名古屋に限った事では無いだろうが
ここ数年は天気の流れが妙な気がする。
たまに雨が降ったかと思うと
何週間もの間カラッカラで一切雨が降らなかったりする。
まるで雨季と乾季を短いサイクルで繰り返している様だ。
洗濯物は良く乾くので有難い事ではあったが
キノコ的にはあまり好ましい状態ではない。
特に秋口に極度の乾燥状態になる事が多かった。
なのでこの数年、シロテングタケの発生は少なかった。
勿論発生がゼロだった訳では無いが
遭遇した時点ではあまり良い状態では無かったりで
当方にとってはタイミングが合わなかったのだ。
その為、「シラフタケの実証実験」がこの数年止まったままだった。
過去に何度も触れているが、
致死毒キノコであるシロテングタケは
東北北部のとある地域ではマツタケの代用品として
シラフタケ、シラフマツタケと呼ばれて
重宝されている、と言う。
※シロテングタケ関連の記事のアーカイブ→こちら
そのシラフタケとシロテングタケとは外見的には差異が無い。
だが、DNA的にどうなのか、の研究は成されてはいない様だ。
そのシロテングタケと思われるキノコが名古屋でも発生している。
それがシラフタケだとしたら
マツタケの代用品として使えるかもしれない。
果たして・・・・・・
だが、上記の様にここ数年、名古屋での発生があまり見られなく
その追及は中断していた。
2020年の9月も雨は少なく、
今年もダメかなぁ・・・・・・、と半ば諦めていたのだが
9月下旬にシイノトモシビタケを
観に連れて行って貰った際(当該記事→こちら)、
途中で立ち寄った場所に
シロテングタケがとてもたくさん発生していた。
シロテングタケの大きな特徴の一つの
幼菌の時にヒダの部分を保護して居た被膜が
成長とともにちぎれて
レースの様に垂れ下がっているのがハデで綺麗(・∀・)♪
今後名古屋でシロテングタケが発生するかどうかは判らない。
なので、その一部を持ち帰る事にした。
その後、名古屋では
シロテングタケに遭遇する事は結局無かったので
ここで持ち帰っていて本当に良かった。
F氏とTさん、本当に有難う御座居ました (-人-) ナム〜
さて、持ち帰ったシロテングタケは一部は水煮に、
そして一部は生のままSさんに送った。
因みに、瓶詰や梱包した状態を撮影するのを
すっかり忘れてしまってたーよ・・・・・・(;´Д`)
Sさんは信州出身のキノコ猛者。
キノコを採取し食べる、と言う事への情熱は高く、そして深い。
信州を離れて暮らしている今では
フリマサイトで山採りキノコを取り寄せる事にも情熱を注いでいる。
当然マツタケも自分で信州で採取する他に
フリマサイトや通販で色々なマツタケを入手し食している。
その追及意欲は中国産マツタケ、北米産マツタケに留まらず
2020年の岩手産マツタケ、トルコ産マツタケ、
果てはマツタケモドキ、ニセマツタケにまで及んでいる。
尚、バカマツタケは今年フリマサイトで購入したのだが
実際に送られて来た物はニセマツタケだったので
バカマツタケはまだ食べた事は無い、との事。
因みにその件は、出品者がバカマツタケの事を良く知らなかっただけで
詐欺の意図は無かった事が判明している。
Sさんの指摘に素直に反省と謝罪があった由。
と言う訳でマツタケに対する有難みに疎い当方と違って
Sさんなら「シラフタケ問題」に対しての正確な判定をして貰える筈だ。
到着してすぐに開封し、匂いを嗅いだ由。
で、Sさん曰く「全っ然違う!」との事。
やっぱりそうかー
まぁ、収穫してた時にF氏も同じ事を言っていたよ。
いや、当方だってマツタケと同じだと迄は思ってなかったよ。
マツタケに疎い当方からしたら似た系統の芳香かな、と思ったのだけど
それはダイコンやニンジンに比べたらマツタケに近い、
と言う程度の事だったのかもなぁ・・・・・・
