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赤団子を求めて その7

当方が追い求めているキノコは幾つかあるのだが
久し振りに「マダケの赤団子病」の事を書いてみたい。
以下、ズラズラと画像を並べ、

かなりの大長文になってしまいましたが

お読み頂けましたら幸いです。

また、総集編的に過去記事を

おさらいする記述をしてしまう部分も多いですが

ご容赦頂けましたら幸いです。

           ※赤団子病関連アーカイブス→こちら

 

 

 


「マダケの赤団子病」はその名の通り、
真竹の仲間に発生する寄生病の一種で

 Shiraia bambusicola と言う菌(白井菌)によって
春に真竹の枝の途中に
赤みを帯びた灰白色の菌塊を発生させる寄生病だ。

 

一般にはあまり知られていないが、竹の園芸家の間では
美観を損ねる厄介な病気として知られている由。

だが、菌学者で研究対象にしている人は多くなく

菌類マニアの間でも人気が無い様で

色々調べようとしても情報がとても少ない。

 

名古屋東部の某公園で発生を確認して以来、
当方は毎年そこで観察をしていたのだが
ある年に罹患竹が伐採されてしまった為に、
その場所での発生が見られなくなってしまったのは

とても残念だ。


なので2014年以降、

番外編は何度か記事を書いていたのだが
本来の赤団子病の記事を書けなくなってしまっていた。

とは言え、何処かへ出掛けた折に竹林を見掛けた際には、
何とか其処を観察する機会を捻出しては

赤団子病を探し続けてはいる。
そんな成果を以下に。

 

こちらは2017年、岐阜県内にて。

 

こちらは2018年、愛知県内にて。

赤団子本体は見えていないが

画像の水滴の様な物は赤団子から分泌される甘露。

これは粘度が高く、水飴の様な質感。

そして本当に蜜の様に甘い。

内部に胞子(分生子)を包含しており

蟻に舐めさせる事によって拡散させている由。

 

こちらは2022年、三重県内にて。

 

こちらは2022年、岐阜県内にて。

天狗巣病が背景になっている。

 

この様に地道に探索と観察を続けている。

 

 

所で当方が赤団子病を追い続けているのは
江戸時代の書物のキノコの記事の中に
「竹蓐竹林中に生じ」と記載されていたのを

見た事が切っ掛けだ。
そしてその「竹蓐」に「すゞめのたまご」と

ルビが振られていたのだ。

   (『日本山海名産図会』より 赤枠は当方による画像加工)

「竹蓐」って何?
「すずめのたまご」はどう見ても当て字(当て読み)だ。
そもそも本来は何と読むのだろう???

さっぱり判らない

 

色々調べた所、「竹蓐」は「チクジョク」と読み
「スズメノタマゴ」は Stereostratum corticioides

と言う菌によって引き起こされる

「メダケの赤衣病」の別名だと判明した。
だが、メダケの赤衣病は

竹の稈にマットな質感の物が薄く広がる寄生病で
とても「雀の卵」には見えない。


これは一体どう言う事なのだろうか???

 

と、疑問を持って調べを進めて行った所、
中国の古文書『本草綱目』の「竹蓐」の項で
複数の竹類の寄生病の事を

混同して記載してしまっていた為に生じた混乱が

原因だったと思われる事を突き止めた。

『本草綱目』は16世紀末に中国で刊行された

当時の博物学書、薬学書に当たる書籍だ。
過去の様々な文献の情報を取りまとめた大著で
その後の本草学に多大な影響を与えた。

だが、著者の李時珍は「竹蓐」の事を

良く知らなかった為に

「竹蓐」の項に「竹肉」「竹菰」「竹蕈」と

形も生態も違う、竹に関わる別の種類の物を

竹蓐の別名として一緒くたに記載してしまっているのだ。

 

曰く「鹿の角に似た白い物」、

「竹の枝に生える鶏卵状の肉色の物」、
「根の節に生える紅色のキクラゲ状の物」、
「弾丸の様な物で白キクラゲのような味」。

 

これだけ特徴の違う物を同じ物の別名扱いをしているのだ。

挿図は形状の異なる物を並列する形で描かれている。

まぁ、そう描かざるを得ないよなぁ。

その為、「竹蓐」は正体不明の謎の物として
混乱を来たす結果となってしまった。

 

『本草綱目』を絶対の教科書とした日本の本草家は

同書内に記載されている物が

日本の何に当たるのかを探求し、次々に比定していった。

だが竹蓐については、その正体の解明にはかなり悩んだ様で

多くは解釈を諦めて無視したり、

『本草綱目』の記述を簡略化して載せるに留めたり、

またはそれぞれが独自に解釈をしたり、と

余計にカオスな状態になってしまっていた。

 

高名な本草家であり、

日本の本草学に多大な影響を与えた小野蘭山も

『本草綱目啓蒙』の中で幾つもの異名を竹蓐に充てており

その中に「スズメノタマゴ」もあった。

それが見た目が全く卵らしくない「メダケの赤衣病」の事を

現在も「スズメノタマゴ」と呼ぶ様に

なってしまった原因だと当方は考えている。

 

上掲の『日本山海名産図会』の記述部分も

唐突に「竹蓐竹林中に生じ」としている辺り、

著者も竹蓐が何なのかを解っていないのだが

知識をひけらかす為、または

「竹蓐に触れる俺ってかっこいいや〜ん」と虚勢を張る為、

言わばマウント取りの為にわざわざ書いた、と

当方は邪推している。

 

そして、本来「スズメノタマゴ」と呼ぶべきは
「メダケの赤衣病」では無く
「マダケの赤団子病」の方では無かったか、

と当方は考えているのだ。

また、詳細は割愛するが

『本草綱目』の「竹蓐」の記述の中で混同された物には
「肉球菌」と呼ばれる物があるのでは無いか、と考えた。

 

「肉球菌」は日本には

自生していない種類の竹に発生する寄生菌で

その為、日本で観察する事は出来無い。

生態は赤団子病に似ているのだが
赤団子病は大きくてもウズラの卵大なのに比べて


肉球菌はテニスボール大、またはそれ以上にもなる、

と言う点が決定的に違っている。

     (The MycoKey Mycelium blogより引用)

どちらも生薬の素材となっている点が興味深い。

 

肉球菌を一度見てみたいなぁと思い
香港に旅行に行った際に

生薬素材の卸店を何軒も回って尋ねた。

そして赤団子は購入する事は出来た。

だが肉球菌は香港では取り扱いが無かった様で

購入する事は出来無かった。
うーん、残念。

 

となると現地に足を運んで探さないとならないのかなぁ。
でも、それはあまりにもハードルが高いなぁ。
ただでさえ当方はコミュ力が低いのに
中国語も英語も話せない当方にはまず不可能だよ。

そもそも何処に生えているかも判らないしなぁ。

雲南省にはあるらしいけど、

日本より広い土地の中からどうやって探すと言うのだ。
でも何とか方法は無い物かなぁ・・・・・・

 

悶々としながら幾星霜。
ある時にwebで肉球菌を検索していた所、
中国の通販サイトの日本語版サイトで
肉球菌が取り扱われている事を発見!

          CHINAMARTのサイトから引用)

 

中国通販サイトの日本語版は他にもあったのだが

そこでは肉球菌の取り扱いは無かった。

このサイトは最近出来た物の様だ。

いやぁ、知らなかったなぁ。

これはチャンスだ。

これはもう購入するしかない。

それと、序でに赤団子も買ってみよう。

 

実は以前、香港で購入した赤団子と
京都・愛知・岐阜で採集した赤団子を
大きな一つの保存容器に纏めて入れて置いた所
そのどれかから虫が湧いてしまい
全てが食害を受けてしまっていたのだ。


ビニール袋に入った物も穴を開けられて食われてしまっていた。
因みに沸いた虫はアザミウマの仲間だと思われた。

保存容器の中は正に地獄絵図状態。
何せ外敵は入らない密室で
食料は潤沢にあるの天国なのだ。
それはもう、大量発生していた。

それこそ培養していた状態なのだからそれも当然だ。
あまりの事に悲鳴を上げそうだった。
あまりの光景に記録の為の撮影をする事すら出来無かった。

 

残せる部分だけでも何とか拾い集めようかとも思ったのだが
この虫が香港産だった場合、
当方がうっかり外に逃がした事によって
万が一国内で繁殖して大変な事になるかも知れない。
それを避けるには
これはもうこのまま蓋を閉じて処分するしか無い。

仕方無く密閉したまま可燃ゴミとして出した。
そのまま焼却場で灰になった筈だ・・・・・・


なので、手元には赤団子が無い状態だったのだ。
それをこの際、購入する事にした次第。

折角なら幾つかの産地のを買って比べて見る事にしよう。
と言う訳で「肉球菌」の他に
四川省産赤団子

          (CHINAMARTのサイトから引用)

          (wikipediaから引用)

 

河北省産赤団子

          (CHINAMARTのサイトから引用)

          (wikipediaから引用)

 

雲南省産赤団子

          (CHINAMARTのサイトから引用)

          (wikipediaから引用)

 

安徽省産赤団子

          (CHINAMARTのサイトから引用)

          (wikipediaから引用)

 

を注文してみた。
因みにそれぞれ日本円で1000円程。

最初に香港で買ったときは800円くらいだったから

少し値上がりしてるなぁ。

とは言えそれも10年以上前なのだから

値上げ幅で言えば微々たる物か。

 

さて、問題の肉球菌を注文する。
こちらは赤団子に比べると4倍の値段。
中々のお値段だなぁ・・・・・・
まぁ、それも仕方無い。

 

クレジットで支払い、注文完了。

さて、これで本当に届くのだろうか。

言ってはアレだが、C国のサイトなのだ。
まともな物が届かない可能性もあるし
そもそも詐欺サイトだった可能性もあるのだ。
だが、信じて待つしか無い・・・・・・

 

所でそのサイトは親切な作りで

オーダーステータスの更新がとてもマメだった。

それぞれの注文した物が現在どんな状況で

現在位置は何処なのかが詳細に更新されていた。

それを見る限り、順調に進んでいる様だった。

そして順調に中国を飛び立ち日本に到着し

税関の手続きが取られている、との表示が。

 

注文してから2週間後、その荷物が届いた。
それがこれ。


いかにも怪しいw

 

猫も訝しんでいるよw

 

開封すると各々が別の箱に入っている。

 

それを全て開梱。

いやぁ、中々壮観♪

これが遥々中国から海を越えてやって来たのだなぁ。

 

赤団子は見た所、地域的な差は無いみたいだなぁ。

まぁ、サイトで見た時からそうは思ってたけどね。


勿論、DNA的にどうかは判らないが
当方が調べた範囲ではその点に関しても研究はされていない様だ。
と言う事はこれらの赤団子病と日本の物は同一のDNAなのかなぁ。
まぁ、元々研究者の少ない分野だし
当方がwebで拾える範囲にその情報が無いだけで

実際には別種なのかも知れないけれど。

そもそも、販売会社がそれぞれ地域は違うけど

実は産地は皆同じだった、

なんてのだったら目も当てられないけどね。

 

 

さて、今回の本来の目当ての肉球菌。

果たしてどんな感じの物なのだろう

と、妙に小さいなぁ。


発生する個体に多少の大小の差異はあったにしても
これはあまりにも小さいではないか。

 

 

と、よく見ると「竹紅菌」と書いてある。


これは肉球菌の別名では無い。
肉球菌とは別の種類の竹類寄生菌の
Hypocrella bambusea(和名無し) の事だ。

この菌も日本では発生していない種類だ。

なんて事だ・・・・・・!

