだろうなぁ。
想像すると凄い事だよなぁ。
となると、この様に↓
弧(菌輪の一部)を描いて発生していても
不思議ではない事なのだろうなぁ。
元々発生が多くないキノコだから
菌輪を描ける程の量を発生させるのが
難しいだけなのかも知れないよなあ。
採取したウズタケを帰宅後詳細に撮影。
菌糸はウズタケ本体と同じ褐色なのだなぁ。
今迄も採取した個体の根元に
褐色のモケモケがちょっと付いていた事はあったが
此処まで顕著なのは初めて。
ウズタケの標本が世界中にどれだけあるのかは判らないが
こう言う状態の物はひょっとして世界初???
そうだったら面白いなぁ。
所で、キノコが発生している場所の事を
キノコマニア達は「シロ」と言う。
元々はマツタケの発生する場所の事を指し
それは地中でマット状に広がるマツタケの菌糸が
白い事に由来しているとの事。
マツタケが発生している地面を掘ると
マツタケの白い菌糸マットが見えるのだと言う。
マツタケはそのシロの辺縁部に発生する為に
時として列をなして発生する事があり
それが円を描いている場合を菌輪と言う。
実際には地中の障害物に邪魔をされたり等で
綺麗な円になっている事は多くないので
円が途切れた円弧状だったり
円の半径が大きい場合は直線状になっていたりもする。
そして、そこから敷衍してキノコの発生地点の事を
「シロ」と称している。
ウズタケも本来は菌輪を描いて
発生する事のある種類なのだろう。
だが、ウズタケは元々発生が多くないので
列を描く事が殆ど無いだけなのだろうなぁ。
発生が少ないキノコ、と言う事は
通常の状態なら他のキノコに負けてしまって
中々生えて来る事が出来無い、と言う事なのだろう。
だが今年の名古屋は雨が少なかった上に
夏の異常な暑さが長期間に及んだ。
その為、例年に無い程キノコの発生が少なかった。
多くのキノコに取って
発生したくても発生出来無い状態だったのだろう。
それ程迄に菌糸が痛みつけれ弱ってしまったのだろう。
だが、ウズタケの菌糸はその気候に弱る事も無く
他のキノコ達の勢力が弱ったのをこの時とばかりに
発生したのでは無いだろうか。
マツタケは実はとても弱いキノコで
他のキノコに簡単に負けてしまうので
腐葉土の少ない、貧栄養の状態の土にしか
発生出来無いと言う。
昔々は枯葉や落ち枝は日々の家庭の燃料とする為に
森林から徹底的に持ち去られていた。
そうすると腐葉土が作られ難い為に
土壌が貧栄養である事が通常の状態だった。
その為、多くのキノコは発生する事が難しく
貧栄養土壌でも生育が出来るマツタケにとっては
好条件だったのだ。
やがて燃料事情が変わり
枯葉や落ち枝が持ち去られず
放置される様になって土壌は富栄養化した。
そうなると他のキノコが勢力を伸ばす様になり
競争力の弱いマツタケは勢力争いに負けてしまった。
現在、マツタケの発生が少なくとても高価なのは
それが原因だと言う。
ウズタケにも同じ事が言えるのでは無いだろうか。
競争力の弱いウズタケは
普段はじっと耐えて地中で息を潜めていて
たまに1本程度のキノコを発生させるのが精一杯なのだが
多くのキノコが弱った気候の今年はスキを突く様に
それ!今だ!!とばかりに発生したのでは無いだろうか。
今迄に無い大発生と、今年の気候を鑑みるに
そう思えてならない。
それにしても、このウズタケ達が生えていた範囲は
ざっと見ただけで少なくとも20m四方はある。
競争力の弱いだろうウズタケが
他のキノコ達とシノギを削りながら
それだけの範囲のシロを形成する為に
どれだけの年月を要したのだろうか。
そして今年の様な発生のチャンスを
どれだけ待ち続けたのだろうか。
考えると気が遠くなりそうだ。
となると、発生が少ないとされている他のキノコも
何かの条件で大発生する事があるのかも知れないよなぁ。
近年は「異常気象」と言われる事が多いが
それは大きな気候変動の現れかも知れない訳で
今迄とは違う気候が今後定着するのかも知れないのだ。
と言う事は、これまで見掛ける事の少ない、
又は全く無かったキノコが
次々続々と大発生する可能性もある訳だ。
それはそれで楽しみではあるなぁ♪
来年以降もどんなキノコが姿を見せてくれるのか
ワクワクドキドキが止まらないよ♪
普通に今迄通りに季節が流れて
例年通りのキノコが沢山生えて来てくれる事も
望みたいのだけどね・・・・・・(;´Д`)
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