やっぱマツタケとシロテングタケは別物かー
まぁ、当然か。
その後、色々やり取りをして考察した事を以下に。
シラフタケをマツタケの代用品に、と言うのは
香りの問題だけでは無いのではないのかも知れない。
スライスした時の形と歯応えが重要で
更に「出汁が出る事」がポイントだったのでは無いだろうか。
スライス品がマツタケに近い物で言えばエリンギがある。
webで検索するとエリンギを使った
「なんちゃってマツタケご飯」のレシピが
それこそ山ほど出て来る。
そう言えば昔見たTV番組で
スライスエリンギにマツタケ香料を掛けて作った物を
「マツタケご飯」として出した所、
それを食べたタレント達は全員が見事に騙されていた、
てのがあったっけ。
それだけ形と歯応えはマツタケに似ていると言う訳なのだろう。
だが、エリンギはマツタケの様な出汁が出ない。
エリンギはヨーロッパ原産の種類なのだが
日本に自生していたとしても
それが理由でマツタケの代用品にはされなかったかも知れない。
また、Sさんによると信州ではマツタケが採れなかった時には
仕方無いから、と言う理由でオオツガタケを代用品にしていたと言う。
その為か、地元ではオオツガタケを「サマツ」と呼んでいた由。
オオツガタケとマツタケでは全くの別物だが
スライスした時の形状はとても良く似ている。
そして独得の良い香りと出汁が出る点で共通している。
それ程「出汁が出る」事が重要と言う事なのだろう。
Sさんによると瓶詰のシロテングタケからは
出汁が出ている香りがした、との事。
その昔、京都の人達は上流階級では無くとも
季節になるとマツタケを普通に食していたと言う。
その頃の評価では伏見や竜安寺産のマツタケが最上品で
今では最高級ランクの丹波産などは下等品だった、との事。
当時は輸送技術、保存技術が低かった為に
収穫してすぐに食べられる近場の物以外は
丹波産の物ですら香りが落ちてしまう為に下等品扱いだったらしい。
それ程迄に新鮮さを重視していたマツタケだが
当時でもマツタケを長期保存する為に
マツタケを塩漬けにする事は盛んに行われており
「漬け松茸」「塩松茸」の名で市場でも売られていた由。
塩漬けマツタケは会食や懐石料理等
ちょっとした御馳走の食材として、
多くは吸い物の具材として一年中使用されていたらしい。
それを使用する際には水に浸して塩抜きしなければならない。
そうなると香りは殆ど抜けてしまうのだが
そうしてでも「マツタケの吸い物」を
特別な食事として食べたかった訳なのだろう。
となると形と歯応えと出汁が重要視されるのも当然だろう。
シラフタケは他のキノコに比べると
それに相応しいと言う事なのかも知れないなぁ。
尚、マツタケの保存法としては塩漬けの他に
乾燥させた「干し松茸」と言うのもあったそうだが
香りが飛んでしまう点では変わらないだろう。
技術の進んだ現代でも
マツタケの香りを失わさせずに長期保存するのは不可能の由。
マツタケが高価なのもむべなるかな、て事か。
小川真『「マツタケ」の話』、岡村利久『まつたけの文化誌』等より適宜要約
因みにSさんによると水煮のシロテングタケの香りは
ニセマツタケのそれに似ていたらしい。
その意味でもシラフタケは
マツタケの代用品なのかもなぁ。
ただ、飲んでいないので
シロテングタケから本当に出汁が出ていたかどうかは不明。
どんなに薦めても飲んでくれなかったなー
残念w
結局シラフタケ問題の完結は出来無かったが
一つの区切りは出来たかと思う。
お陰で色々な知識を得る事が出来た。
それが合っているかどうかは別として色々な考察も出来た。
Sさん、有難う御座居ました。
そしてそのチャンスをくれたF氏とTさん、有難う御座居ました。
2021年も、色々なキノコに出逢えます様に。
(-人-) ナム~