 

改めてサイトの画像を見てみる。

左上に「野生竹紅菌」としっかり書いてあるでは無いか・・・・・・

 

実はサイトには、この画像と共に別名として

 

  野生竹紅菌 竹生小肉球菌 竹紅菌素 竹紅菌 野生竹紅菌

 

とも書いてあった。

この中の「竹生小肉球菌」に検索が引っ掛かったのだ。

それで当方は「やった!肉球菌だ!」と思い込んでしまったのだ。

 

だが、この別名は当方が参考資料にした

中国の書籍『中国薬用真菌』にも

その日本語版である『中国の薬用菌類』にも

中国の増補版である『蕈菌医方集成』にも無かった。

「竹生小肉球菌」では無く「竹生小肉座菌」は

どの書にもあったので、

「竹生小肉球菌」はサイトを作成した人が間違えたのか、

サイト作成者が個人的に使っている呼び方なのか、

書籍発行以降に定着した呼び方なのかは当方には判らない。

 

何にしても、竹紅菌は本来当方が欲しかった物では無い。

何てこった・・・・・・

矢張り肉球菌を入手する事は出来無いのかなぁ。

凹んだ気分で更に検索を掛ける。


今度は「肉球菌」で無く

学名の Engleromyces goetzei で検索をする。
と、別の中国の通販サイトがhitした!

           Health Wisdomのサイトより引用)

これこそ肉球菌だ!

 

しかしこちらは日本語の対応をしていない。
幸い、英語のサイトなので
webでの機械翻訳を駆使して何とか注文をしてみた。


先の竹紅菌と比べると倍の値段。
つまり赤団子の8倍の値段・・・・・・
だがそれも仕方無い。
あるかどうかも判らない現地に行くよりも

確実に入手出来るのだ。
その対価なのだ。
仕方無い!
そう言い聞かせて思い切って注文。

 

と、サイトから返事が。
それを機械翻訳をすると、
なんとサイト掲載の2倍の量を注文しないと

送れないのだとか。

ただの手違いなのか

海外へ発送する場合の縛りなのかは判らない。
だが、と言う事は赤団子の16倍の値段になる・・・・・・

(∩;゚皿゚)ヒイィィィッッッ!

 

だがそれも仕方無い。
仕方無いのだ!
それで注文しなければ仕方無いのだ!
それこそ清水の舞台から飛び降りる勢いで注文!

何度もやり取りをして此処まで一週間。

 

クレジットの支払いでもトラブルが発生し
その為だけに何度もやり取りをして更に一週間。

何とか注文完了。
本当に届くのだろうか・・・・・・


言ってはアレだが、C国のサイトなのだ。
まともな物が届かない可能性もあるし
そもそも詐欺サイトだった可能性もあるのだ。
だが、信じて待つしか無い・・・・・・


毎日サイトのオーダーステータスを見ていたのだが
何の動きも無い。
不安になりながら待つ事更に一週間。
突然オーダーステータスが動き始めた!
ちゃんと注文は通っていた様だ!

ちゃんと手続きをしてくれている様だ!


更に待つ事一週間。

中国を飛び立ち日本に到着し

税関のチェックを受けている旨の表示が。

 

そしてやっと届いた!

注文を始めてから一か月で遂に肉球菌が届いたのだ!

竹紅菌の時とは違う重量感。
今度こそ本物の肉球菌だ!
ワクワクして開ける。

 

で、出て来たのがこれ。

あっ、そうか、そうだよね・・・・・・
生薬の素材として売ってるんだよね・・・・・・
だからスライスして乾燥した物になるよね・・・・・・

赤団子と竹紅菌はそのままの形状で届いてたし
サイトには丸のままが載ってたから
丸のままの形の物が届くと思ってたのだけど
あくまでも生薬の材料だもんね・・・・・・


生薬の材料って、スライスして乾燥させるもんね・・・・・・
こうやって届くのは当然だよね・・・・・・
標本を売ってる訳じゃないもんね・・・・・・
そうだよね・・・・・・(´・ω・`)

 

ちょっとショックだった。
これじゃぁ元の形が正確には判らないもんなぁ・・・・・・


だが、これで良しとしよう。
実際、決死の思いで現地に行って

必死にコミュニケーションを取って竹藪を探して

運良く肉球菌の現物を採取出来たとしても
検疫の関係からそれをそのまま持ち込めるとも思えないしなぁ。
学者でも無い当方が海外から寄生菌の塊を入手しようとした場合、
スライス乾燥品になってしまうのは仕方無いだろう。

 

袋には「肉球菌」とのシールが貼ってある。

今度こそ本物の肉球菌だ。

良かった・・・・・・(つД`)

 

とにかく現物を入手する事は出来たのだし。

こう言う状態でも実物を手にする、と言うのはやはり違う物だ。

取り敢えず開封して中身を見てみる。

いやぁ、矢張り大きいなぁ。

赤団子病と全然違うよ。

 

これなんかは二つ折りになっててこの大きさだ。

これはソフトボール大以上だったのだろうなぁ。

 

折角なら赤団子、竹紅菌と並べて比べてみる。

これだけ大きさが違うのだなぁ。

 

肉球菌の外縁部はこんな感じ。

上掲の肉球菌の画像でもそうだったけど

赤団子に比べると色味は薄い。

画像の生の状態では赤味はあったが

乾燥するとかなり色褪せてしまう様だ。

 

因みに各々の匂いについて。

以前、赤団子については最初の記事

「何とも表現の出来無い、独特の香り」と書いた。

グルメリポーターでもない当方には困難な事だが

それを無理矢理言語化すると

「甲虫のニオイに鰹節の匂いを足して薄めた感じ」

となるのだろうかなぁ。

それで想像して頂けたら有難い。

 

漬け込んだ焼酎の味は

更にそれが強くなった感じだった。

ちょっと生臭さを感じる気がした様な記憶が・・・・・・

 

竹紅菌は赤団子のそれにかなりの香ばしさを足した感じ。

ワインで言う所の「樽香が強く感じられる」となるのかな?

 

肉球菌は赤団子を薄めた上に

ゴマ油の香りを少し加えた感じかなぁ。

 

何にせよ、「独特の香り」と言うしか無いw

 

因みにそれぞれの菌は分類的にはそれほど近い訳では無い。

 

子嚢菌門

 └クロイボタケ綱

   └プレオスポラ目

     └シライ科

       └白井菌(赤団子病)

 

子嚢菌門

 └フンタマカビ綱

   └マメザヤタケ目

     └クロサイワイタケ科

       └肉球菌

 

子嚢菌門 

 └フンタマカビ綱

   └ボタンタケ目

     └ボタンタケ科

       └竹紅菌

 

目違いと言う事は人間(霊長目)で言えば

ネズミ目、ウサギ目レベルの違いとなる。

綱違いと言う事は人間(哺乳鋼)で言えば

脊椎がある事が共通しているだけで

クジラ、トカゲ、魚レベルで違う事になる。

だがニオイ的に似通った所があるのは

竹の寄生菌と言う共通点から来る物なのだろうかなぁ。

これこそ正に「百聞は一見に如かず」だなぁ。

 

予定外のアクシデント?で竹紅菌を入手した事によって

新たな知見、情報を得る事も出来た。

『本草綱目』の「竹蓐」の記述の考察にも

この事を加えて更に追及して行きたい。

 

その為に日中の色々な古文献を更に調査したいなぁ。

日中の本草家が「竹蓐」とどう格闘したのかを

もっと詳しく知りたい。

そして、最終的には矢張り中国の竹藪に行って

肉球菌を直接探さないとならないのかもなぁ・・・・・・

 

今から中国語を習得するのは難しいし

肉球菌が発生している竹藪に詳しい現地の人と

知り合って仲良くなるのも

かなり難しいよなぁ・・・・・・(;´Д`)

 

 

 

 

所でプラスチック容器入りのヤツ。

良く見ると中に怪しげな粉が。

これは虫の糞だ。

中で虫が湧いてしまっているのだ。

おいおい、こんな状態で売ってるのかよ。

まぁ、1個でもチェックをすり抜けてしまうと

こうなってしまう訳なんだよなぁ。

怖い怖い。

 

前回の大損害の二の舞はしたくないので

届いた物はすべて一度冷凍庫で完全に凍らせた。

これでもうあんな目には遭わない筈だ。

何せ大金と多大な労力の結果、入手した物なのだから

可能な限り一日でも長く手元に保存して置きたいもんなぁ。

 

中国の得体の知れない虫を増殖させてみる、と言う

怪しい誘惑に駆られる所が無かった訳では無いけどねw

 

 

           ※赤団子病関連アーカイブス→こちら

 

 

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| 植物寄生菌 | 00:00 | comments(0) | - | pookmark |
足下に

突然だが当方はドクダミ茶を愛飲している。
ペットボトルに入れ、冷蔵庫で冷やして
一年中、毎日水代わりに飲んでいる。
始まりは体質改善の為だったが
その味が好きになってしまい
今ではそれを常備せずに居れなくなってしまったのだ。
 
最初は漢方薬店で売られている物を買っていた。
ドクダミの葉は「十薬(ジュウヤク)」の名で
生薬として売られている。
輸入物は安価だが、中身が不安だ。
国産物は安心だが(多分)何と言っても高価だ。
どちらにしても一年中飲むにはコストが掛かってしまう。
 
所でドクダミは探せば結構足下に生えている。
ならば自分で作ろう、と採取し乾燥させてみた。
それでドクダミ茶を作ったのだが、妙に味が薄い。
何時ものコクも無い。
何か製法が良くなかったのだろうか???
 
