こちらはロウタケ。
一見キノコにはとても見えない。
下手すると吐瀉物の様でもあり
使用済み吸水ポリマーが不法投棄された状態の様でもある。
また、粘菌のシロススホコリとかにも見えてしまうが
これでもれっきとしたキノコだ。
ロウタケとは「蝋茸」の意味で
見た通り「蝋の様な質感のキノコ」の事。
不定形のキノコで、地面から発生し
上掲画像の様にその場にある物を覆う様に広がる。
また、生きている植物や枯れ枝を這い上がる事も少なくない。
そして時としてカレエダタケの様に伸長する事もある。
こちらは地表を離れ、枯れ枝の上に広がった状態の物。
何故か宙に浮いた状態の枯れ枝の上に広がっている。
少しでも高くなる場所を選んだ、と言う事なのかなぁ。
こちらは地面から突き出た小枝?に纏わり付いた状態。
こちらは切断された植物(笹?)の茎に纏わり付いた状態。
こちらは地表の枯葉と、更に突き出た枯れ枝に纏わり付いた状態。
こちらは地表に出始めた段階か。
一部は枯れ枝に纏わり付いている。
こちらは苔の先端に広がっている状態。
苔の先端から伸びてカレエダタケ状になっている。
こちらはロウタケが乾燥した状態。
蝋の様な透明感が無くなっている。
こちらはロウタケにフタマタケカビ?が生えている状態。
ロウタケもキノコだから別の菌にやられる事もあるのだなぁ。
ロウタケは東大阪時代にちょくちょく遭遇していた。
一度、20〜30cm四方に広がる
とても大きな個体に遭遇した事があったのだが
そんな時に限ってカメラを持っていなかった。
当時はスマホも無かったので画像での記録が出来ず。
今でもとても残念に思っている。
名古屋に移ってからは岐阜山中では何回か遭遇しているが
何故か名古屋市内では一度も無し。
東大阪、飛騨にはあって、名古屋には無い
地質的な特徴が何かあるのかなぁ。
謎だ。
と、当方は見る機会が少なくないのだが
掲載されている図鑑は極めて少ない。
当方が調べた限りでは
『山渓フィールドブックス きのこ』 山と渓谷社刊
『新版北海道きのこ図鑑』 亜璃西社刊
のみだった。
掲載図鑑が少ない所為か、google検索しても
2022年8月30日現在、91件のみ。
キノコマニアからしても人気が無い様だ。
学名は Sebacina incrustans(セバキナ インクルスタンス)。
sebacina は sebum(脂肪)+ina(学名命名の際に使う接尾辞)。
incrustans は「外皮で覆って」の意味。
つまり「脂身の様な質感で覆われたキノコ」と言う意味の様子。
確かに脂身の様な半透明な感じはあるけど
蝋の方がより質感が近いと思うのだけどなぁ。
何故「蝋の様な」にしなかったのだろうかなぁ。
命名者の感覚はちょっと独特な気がする。
以前は見た目からシロキクラゲの仲間と考えられていて
異型担子菌綱
└シロキクラゲ目
└シロキクラゲ科
└ロウタケ属
└ロウタケ
に分類されていたが、近年のDNA解析の結果
ハラタケ綱
└ロウタケ目
└ロウタケ科
ロウタケ属
└ロウタケ
全く別の所属先に分類され、
更に「ロウタケ目」と独立する事になった様だ。
それだけ独特な種類だ、と言う訳なのだろうなぁ。
因みにロウタケは中国では「蜡壳耳」と言う由。
簡体字を繁体字にすると「蠟殼耳」となる。
「蝋で覆われた耳」と言う意味になるのだが
此処での「耳」は「銀耳」=「シロキクラゲ」の事。
つまりロウタケがシロキクラゲ科に分類されていた名残だろう。
となると、今後表記が変わって行くのかなぁ・・・・・・
因みに『日本産菌類集攬』によると日本産のロウタケ属は
・イトタケ(Sebacina dendroidea)
・ロウタケ(Sebacina incrustans)
・オオロウタケ(Sebacina laciniata)
の3種類となっている。
「イトタケ」は色々探したが掲載されている図鑑は無く
画像検索しても何もhitしなかった。
なので詳細は不明だが
イトツキマクコウヤクタケと言うキノコがあるので
ロウタケの周囲に糸を張り出している様な外見では無いかと
勝手に想像。
尚、「イトタケ」の命名者は安田篤の由。
やっぱり、と言った感じの命名だなぁ・・・・・・
「オオロウタケ」は
『信州のキノコ』信濃毎日新聞社刊
に唯一画像が掲載されているのだが
『日本産菌類集攬』ではロウタケの別名扱い、
つまりロウタケの個体差と言う事の由。
実際、図鑑の画像もロウタケとは
大きさ(広がっている範囲)以外、区別が付かない。
世界中のキノコの学名が検索できると言う
Mycobankと言うサイトで「Sebacina」の検索をすると
180種以上のロウタケの仲間がhitした。
ただ、世界全体で180種と言うのはかなり少ないとは言える。
しかも画像検索をしても画像が出て来ないのが殆ど。
それだけ研究が進んでいない、人気の無い種類と言えるだろう。
画像の出て来る一部の種類も色合いやロウ感の多少の違いはあれど
外見上はロウタケに非常に良く似ていた。
顕微鏡を見ないと、とても判別出来無い。
肉眼だけででも判別はまず不可能と言える。
と言う事は当方の画像の物も実はロウタケではなく
「××ロウタケ」とでも言うべき別の種類である可能性が
あるのかも知れないよなぁ。
所で国立科学博物館の
植物研究部多様性解析・保全グループの研究によると
シュンラン属の一部のランは
ロウタケと菌根関係(共生し栄養のやり取りをしている)を
築いている、との事。
しかも幼若期のみで、成長後は別の菌と菌根関係を結ぶのだとか。
つまり、ロウタケの何かが無いと発芽が出来ず、
それ以降は逆にロウタケでは成長が出来無い、と言う事になる。
何そのワガママ偏食っぷりw
そのランは何故そんな複雑な生活環を形成したのだろう。
ロウタケが常にそこら中にある訳では無いと思うのだけど
そうする方が有利な事って何なのだろう。
それとも、目に見えてないだけで実はロウタケは
そこら中に存在している、と言う事だろうか。
だったとしても、何故途中で
菌根関係を変更させなければならないのかなぁ。
ランなりの必然性があるからなのだろうけど・・・・・・
謎だ。
こんな何気無い、地味で目立たないキノコにも
今だに解らない事は沢山あるのだなぁ。
いや、地味で目立たないからこそなのかな?w
キノコの事を調べれば調べる程謎が深まって行く。
これだからキノコは辞められない♪
何時何処でどんなキノコに遭遇出来るか
ドキドキワクワクが止まらない。
そして何時かは名古屋市内でもロウタケに遭遇したい物だ。