で、調べてみた所、採取時期に問題があった。
ドクダミは花の時期に採取しないと薬効が無い、との事。
そーなんだ!それは知らなかった!!
 
翌年のドクダミの花の時期。
名古屋の場合、5月中旬から6月中旬になるだろうか。
満を持して採取し、乾燥。
早速お茶にする。
成る程、飲み慣れたあのドクダミ茶の味だ。
同じ場所で採取したドクダミなのに
採取時期によってこんなにも味が違うのだなぁ。
それを発見した昔の中国の人は凄いなぁ・・・・・・
 
それ以来、その時期にドクダミを採取するのを
毎年の恒例行事?にしている。
そうしていた所、友人から
「庭のドクダミを駆除して欲しい」と依頼された。
何でも、隣の空き家からドクダミが大量に進入して来て居て
とても難儀している由。
そんな所、当方がドクダミを採取している話を聞いて
良かったら、と話をくれた。
当方的にも願ったり叶ったり。
 
こちら友人宅の庭スペース。


ドクダミだけ、全て採取。

この場合、駆除の為なので根や根茎ごと採取。
友人は庭が綺麗になり、当方はドクダミが入手出来た。
正にwin=winの関係♪
 
ただ、これだけではドクダミの葉は一年持たない。
他で大量に採取し、一年分を確保する必要がある。
ドクダミは山野や空き地等に生えている事が多いが
実は都会地でも密集して生えている場所がある。
それは駐車場だ。


何故か駐車場の周縁部でアスファルトを破って
群生している事が少なくないのだ。
 
駐車場でのドクダミの採取は
山野に自生している物に比べて利点が多い。
まず、ドクダミ以外の他の植物の混入が少ない事だ。
山野での採取は他の植物の混入を避けるのは難しい。
つる草が絡んでいる事も少なくない。
それに、山野でのドクダミは虫が付いていたり
蜘蛛が巣を張っている事が多いが
駐車場のドクダミではそう言う事は殆ど無いのだ。
更に、アスファルトの隙間、割れ目から密集して生えているので
簡単に大量に採取する事が可能だ。
元々が駐車場脇に勝手に群生している雑草だ。
それを勝手に採取しても多分問題は無いだろう。
むしろ感謝されるかも???

まぁ、基本的に雑草だから当方が採取する前に

全て刈り取られてしまっている事も少なくないのだけど。
 
さて、採取したドクダミは干す前に処理が必要だ。
まず洗って泥を落とす。

何せ駐車場の片隅産なので

犬や人の小便が掛けられてるかも知れないしね。

そして枯れ葉や病葉を取り除く。
更に花を除去する。


ドクダミ茶をハーブティーとする場合は
「映え」の為に花の部分はあった方が良いだろうが
生薬とした場合、薬効があるのは葉の部分だけなので
余計な物は極力排除するのは当然。
何せ大量に集めているので花の量も大量になってしまう。


こうする↑と何か毛虫がうじゃうじゃしているみたいで
ちょっと気持ち悪いw
 
そして除去処理をしたドクダミ20本程を輪ゴムで束ねて
ハンガーに下げて天日で干す。

 

乾燥後、千刃扱きよろしくシゴいて葉のみを集める。

こちらは葉を除去した後の茎の束。

 

葉のみになった乾燥ドクダミ。

 

それをフリーザーバッグに小分けにしてから

圧縮した状態で保存し、一年中愛飲しているのだ。

 

以前、山採りのドクダミを安価で売っているサイトから
注文して取り寄せた事がある。
届いた物を見てみると、花も茎も色の悪い葉も
そのままに乾燥させた物だった。
だから安かったのかー
で、茶にしてみると

普段飲んでいる物とは味が違っていた。
ふーむ、ハーブティとしてのドクダミ茶は
こう言う味なのかぁ。なるほど。

これはこれで悪くは無いのだけど

矢張り当方は「十薬」としての
ドクダミ茶の味の方が好きだなぁ・・・・・・
なのでそれ以来、自分で採取して制作している次第。

 
さて、今年もドクダミの花の季節。
今年は別の友人からドクダミを提供して貰っていた。
庭の掃除でドクダミを除去した物を
45リットルの袋満杯でくれたのだ。
これも正にwin=win。
早速洗って処理を。
と、その最中にこんな物を発見。


なんだこれは?
 
これはムラサキカタバミの葉だ。
それにさび病(銹病)が発生している模様。

ムラサキカタバミは何処にでもある雑草だ。
それにさび病が発生するなんて知らなかった。

 

レンズを使って接写。

 

更にトリミング。


当方のカメラと技術ではこれが限界だ・・・・・・

にしても正に「さび病」と言った見た目だなぁ。

 
ドクダミと共に刈り取られ
ドクダミと共に水洗いされた為に
クチャクチャになってしまっていた。
なんとか新鮮な状態の物を見てみたいなぁ。
 
これをくれた友人の家の庭に行けばまだあるかも知れないが
既に全て刈り取られてしまった後かも知れない。
そもそも友人はムラサキカタバミに興味はなかったのだろう。
だからドクダミと共にウチにやって来たのだ。
残っているかどうかも判らない、
何処にあるのかも判らない物を探しに
友人の家に押し掛けるのも気が引けるしなぁ。

そもそも友人はさび病には興味無いだろうしなぁ。
まぁ、先述した通りムラサキカタバミは
何処にでも生えている雑草だ。
その内遭遇できる機会もあるだろう。
それを期待して居よう。

 


さて数日後。
駐車場のドクダミを刈りに某所へ。
採取しようとしてふと見るとムラサキカタバミが!


その中に怪しげな色あせた葉が。

 
葉を裏返してみる。


さび病が発生している!
 

しかも沢山あるではないか!

いやぁ、早速遭遇出来るなんてなぁ。

正に僥倖♪
 
帰宅後、色々調べてみた。
この病状を引き起こしているのは「ムラサキカタバミさび病菌」で
学名は Puccinia oxalidis (プクキニア オキザリディス)。

「プクキニア」はイタリア人の姓「Puccini(プッチーニ)」の事で

さび菌の総称。

何故「プッチーニ」なのかは調べ切れなかった。

「オキザリディス」は「オキザリス」=「カタバミ」の学名からで

「カタバミの」の意。

ギリシア語で「酸性」を意味するオクシス(oxys)を元に

カタバミの葉に酸味がある所から「オキザリス」と名付けられた由。

つまり Puccinia oxalidis (プクキニア オキザリディス)とは

「カタバミのさび病菌」と言う意味になる。

そのまんまやんw

 

このムラサキカタバミさび病。

実は園芸家の間では良く知られた病気だった模様。

園芸種のカタバミでの発生頻度も高く

ごく普通に存在している菌の由。
いやぁ、知らなかったなぁ。

検索した所、キノコの著書もあるoso氏のサイトにも掲載されていた。
氏も同じく、ごく普通にある菌とは

遭遇するまで知らなかった由。
この菌についてとても詳細に書かれている上に

さび菌の部分の鮮明な画像も満載ですので
ご興味がありましたら是非ご参照下さい(→こちら)。

因みにoso氏のサイトには何時もお世話になっております。

不躾ながら此処でお礼申し上げます。

m( _ _ )m

 

 

所でムラサキカタバミは当方の実家の庭にも普通に生えていた。
思い返せばこんな黄ばんだ葉も見ていたと記憶する。
だが裏返して見る事はしていなかった。
まさかそんな病変だったなんて思いもしなかったよ。
まさかそんな身近にさび病があったなんてなぁ。
まぁ、当時は昆虫少年だったので
植物や菌類にはあまり興味が無かったしなぁ。
ましてさび病なんて存在自体知らなかったし。

その時に見ていたら、その後の人生変わっていたかも???
 
 
そんな「今まで気付かなかった物」のもう一つがこちら。


これは「メヒシバ黒穂病」と思われる物。

 
メヒシバはごく普通の雑草。

                          (wikipediaより引用)
日本全国の道ばたや空き地、庭などに
当たり前の様に生えている。
あまりにも当たり前過ぎる為に
逆に目に入っていない人の方が多いかも知れない。
実際、当方もそうだった。
近所の河川敷でたまたまこの黒穂病を見付け
調べた所、ホストは「メヒシバ」で
何処にでもある雑草だと知った次第。
黒穂病が無かったら目に留めなかったよ。

 

「メヒシバの黒穂病」を引き起こしているのは

Ustilago syntherismae(ウスティラゴ シンゼリスマエ)と言う菌。

和名は無い様だが「メヒシバの黒穂病菌」ではダメなのかなぁ?

因みに「Ustilago」は「スス」の意で黒穂病全体を指す。

「syntherismae」は調べたが解らなかった。

 

メヒシバは田のあぜ道や畑にも普通に生える為、

肥料や水を横取りする目障りな物として

農業関係者に嫌われている由。

その駆除を目的に

農作物や環境に影響を与えない「生物農薬」として

この黒穂病菌を利用する研究がされている事が

2010年の宮城大学食産業学部紀要に掲載されていたが

現在それが実用化されているかどうかは不明。

メヒシバはイネ科なので

万が一稲に感染しては、と考えて慎重になっているのだろうか。

今の所、稲への病害は報告されていない様だが。

因みに「イネ墨黒穂病」と言う病害は存在しているが

全く別の菌による病害なので

「メヒシバの黒穂病菌」とは無関係の様子。

それにしても色々な研究があるもんだなぁ。
 

 

と、それはともかく。
そんな風に漫然と見逃している物って
実は沢山あるのだろうなぁ。

足下のそこら中にムラサキカタバミさび病や

メヒシバ黒穂病があったなんて

つい最近まで知らなかったよ。

それがこういう菌だからまぁ良かった?物の
それが「幸せ」や「金儲け」の切っ掛けだったりしてる事も
実は多いのかも知れないよなぁ。

それに気が付いて、それを逃さない人が

所謂「成功者」なのかも知れないんだよなぁ・・・・・・

 

まぁ、当方はこういう菌を見付けられる事が

幸せでもあるからそれで良いのだけどね。

金儲けにはならないけれどね・・・・・・il||li _| ̄|○ il||li 

 

 

 

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| 植物寄生菌 | 00:00 | comments(0) | - | pookmark |
赤団子を求めて 番外篇その3

何度もシツコク書いているのだが

当方はマダケの赤団子病を追い求めている。

       ※アーカイブスへのLINKは最下段にあります

 

名古屋東部の某公園の竹藪に良く発生して居るので

毎年定点観察をしているのだが

赤団子病が発生して居た竹が何本も刈られてしまっていた為に

今年はその場所で赤団子に遭遇する事が出来無かった。

赤団子が発生して居たから刈られたのか

刈った竹がたまたま赤団子が良く発生する竹だっただけなのかは不明。

どちらにしても残念。

また来年に期待したい所。

 

さて、竹を観察していると

赤団子以外の妙な物に遭遇する事が少なくない。

以前にも記事にしたが(アーカイブスの番外編参照)

それ以外の物もまだ幾つもある模様。

その一つがこちら。

kdng190531 (8).JPG

一見なんでも無い竹の一枝だが実は妙な物が写り込んでしまっている。

お判り頂けただろうか・・・・・・

 

その部分をアップしてみる。

kdng190531 (6).JPG

kdng190531 (9).JPG

所々に付いている黒い粒々がそれ。

これは「マダケの小団子病」と言われる物。

Mycocitrus phyllostachydis(マイコシトラス フィロスタキディス)

と言う菌がマダケ類に寄生する事により発生する。

 

因みに属名のMycocitrus は「Myco」と「citrus」の複合語。

「Myco」は接頭語で「菌類の」の意味。

「citrus」は「シトラス」で柑橘類の意味。

つまり「Mycocitrus」とは「菌類の柑橘類」の意味となる。

何のこっちゃと思ったのだが「Mycocitrus」と言う属には

Mycocitrus aurantium と言う種類があり

それが柑橘類にしか見えない外見なので

これが属の基準名になっているのかも知れない。

               Dr. D. Haelewatersさんのtwitterより引用

そして小種名のphyllostachydisはマダケの学名から来ている。

つまり「マダケに発生するMycocitrusの仲間」と言う事の由。

 

で、小団子病は実は結構発生して居ると思われるのだが

何分とても小さくて黒い上に先の画像の様に転々と発生し

枝一面にびっしりと群生する、と言う事も無いらしく

殆ど目立たない為に人の目に留まる事はかなり少ない様だ。

当方も赤団子病の事を色々調べていてその存在を知り

気を付けて竹を観察する様になって初めて気が付いた次第。

kdng190531 (7).JPG

ご覧の様に枝の分かれ目、節の部分を選んで発生する様だ。

ぱっと見、そう言う部分にゴミが溜ってる様にしか見えないよなぁ。

 

さてこちらは天狗巣病の初期、所謂「つる状化期」の様子。

枝の先端が細かく分かれ始めた状態(「天狗の巣」参照→こちら)。

kdng190531 (10).JPG

kdng190531 (11).JPG

これがどんどん枝の分岐が激しくなり

何年も掛けて房状になって行く、その初期段階。

 

で、つる状部分を良く見ると其処にも小団子が。

kdng190531 (12).JPG

 

その中の一部を切り取ってみた。

kdng190531 (13).JPG

kdng190531 (14).JPG

 

小団子の一つをアップにしてみる。

kdng190531 (17).JPG

 

更にドアップ!

kdng190531 (19).JPG

何か虫の糞みたいだなぁ・・・・・・

実際、たまたま小団子に目が向いたとしても

何かの糞と思われて無視されるのが関の山かもなぁ。

 

赤団子や天狗巣病に比べると、とても地味で控え目。

天狗巣病は最終的には寄主である竹を枯らせてしまうのだが

赤団子も小団子も、其処までの病原性は無い様に見える。

ひょっとしたら竹の中で常在菌として振る舞っているのかもなぁ。

特に小団子は、この控え目具合はとてもお淑やかだよなぁ。

勿論、当方には竹の気持ちは判らないので

実はとんだ厄介者と思って迷惑しているのかも知れないけれどw

 

 

所で赤団子は生薬として漢方薬に使われているのだが

小団子に関しては食用かどうかに言及された資料も見ないし

何がしかの薬効も毒も無い様だ。

まぁ、何せ物があまりにも小さいので

そう言う事を試してみよう、と言う気にもなれないだろうしなぁ。

粉末にして胡椒みたいに香辛料として使えたら面白いけど

それにしたって実用に足る量を確保するのはとても大変そうだ。

其処までしなくても、現代は様々なちゃんとした香辛料が

普通に買える時代だしね。

当方も敢えて試してみる気は無いよw

 

 

さてこの小団子。

この黒い状態で長期間残存するのでこうやって目に付くのだが

発生初期はもっと質感も色も違う状態との事(→こちら)。

黒いのは枯死してミイラ状になった物の由。

ミイラだから長期に残存出来るのだなぁ。

ミイラになる前の新鮮な状態の物に是非遭遇してみたい物だ。

それが今後の課題。

 

 

所で、今から12年前に撮影したこの画像。

これも小団子かと思って居た。

kdng190531 (1).JPG

kdng190531 (2).JPG

だが、この扁平な形からすると小団子では無くて

タケクロイボタケ(Coccodiella arundinariae)

だったのかも知れないなぁ。

タケクロイボタケは笹の葉の上に発生する種類との事だが

竹に発生する時は画像の様に葉柄に発生するのだと言う(→こちら)。

当時使っていたデジカメではあまり接写が出来無かった上に

当方の撮影技術も今よりアレだった為に

こんな画像しか撮影出来無かったのが残念。

それ以来遭遇出来ていないしなぁ。

赤団子、小団子だけで無く、タケクロイボタケにも気を付けて

今後観察して行かなければなぁ・・・・・・

 

 

※過去記事も併せてお読み頂けましたら幸いです
 アーカイブス→
こちら

 

 


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| 植物寄生菌 | 00:28 | comments(0) | - | pookmark |
仙人杖

何度も書いているのでしつこくてアレだが、
当方は「マダケの赤団子病」を追い求めている。
その為、竹が生えている場所があると
取り敢えず近付き、藪の中に入り観察している。
そうしていると時々妙な物に遭遇する事がある。

これもその一つ。

sen-nin-jou (8).JPG

sen-nin-jou (10).JPG

sen-nin-jou (9).JPG

 

sen-nin-jou (17).JPG

sen-nin-jou (13).JPG

真っ黒になった竹だ。

 

多くの物はまるで漆を塗ったような艶。

sen-nin-jou (25).JPG


そして、多くの場合はこの様に倒れている。

sen-nin-jou (27).JPG

sen-nin-jou (12).JPG

sen-nin-jou (11).JPG

sen-nin-jou (22).JPG

 

 

黒い竹と言うと、その名の通り「黒竹」と言う種類の竹もある。

oniwaaichi.blogspot.jpg

ガーデニング花図鑑さんのサイトより引用)

sodatekata net.JPG

お庭ショップ・myガーデンさんのサイトより引用)

shorti jp21971.jpg

ホルティ 生活を彩ろう。花、植物、ガーデニング情報をお届けさんのサイトより引用 )


黒竹は淡竹(ハチク)の一品種で
最初は普通の竹なのだが、成長し数年経つと
メラニン色素によって表面が黒くなるのだ。
その色を生かし、工芸品や竹垣等に利用される事が多い。
また観賞用として庭園等に植栽される事もある。

 


だがこれは、それとは全くの別物。
Glomerella hsienjenchang (グロメレラ・シエンジェンチャン)
と言う菌によって枯死した竹なのだ。
病名で言うと「マダケ類黒色立枯病」。
別名「仙人杖(センニンジョウ)」。
真っ黒になった竹の不思議さを、

仙人が持っている杖に見立てた命名の由。
実は種名の「hsienjenchang」は
「仙人杖」の中国読みをそのまま学名に充てた物なのだ。


罹患の初期の状態の物はまだ見た事が無いのだが
最初はこの様に黒い点々から始まる様だ。

sen-nin-jou (36).JPG

sen-nin-jou (35).JPG

 

この黒点が子嚢と呼ばれる部分。
内部で胞子が作られ、飛散される由。

その黒点から色素が滲み、段々広がって行き

sen-nin-jou (1).JPG

sen-nin-jou (34).JPG


最終的に竹全体を黒く染めてしまう。

sen-nin-jou (14).JPG

sen-nin-jou (25).JPG

 

その為、真っ黒の部分も良く見ると黒点のブツブツが見える。

 

真っ黒で艶があるので硬そうに見えるが実はかなり脆い。
仙人杖の多くが倒れた状態で見つかるのはその為だ。
そして節の部分でパキンと折れている事も多い。

sen-nin-jou (33).JPG

sen-nin-jou (32).JPG

sen-nin-jou (31).JPG

 

恐らく竹がまだ筍の内に罹患し

竹としての充分な成長を遂げられない内に
菌が全体に回ってしまう為に
竹の組織が柔らかいままで枯死してしまうのだろう。
その為に脆く折れやすいのだろう。

だが、維管束の組織はそのままなのか
枯死した後でもこの様に残存している。

sen-nin-jou (28).JPG

sen-nin-jou (29).JPG

(この↑画像の物を開いたのがこちら↓)

sen-nin-jou (30).JPG

 

仙人杖になった竹を観察すると根元は真っ黒でも、

先端は黒点が散らばっている状態だったり
または黒点が無い状態で枯れている事がある。

sen-nin-jou (26).JPG

その事から推察すると黒色立枯病菌は土壌に潜伏しており
根から維管束を通って先端に向かって感染が拡大される、
と考えられるのではないだろうか。
その為に維管束は生かされている、のでは無いだろうか。

 

そして、維管束以外の部分(基本組織、もしくは
薄壁細胞と呼ばれる部分)は菌によって消化されてしまうのか、
もしくは菌の成長には不必要なので

細胞の成長が阻害されてしまう為に
仙人杖は脆く折れやすいのではないだろうか。

 

さらに推察すると、筍の状態の時に罹患する、と言う事は
まだ皮に包まれた状態なので罹患初期の状態には

遭遇出来無いのかも知れない。

やがて立枯病として成熟した後に皮が落脱して黒い竹となって出現し

胞子を飛散させるのだろうなぁ。

 

そして皮が落脱し、罹患した稈が露出すると

急速に乾燥するのでこの様にシワシワになるのだろう。

sen-nin-jou (15).JPG

sen-nin-jou (16).JPG

上掲画像の殆どがシワシワ状態な理由はそれなのだろう。

そして、維管束以外の組織が貧弱な為に折れやすいのだろうなぁ。

倒れている、と言う事は胞子を飛散させる役目を終えた、

と言う訳なのだろうなぁ。


こちらは立枯病になってはいるがカビに重複罹患してしまった為か
黒くなり切れずに枯れてしまった状態の物の様だ。

sen-nin-jou (7).JPG

sen-nin-jou (6).JPG

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sen-nin-jou (3).JPG

sen-nin-jou (2).JPG

こんな風になる事もあるのだなぁ。
で、これには皮が一部残っている。
黒色立枯病として未成熟な状態で枯死してしまったので
この様に皮が残されてしまったのでは無いだろうか。

まぁ、誰かが若竹を伐って捨てた所にカビが生えただけかも知れないけど。

 


さてこの様に、仙人杖はとても脆く折れやすいのだが
モノの本によると時として硬くなり
実際に杖として使える様な物になる事がある、との事。
まぁ、中にはそう言う事もあるのかもなぁ、と
あまり深く考えずに思っていたのだが
「マダケ類黒色立枯病」の発症と進行状況が
上で当方が推察した通りだとすると
仙人杖が本当に杖として使える様な物になるとは
ちょっと考えられない。
実際に、当方が遭遇するのは本当に脆いヤツばかりだもんなぁ。
その話は本当なのかなぁ。
中国の事だし、また「白髪三千丈」的な与太話なのかもなぁ。

 

と思っていたら、こんな状態の物に遭遇した。

sen-nin-jou (19).JPG

パッと見は普通に黒色立枯病なのだが
触ってみると普通の竹の様に硬い。
これは一体……

 

どうやらこれは竹として充分に成長した後に
途中から人為的に伐採された為に衰弱し
その結果、黒色立枯病菌に罹患した物の様だ。

伐られて暫くは生きていたので維管束を通じて

黒色立枯病菌が感染して行ったのだが

やがてその竹が枯死してしまったのだろう。

途中の節から上は菌が蔓延しなかった様だ。

その為、先端は普通に枯死した稈の色になっている。

sen-nin-jou (21).JPG

sen-nin-jou (20).JPG

先の話の「実際に杖として使える黒色立枯病」が本当にあるとしたら
この様な成り立ちで発現した物なのでは無いのかなぁ。

それ以外ちょっと考え難いよなぁ。

 

まぁ、この一例だけで決めつけてはいけないね。

この世に数え切れない数の竹が生えていて
それこそ天文学的な数の菌がひしめいているのだ。
頑丈な仙人杖を生成する菌がいないとは言い切れない。
世界の何処かにひっそりと存在しているのかも知れないのだ。

何時か、そう言う仙人杖に遭遇したいなぁ。
取り敢えず、竹が生えている場所を見付けたら
近付いて探してみるよ。
まぁ、第一目的は仙人杖では無いのだけれどw

 


さて、この仙人杖。
マダケの竹藪に入ると、当方は実は結構な確率で遭遇する。
一度に遭遇する量は多くは無いのだが
発現頻度そのものはそれ程低くは無い様だ。
だが、web上の情報はとても少ない。

【因みに「仙人杖」だけで検索すると「仙人が持っているみたいな本物の杖」の
 画像がザラザラ出て来て「マダケ類黒色立枯病」の画像は出て来ない】

 

恐らく、ただの枯れた竹と思われていて
注目する人は殆どいないのだろう。

国内のサイトで画像を載せているのは
2018年3月30日現在、群馬県立自然史博物館の収蔵情報

滝わたるさんの里山歳時記サイトの2件だけの様だ。

となると当blogが3件目になると思われる。
これはちょっと自慢したくなるなあw

 

まぁ、仙人杖の事を検索しようとする人が
日本中でどれ位居るのかは判らないけれど。

 


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| 植物寄生菌 | 00:05 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
赤団子を求めて 番外篇その2

4月は当方が定点観測をしている場所の赤団子の甘露の分泌の時期だ。

毎年、当方はそれを楽しみにしていた。

が、2016年の4月は引っ越しの準備で追われてしまっていた為に

その観察が出来無かった。

残念無念・・・・・・

 

一段落をした5月下旬、その場所に行った所、赤団子が幾つも確認できた。

akadango0-1703 (1).JPG

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きと4月は甘露を分泌して居たのだろうなぁ。

今年はその様子を観察したいものだ。

 

だが、昨年は別の収穫もあった。

5月末に岐阜県御嵩町に出向いた際に

赤団子の発生している竹林に遭遇出来たのだ。

akadango1-1703 (1).JPG

akadango1-1703 (2).JPG

akadango1-1703 (3).JPG

中々立派な個体。

甘露もさぞ分泌して居たのだろうなぁ。

 

6月中旬、同じ御嵩町だが別の場所でも赤団子に遭遇。

akadango2-1703 (1).JPG

溝を挟んだ向こう側の竹林だったので接写が難しい。

固まって発生していた1本を撮影したが、これでは判らないなぁ・・・・・・

 

思い切りズームして何とか判別できる状態で撮影成功。

akadango2-1703 (2).JPG

akadango2-1703 (3).JPG

 

枝を無理矢理手繰り寄せて何とか接写にも成功。

akadango2-1703 (4).JPG

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これも中々に立派な個体。

 

同日、更に別の場所。

此処にも赤団子が。

akadango3-1703 (1).JPG

akadango3-1703 (2).JPG

akadango3-1703 (3).JPG

これも中々の個体。

御嵩町の赤団子は、名古屋市東部の物に比べると

大きな個体になる傾向にある様だ。

うーん、ちょっと羨ましいw

 

 

所で、赤団子を探すべく竹林を探索して居ると

他の竹類寄生菌に目が行く事も多い。

なので、2016年に目に付いた、赤団子以外の竹類寄生菌を以下に。

尚、天狗巣病に関しては別記事で触れているので省略。

 

こちらはスス病。

sasasusu1703 (1).JPG

sasasusu1703 (2).JPG

この様に葉の表面を黒いスス状の物が覆っている。

スス病は毎年、少なからず遭遇して居たのだが

2016年のこの場所は特に目立っていた様だ。

スス病の当たり年だったのだろうかなぁ。

まぁ、アブラムシ等の分泌物などを餌に、カビが葉の表面に広がる物なので

厳密な意味での「寄生菌」とは違うけれど。

 

 

こちらは「竹の黒穂病」。

Ustilago shiraiana と言う菌が寄生する事で

枝の先端が徒長し、黒い粉状の胞子を形成する物。

takekurobo1-1703 (1).JPG

takekurobo1-1703 (2).JPG

takekurobo1-1703 (3).JPG

ちょっと不気味かも。

色と言い質感と言い、ススっぽい。

こちらこそ「スス病」と言いたくなるなぁ。

まぁ、この黒い粉単独でなく

黒い粉が穂先で形成される点に着目して

「黒穂病」と名付けられた訳なのだろうけど。

 

で、何時も赤団子を観察している場所で

黒穂病もちょくちょく見掛けてはいたのだが

2016年はその発生量が例年に無くとても多かった。

中には1本の竹の殆どが黒穂病に罹患して居るのもあった。

こちらがその枝の一本。

takekurobo1-1703 (5).JPG

垂直方向に伸びている穂先は全て黒穂病の物。

 

健全な枝と比較。

takekurobo1-1703 (4).JPG

その違いが一目瞭然かと。

あんな密生して居るのは初めて見たなぁ。

 

こちらは御嵩町の、とある竹。

tengu-kurobo-1703 (1).JPG

この様に天狗巣病がかなり進行して居たのだが

その中の一枝に黒穂病が。

tengu-kurobo-1703 (2).JPG

tengu-kurobo-1703 (3).JPG

名古屋東部の黒穂病に比べると穂が小さい。

これは天狗巣病に先に寄生されていたからなのかなぁ。

天狗巣病は小さな葉を密生させる病気だ。

いくら黒穂病が穂を徒長させると言っても

元が天狗巣病のため小さかったので、これが精一杯、と言う事かと。

 

この場所には赤団子もあったので

竹類寄生菌の坩堝、寄生菌天国だったのかも知れないw

 

以下は余談と言うか、脱線。

先に書いたが、黒穂病の胞子は見るからにススっぽい。

この黒さと、粉の細かさは絵具とかに使えそうに思える。

実は、この「竹の黒穂病」では無いが

実際に塗料として使用されている黒穂病がある。

それはマコモ(真菰)に

Ustilago esculenta が寄生して発生する「マコモの黒穂病」で、

その黒い胞子を昔は眉墨やお歯黒の材料として使われていた、との事。

また、「古び粉」「マコモ墨」の名で

漆などの工芸品に古色を出したり、陰影を強調する為の顔料として

現在でも使用されているらしい(中でも鎌倉彫の「マコモ蒔き」が有名)。

墨汁の様な真っ黒では無く、セピアを帯びた独特の色合いが出る由。

 

「マコモの黒穂病」がその様に工芸材料として定着し

「竹の黒穂病」がそうならなかったのは

生成される胞子の量と、全体の発生量との関係なのだろうなぁ。

その昔、マコモは水辺や湿地帯に広く普通に繁茂して居たので

「マコモの黒穂病」の収穫は比較的容易に出来たのでは無いだろうか。

マコモその物がかなりの量があった訳だから

「マコモの黒穂病」も発生数も結構あった筈だしね。

 

因みに各々の学名は

「竹の黒穂病」= Ustilago shiraiana、

「マコモの黒穂病」= Ustilago esculenta 。

属名の「Ustilago」は「ustilo(焼く)」+「ago(導く)」の複合語の由。

「焼く事によって導かれた物」と言う事で

「炭」や「スス」を表しているのだろう。

つまり Ustilago は

「スス状の胞子を作る病菌属=黒穂病菌属」と言う意味になる。

種名の shiraiana は恐らく日本の植物病理学、菌学のパイオニア、

白井光太郎氏への献名で、それ以外の意味は無いだろう。

一方、マコモの黒穂病 esculenta は「食べられる」の意。

実は中国台湾など東アジアでは黒穂病に罹患して肥大した若いマコモを

「マコモタケ」「真菰筍」「茭白」の名で食用にしている由。

ただ、「黒穂病」と言いながら、肥大するのは穂先では無く根元の部分。

甘みとシャキシャキとした食感が特徴の高級食材、との事。

日本では大部分が輸入品だが

一部では栽培して特産品としている(→楽天の販売ページ)。

 

所で、wikipediaによるとマコモタケは

「古くは万葉集に登場する」とあるが、

全国農業改良普及支援協会のサイトには

「古くから日本に自生しているものは、食用には適しません」

「食用の栽培種として、中国などから導入し

改良された系統が栽培されています」とある(→こちら)。

これは一体どう言う事なのだろう。

マコモタケは万葉の時代から輸入(乾燥品?)されていたのだろうか。

それとも、万葉の時代は日本在来種のマコモタケを食べていたのだが

中国産に比べると美味しく無かった為に

次第に取って替えられた、と言う事なのだろうか。

うーむ、謎だ。

実はマコモタケの事を正面から取り上げた

菌食の民俗誌 ─マコモと黒穂菌の利用─

と言う書籍があるのだが当方は現在未読。

その答えが書いてあるのかどうか、近いうちに読んでみたいと思っている。

 

尚、どちらのマコモタケも成熟すると黒い胞子を充満させ

マコモ墨になる、との事。

───────と、脱線は此処迄。

 

 

さて、今年もそろそろ赤団子の甘露の季節だ。

今年はちゃんと観察もしたいし、味わいたい。

そして、新たな場所で赤団子やその他の寄生菌にも遭遇したい物だ。

 

 

 


※4/30追記
『菌食の民俗誌 ─マコモと黒穂菌の利用─』を読んだ。
当方が知りたかった
「日本でも万葉の時代にマコモタケを食べていたのか」
の明確な答えは書かれていなかった。
だが、wikipediaの記述が間違いなのだろう事が判った。
矢張り全国農業改良普及支援協会のサイトの
「古くから日本に自生しているものは、食用には適しません」
「食用の栽培種として、中国などから導入し
改良された系統が栽培されています」
が正しかった様だ。
『菌食の民俗誌 』にも同様の記述があった。
つまり、近年中国から輸入されるまで
「マコモタケ」は日本には無かったのだ。
そもそも「マコモタケ」の名称自体、
中国から輸入するにあたって名付けられた物なのだ。
だから万葉の時代に「マコモタケ」を食べている訳が無いのだ。

ただ、マコモの若芽を食べる文化は日本には元々あったらしい。
稲作文化が導入されるまではマコモは重要な食料だった、との事。
更にマコモは古代より生活や宗教儀式で使われていた。
その多くは稲藁に取って替わられたが、
今でも古式に則った儀式ではマコモで作られた祭祀具が使われる。
お盆の時に供えられる牛や馬も、元々はマコモで作られていた。
祭祀具は祭祀を執り行うに当たり、その都度作られる。
その時にマコモが繁茂地から刈り取られて来るのだが
時期によっては葉の束の中心に新芽が潜んでいる。
それを食べる文化は日本には古くからあったのだ。
そして、それは栽培種では「マコモタケ」になる、正にその部分なのだ。
恐らく、その為に両者が混同されたのだろう。
実際、wikipediaのその部分は「古くは万葉集に登場する」とあるだけで
「マコモタケ」がどの様に登場しているのか、の具体的な記述は無い。
当方は未見なのだが、恐らくマコモの新芽を食べる旨の記述なのだろう。
そもそもその時代に「マコモタケ」は無かったのだ。
なので、「マコモタケ」の段落に万葉集の事を記述するのは
間違いと言えるだろう。

 

 

 


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新たな食材? モチ病の続き

4月5月になると名古屋では今年もツツジのモチ病が発生した。

 

こちらは枝先の数枚の葉が丸ごとモチ病になっている。

tsutsujimochi2016 (1).jpg

tsutsujimochi2016 (3).JPG

 

こちらも同様。

tsutsujimochi2016 (4).JPG

こちらは粉を吹いていて正に餅状態。

 

ツツジのモチ病を見ると

当方は桜以上に春の訪れを感じるw

 

 

所で以前取り上げた『宮崎のきのこ』。

同書には椿のモチ病菌と共に

ツツジのモチ病菌が掲載されている。

miyazaki.jpg

 

そして、何とこれが食べられる物として記載されている。

宮崎の一部地域では「ガンニョ」「ガンニョム」と呼んで

子供達がおやつとして食べていた、と言うのだ。

菌類の図鑑は数多いが

ツツジのモチ病が掲載されている図鑑は多く無い。

しかも、「可食の物」として紹介されているのは

本書が唯一では無いだろうか。

 

で、記載によると「少し酸味があるが、ほのかに甘い」との事。

実は前回、ツツジのモチ病菌の事を書いた時に(→こちら

同様の内容のコメントを読者の方に寄せて頂いた。

当方は「ただ青臭くて不味い」としか感じなかったのだが

実際にはそうでは無いらしい。

これは是非確認してみなくてはなぁ。

なので今年、モチ病の発生を待って居た次第。

 

『宮崎のきのこ』によると、発生したての物が美味しい由。

早速、発生したばかりの新鮮そうな物に遭遇したので

食べてみる事にした。

tsutsujimochi2016 (5).JPG

tsutsujimochi2016 (6).JPG

tsutsujimochi2016 (8).JPG

 

一口齧ってみる。

tsutsujimochi2016 (7).JPG

成程、確かに少し酸味がある。

そしてほのかな、本当にほのかな甘みも薄っすらと感じられた。
その後に口に広がる青臭さも以前の物ほど不快では無かった。
どうやら本当に発生したての新鮮な物で無いとダメだったのだなぁ。
今迄は食べ頃を過ぎた物を食べてしまっていたのだなぁ。

 

と、こちらのモチ病。
パッと見は新鮮そう。

tsutsujimochi2016 (10).JPG

tsutsujimochi2016 (11).JPG

 

一口齧ってみる。

tsutsujimochi2016 (12).JPG

少しの酸味も、ほのかな甘みも感じられなかった。

ただの青臭さしか感じられなかった。

これは食べ頃を過ぎてしまっていた様だ。
どうやらモチ病の旬は思いの外短い様だ。

本当に発生したばかりの物で無いとダメなのだなぁ。

 

考えてみれば、昔々の子供達は

ほぼ毎日、周辺の野山を駆け回って遊んでいたのだ。

当然、環境の変化にはとても敏感だった筈だ。

モチ病の出来るツツジ等も当然把握して居た筈で

だから発生したてのモチ病にもしっかり遭遇出来たのだろう。

 

当時の子供達に取って野山はそれこそ「庭」だったのだ。
当方みたいに、たまに思い出した様に
フィールドに観察に出ているのとは全く状況が違うのだ。
そんな時代だったからこそ
モチ病菌は「子供のおやつ」たり得たのだろう。

 

前回、滝沢馬琴の『兎園小説』に触れた。
その中で、馬琴はモチ病の事を
「甚だ苦い物だ」と述べている、と言う。
と言う事は馬琴は食べ頃を過ぎたモチ病を
食べてしまったのだろうなぁ。
ひょっとしたら、モチ病の事を知らなかった馬琴は
それを食べていた子供達に悪戯されて
不味くなったモチ病を食べさせれらたのかも知れない。

 

ただまぁ、前回も書いたが
モチ病は目を見張る様な美味しい物では無い。
何時でも何処でも安価に
甘味や刺激の強いお菓子が手に入る現代に
敢えて食べる様な物でも無い。

 

そして、前回の記事を読んだ知人に教えて頂いたのだが
ツツジには元々微量ながら有毒性分が含まれているのだとか。
前回の記事の最後で「モチ病を食べ過ぎて死んだ女児」に触れたが
その女児も、「モチ病菌で死んだ」のでは無く
ツツジの有毒成分によって死亡したのかも知れない。
ただのツツジの葉だったら食べなかっただろうに
あたらモチ病になったばかりに
ほのかな甘みを求めて大量に食べてしまったのだろうなぁ。

その為に毒成分が致死量を超えてしまったか

もしくは体調を激変させるだけの量を摂取してしまったのだとしたら

あまりにも哀しい話だ。

 

取り敢えず、当方はもうモチ病菌を食べる事は無いだろう。
今後は「菌類的な春の風物詩」として愛でるだけにするよ。

その方がモチ病菌に取っても有難いだろうしね。

 

 

 


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| 植物寄生菌 | 00:05 | comments(0) | - | pookmark |
赤団子を求めて 番外篇
今年の春。
名古屋市東部の某公園の赤団子病は
矢張り甘露を分泌していた。
akadango2015 (3).JPG

こちらは子実体の赤い色素が混入して
赤い甘露になっている。
akadango2015 (5).JPG
akadango2015 (6).JPG
akadango2015 (2).JPG
光が透過して綺麗♪

此処の赤団子病は矢張り
殆どまだ子実体が形成されていない状態の時に
甘露を盛んに分泌している。
あまりに分泌しているので下に垂れている所が何か所もあった。
akadango2015 (1).JPG
akadango2015 (4).JPG
この中には分生子が含まれているのだろうなぁ。
子実体が殆ど形成されていないのに分生子を放出している、
と言うのも考えれば不思議な話だ。
わざわざそんな事をするからには
何らかのメリットがあるからなのだろうけどなぁ。
赤団子菌の考える事は良く判らないや。
それはともかく、今後も赤団子病の事は
追求して行きたいな、と。



所で、以前の記事で取り上げた「竹燕窝(もしくは「竹燕窩」)」。
その後も色々調べようとしたのだが
何の手掛かりも無いままに月日が過ぎてしまった。
とにかく情報が少な過ぎて八方塞がりの状態。
ならばまず、その実物を見てみたい。
発生現場を見るのはとても難しいが
中国国内では流通・市販されているのだ。
取り寄せが出来無いか中国物産店で聞いてみようかな。
幸い当方の住んでいる地域にはそう言う店が幾つもあった。

事前に問い合わせようとしたが、メール受け付けは無い様だ。
電話で尋ねるにしても「竹燕窝」を上手く説明できる自信は無い。
そもそも「竹燕窝」をどう発音するかすら判らない。
日本語読みの「チクエンカ」で通じるとも思えない。
なのでこんなチラシを作り
直接見て貰った上で聞く事にした。



取り敢えず店舗を訪ねる事に。
と、幾つもあった中国物産店が軒並み閉店しているでは無いか。
家の近くとは言え、あまり通らない道沿いだったので
閉店して居た事に気付かなかった。
いやぁ、参ったなぁ・・・・・・

仕方無いので繁華街の中国物産店をwebで検索。
割と大きな規模の店があったのでバイクで出向く。
するとそこも閉店したのか、何の痕跡も無かった。
店のサイトも作ってあって、今でも稼働しているのに店舗自体が無い。
閉店したのにサイトの契約はそのままだったのだ。
良く見ると更新は4年前で止まっていた。
4年前の9月の「上海蟹入荷!」の更新が最後で
丁度時期的に合致していた為に気付かなかったよ・・・・・・

2013年にOPENして大々的に情報発信して居た店も
今年の7月には閉店してしまったらしい。
その大々的な発信はそのままで
閉店した情報が一切無かったので判らなかった。
その場所に行ったら建物はがらんとしていて
その場所に何かの店を開こうと下見に来たと思しき若い男性と
不動産屋の担当者が中で何か話をしていた。

この数年で中国物産事情に何か大きな変化があったのだろうか。
そう言えば某ビル内の中国雑貨チェーンの「大中」も
いつの間にか無くなっていたしなぁ。
とにかくバイクで簡単に行ける範囲の中国物産店は
悉く無くなってしまった様だ。

仕方無いので再びwebで「竹燕窝」を色々と検索。
すると日本国内で中国物産の通販をしているサイトで
「竹燕窝」を扱っている所が一件だけhitした!
しかも「四川蜀南竹海特産」の
「特級14年純野生新鮮竹燕窝」との事。
これは買わねばっっ!!

早速注文。
一袋792円との事。
思ったより安い。
でも送料が幾ら掛かるのだろうか。
そこがちょっと怖いなぁ。
でも折角だから思い切って買おう。

翌日サイトから返信が。
恐る恐る請求金額を見ると「0円」となっている。
???と思って本文を良く見ると
「水が付いてるので 通関ができません どうぞご了承ください」
との事。
何じゃそりゃ。
なら何故そんなのをサイトに載せた!?
訳判らん。

恐らくこのサイトが取り扱おうとしていたのは
袋詰めの物だったのだろう。
ナマ物は通関手続きがややこしいからなぁ。
瓶詰缶詰なら通関可能だろうけど
それは守備範囲外の様子。

もう一度書く。
何故そんなのをサイトに載せた!?
期待が大きかっただけにがっかりだ。
結局、入手不可能と言う事か。
「竹燕窝」の正体も不明のままだなぁ・・・・・・



所で当方はキノコマニアであるが
同時に「キノコの書籍コレクター」でもある。
新刊は元より、古書でもキノコ関係の文献を見付けると
買わずに居れない。
勿論、ウン万ウン十万もする様な高額な物は無理だが
ついつい買ってしまうのだ。

その日もamazonでキノコの新刊書のチェックをしていた。
いや、便利な時代だ。
すると新たなキノコ図鑑の発刊情報がhit。
それがこちら。
miyazaki.jpg
地方のキノコ図鑑は特に当方の好物だ。
しかも宮崎の図鑑とは珍しい。
宮崎県には世界的な珍菌「キリノミタケ」がある。
表紙の左上の画像がそれだ。
どうやら「キリノミタケ」に関する
詳しい情報が載っているらしい。
なので当然購入する事に。
いや、本当に便利な時代だ。

数日後届けられたので早速拝見。
本の間に出版社のパンフレットが挟まれていて
手にした瞬間そのページが開かれた。
と、目に飛び込んで来た画像に息を飲んだ。



こ、これはどう見ても「竹燕窝」では無いかっっ!!!
何故こんな所に「竹燕窝」がっっっ!!??

半ば震えながら解説を読んだ所
「南九州では、方言で「キンチク」と呼ばれるホウライチクが
 各地に見られる。(中略)南アジアから中国南部にかけての
 熱帯地域が原産の竹である。」
「ホウライチクは夏に筍が出る。(中略)この筍の根元に
 かき氷のようなものが落ちていることがよくある。(中略)
 初めは白色だが黄色に変色し、最後は墨をこぼしたような
 ドロドロの真っ黒な物質になるのである。」
「筑波大学の出川洋介博士によると、この正体は
 子のう菌であるすす病の一種とのことである。
 (中略)ホウライチクの根元のすす病は、
 珊瑚のようにこんもりと大きくなる特徴から
 「サンゴすす病」と仮称で呼んでいる。
 サンゴすす病の発生の原因は、
 ホウライチクの筍に集まるタケノツノアブラムシの
 排泄する糖分である。」

との事。
外見的形態だけで無く、発生環境、発生要因からしても
「竹燕窝」と合致している。
「竹燕窝」は「サンゴすす病」、
もしくはその近縁種と考えて良いだろう。
因みに宮崎県ではこれを食べる文化は無いらしい。

取り敢えず、「竹燕窝」の正体はほぼ判った。
詳細は引き続き不明ではあるが
全くの正体不明!では無くなったのだ。
それだけでも当方に取っては大きな前進だ。
発生現場を探訪する事も
中国の四川省貴州省よりは宮崎県の方が可能性が高いしね。
いやぁ、宮崎県に「竹燕窝」があったなんてなぁ。
まぁ、それはそれとして
今後も「竹燕窝」の事は色々探って行きたい物だ。

それにしても求めている情報と言うのは
どんな所に転がっているか判らないもんだなぁ。
しかも、誰よりもその情報を欲していた当方の元に
送られて来たその本の、正にそのページが開かれる様に
パンフが挟まれていたなんてなぁ。
偶然なのだろうが、運命としか思えない。
世の中面白いなぁ。
だからこそ怖いなぁ・・・・・・


因みにこの『宮崎のきのこ』。
新聞の連載コラムを元した、というだけあって
キリノミタケや、この「サンゴすす病」以外の項も
ただの生態解説だけでなく
人間社会との関わり、宮崎県のきのこ文化などにも触れていて
「菌類民俗学」に傾倒している当方には
とても興味深い、実に有難い内容の「きのこ図鑑」。
他書には無いキノコも幾つも載っており
読み物としても楽しめるので
キノコ好きの皆様には是非お勧めの一冊です。
(amazonの当該ページ→こちら


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| 植物寄生菌 | 02:10 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
赤団子を求めて その6
今年も春を過ぎ、日差しが強い日も出てきた頃、
何時もの場所に行ってみた。
去年は赤団子病の幼菌を見て色々と学ぶ所があったので
今年は更に早くに現場に行ったみたのだ。

その様子がこちら。
akadango2014 (1).JPG
akadango2014 (7).JPG
甘露が湧き出て、今にも垂れそうになっている。
物によっては子実体自体は視認が難しいくらいに小さいのだが
甘露だけは盛んに生成されている様だ。

そんな状態の物が結構あちこちにある。
akadango2014 (2).JPG
akadango2014 (3).JPG
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akadango2014 (10).JPG
akadango2014 (11).JPG
予想以上に甘露を湧出している個体が多くてびっくり!

その内の一つを楊枝で突っついてみた。

硬めの蜂蜜、と言った感触。
で、甘露と言うくらいだから勿論甘い。

1989年に発表された津田盛也らの研究によると、
この甘露からは通常より小型の分生子(無性生殖による胞子)が
検出されている由。
それを蟻などに舐め取らせる事によって胞子を運んで貰っているのだろう。
当方は舐め取る事は出来るが
生憎と胞子を蒔き散らす事は出来無いから申し訳無いよなぁ。

4週間後にも様子を見に行った所、
子実体ははっきりそれと判るくらいには成長していた。

だが、甘露はもう確認出来無い。
オレンジのチョロチョロした物体は分生子塊。
甘露の中に含まれている分生子とはまた別の形態の分生子、との事。


赤団子病は発生初期には小型分生子を、
幼菌時代には別の大型分生子を、
そして成菌になると有精の胞子を生成する、と言う事の様だ。
単一の生殖方法しか持たない人間からすると
とても不思議な感じだなぁ。
植物寄生菌の場合、種類によっては
更に多くの別形態の胞子を生成する物もある、と言う。
ひょっとしたら人間等は
「え?一種類しか生殖方法が無いの?何で?」と
不安や憐憫の情を植物寄生菌から持たれているのかも知れないよなぁ。


所で6月上旬の事。
一宮市内へ用事で出掛けた際に道すがらの竹林を観察。
すると赤団子病を発見。
akadango2014 (12).JPG
名古屋市外の発生場所の確認はこれが初めてだ。
思わぬ収穫で嬉しい。

オレンジ色の物は分生子の塊。
だが、見たところ、柔らかそう。
akadango2014 (13).JPG
触ってみたら甘露と同様のゲル状だった。
ひょっとして?と思って舐めてみた所、やはり甘い。

こちらの分生子塊はかなり硬くなっていた。
akadango2014 (15).JPG
試しに舐めてみたが、甘くはなかった。

こちらの分生子塊は見るからに硬そう。
akadango2014 (14).JPG
実際に触ってみたら硬かった。
舐めても勿論甘くなかった。

この場所の赤団子病は名古屋市東部の現場の赤団子病と
甘露と分生子の発生具合・タイミングが少し違うようだ。
これは個体差・系統差なのだろうか。
色々と面白いなぁ。


最初に生成される小分生子は
同時に生成されている甘露に内包されるのだろう。
それは蟻などの昆虫に摂取される事によって
散布されている、と言う。
続けて大分生子が生成される頃には甘露の分泌は徐々に減少し
やがて大分生子だけのオレンジ色の塊となって
昆虫の手助けを借りる事無く散布される。
その後に生成される有精胞子は目に見える形は取らず
通常の胞子散布の形式となる。

と言う事は、甘露に含有されている小分生子は
昆虫等に摂取ー排泄される事によって
発芽が出来るように特化されている、と言う事なのかも知れない。
その後に生成・放出される大分生子・有精胞子は
その手順を踏まずとも発芽が出来る、と言う事なのだろう。

何故そんな戦略の違いが必要なのかは勿論当方には判らない。
ただ単純に胞子散布の機会を増やすだけなら
わざわざそんな手数を掛けなくても良い様な気もするのだけどなぁ。

しかし、それだけの複数の方法で多量の胞子をまき散らしながらも
赤団子病の発生確認が多くない、と言うのは
相当に効率が悪い事になるよなぁ。

以前、大学で植物学を学んでいた友人が言っていたのだが
マダケは古くに日本に渡来した由(日本原産説もあり)。
恐らく赤団子病菌もマダケと共に渡来したのだろう、と。
となると、マダケと赤団子病菌は
同時に生息範囲を広げている事になる。
だが、全国的に赤団子病の発症はあまり多くない様だ。
その為か、赤い塊と甘露、と言う
実に特徴的な生態があるにも関わらず
赤団子病の事は世間的にはあまり知られていない。
マダケの生息地にはあまねく赤団子病菌が居るであろう筈なのに
その姿を見る事が少ない、と言うのはどう言う事なのだろう。

ひょっとしたら赤団子病菌はマダケに取って
常在菌になっているのかも知れない。
人間の腸内に様々な菌が常駐していて
それで普通に暮らしている様に
マダケの中にも赤団子病菌が常駐し
それで普通に生きているかも知れないのだ。
たまたま人間の思い込みで「赤団子病」と病気扱いしているが
ひょっとしたら赤団子病菌は
マダケと共生関係にあるのかも知れないよなぁ。

赤団子病菌にとってマダケは当たり前のパートナーなので
わざわざ子実体を作らなくても良いから
赤団子病の発生が少ないのかもなぁ。
竹の寿命は数十年と長いので
竹内部に潜在さえしていれば、その間は安泰な訳だしなぁ。

一応念の為に、定期点検みたいに
子実体を発生させて胞子を蒔いてはいるが
そんなに必死にならなくても良いのかも知れない。
だから逆に言えば、赤団子病を常に発症しているマダケは
赤団子病菌が逃げ出して新たな生息地を探す事を
考えなければいけないくらいに不健康だ、
と言う事になるのかも知れない。
または、人間の感染症の幾つかがそうである様に
赤団子病菌の暴走を押さえられないくらいにマダケが弱っている、
と言う事なのかも知れない。

まぁ、当方が幾ら考えても所詮素人の机上の空論だ。
学問的に正確な話なのか、
そしてマダケ自身が赤団子病菌の事をどう思っているか、
どう受け止めているかが判る訳が無い。
当方としては、また今年も赤団子病の発生が確認出来て
甘露が舐める事ができたので、それで満足だ。
また来年も甘露を舐めたい物だなぁ。

胞子散布の手伝いが出来無いのは、ちょっと申し訳無いのだけれど。



※前篇・続篇も併せてお読み頂けましたら幸いです
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| 植物寄生菌 | 00:09 | comments(4) | trackbacks(0) | pookmark |
天狗の巣
既に何回も記事にしているが、当方は竹の寄生病である
「マダケの赤団子病」を追い求めている(→こちら)。
なので、外出時は竹が生えている場所を
つい探してしまう。

で、日本には結構竹藪が多い。
車や電車から風景を眺めていると
郊外の造成されていない場所には
竹林が残されている事が多いし
市街地でも、ちょっとしたスペースに
竹が生えていたり、植わっている事が多い。
規模の大小はある物の
とにかくあちこちに竹が生えている。
そして、良く目立つのが竹の天狗巣病だ。

竹の天狗巣病は
Aciculosporium take と言う菌によって
竹の葉の正常な発育が阻害され
異常に細かな枝分かれを密集させられる病気だ。
以下、病状の進行具合を画像と共に解説。

初期段階では一部が細長く伸長。
細かく分岐をしそこに小さな葉が生える。
tengusu1-tsuru (1).JPG
tengusu2-houki (1).JPG
tengusu1-tsuru (2).JPG
この状態を「つる状化」と言う由。
周りの大きく見える葉が通常の大きさ。
つる状化部分の葉が如何に小さいか判るだろう。


やがて、つる状の部分が増えて混み合って来る。
tengusu1-tsuru (3).JPG
分岐が増え、密集度合いがかなり増している。


更に分岐を繰り返し、密集度合いが増すと次の段階に。
tengusu2-houki (2).JPG
tengusu2-houki (3).JPG
tengusu2-houki (4).JPG
これを「ほうき状化」と言う由。
この状態を鳥の巣ならぬ「天狗の巣」と見立てて
命名されているらしい。
因みに英名は「witch's broom (魔女のほうき)」との事。
欧米には天狗は居ないからなぁ。

こちらの画像では、ほうき状化した部分が
かなり増えている。
tengusu2-houki (5).JPG


そして、次の段階へ。
ほうき状化部分がどんどん増え、大きな塊になる。
これを「房状化」と言う由。
tengusu3-fusa (1).JPG
tengusu3-fusa (2).JPG
tengusu3-fusa (3).JPG
こうなると遠目にもそれと判る様になる。
房状化した部分は重量も増すので
その重みで竹全体がたわんでしまっている。

ひとつの竹林でも罹患状況にはかなり個体差がある。
その竹の発生時期による影響の差もあるのだろう。
こちらの画像では罹患状況の酷い竹と
そうでない竹との差が激しい。
tengusu3-fusa (5).JPG
tengusu3-fusa (4).JPG
こうなると、次の段階では落葉・落枝が始まり
最終的には全ての枝葉を落として
樹木の幹にあたる「稈(かん)」だけを残して立ち枯れてしまう。

病状の進行速度の程は判らないが
つる状化が始まってから枯死に至るまでは
10年以上、おそらく数十年は掛かるのでは無いかと想像している。
竹の一生は50年とも100年とも言う。
それが天狗巣病によって
どの程度の影響を受けるのかは判らないが
病状も竹の寿命に合わせて
ゆっくりと、しかし確実に進行して行くのだろう。

種類や時期にもよるが、
健康な竹であれば葉の大きさが揃っているので
竹の1本全体が一定のリズムで構成され
葉の緑で輝いても見えるのだが
天狗巣病に冒されるとリズムがかき乱され
その部分だけ色が沈んで見える。
勿論、軽度の発症で収まっている場合は
ぱっと見では判らないが
重症になれば嫌でも目立って来る。

この様な「天狗巣病の見え方」を頭に入れておくと
車や電車で移動しながらでも
「あの竹藪は天狗巣病に結構やられているな」
「あそこはやられ始めてるみたいだな」
と、観察する事が出来る。
で、そうやって観察した所、
天狗巣病にやられてる竹藪が
如何に多いか、と言う事に気付いた次第。

ただ、この竹の天狗巣病。
各種の竹に発生するが
病状が重く進行するのはマダケだけらしい。
モウソウチクにも罹患例はあるが
見付かると学会報告されるレベルで少ない由。
実際、当方が撮影した罹患竹もマダケばかりだ。
何でも、天狗巣病に全く罹患していない
完全に健康なマダケの竹林は全体の1割も無いのだとか。

因みに、竹の天狗巣病には治療法は無い。
見付けたら伐って焼くしか無いのだ。
だが近年、竹林は放置され、手入れもされていないので
天狗巣病が発生し放題だと言う。
これは全国的な大きな環境問題の一つの由。


で、この天狗巣病。
梅雨時に雨を受けて先端から胞子を放出する、との事。
その様子を見てみたい、と思っていたのだが
雨の中、天狗巣病の竹を見る機会が中々無かった。
そんな竹林がすぐ近くにあれば良いのだが
生憎と徒歩圏内には無い。
雨が降っている中、わざわざ車やバイクで
罹患している遠くの竹林まで行く、と言うのもねぇ。

と、そんな中。
つい最近、雨の日に用事で出掛けた先で
天狗巣病のある竹林に遭遇。
早速観察する事に。

それがこちら。
tengusu2-houki (6).JPG
この↑画像の一部拡大↓。


tengusu2-houki (7).JPG
この↑画像の一部拡大↓。


tengusu2-houki (8).JPG
この↑画像の一部拡大↓。


元々天狗巣病の罹患部の先端には
白っぽく見える部分があるのだが
それが膨らんでいて
はっきりくっきりと白く見える。
なるほど、こんな風になるのかぁ。

更に先端から胞子で白濁した水滴が垂れていたのだが
それを上手く撮影する事が出来無かったのは残念だった。

この様にして昆虫などの小動物に付着させ
胞子を伝播させているらしい。
その結果、上掲の画像の状況になるのだなぁ。

いやぁ、中々貴重な物を見れた。
たまたまその方向に用事があって良かったよ。
今後は竹林のある場所優先で用事が出来無いかなぁw

それはともかく、これからも竹林の観察は続ける予定。



所で、7月2日から大阪梅田・阪神百貨店で開催される
『ドキドキ!きのこフェスティバル』に
今年も参加致します。

阪神百貨店の公式サイト→こちら

張子の起き上がり小法師のキノコを中心に、
今回は張子以外の物も色々持って行こうと思っています。
よろしければどうぞお立ち寄り下さいませ。

m( _ _ )m

 
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| 植物寄生菌 | 00:29 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
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赤衣病関連記事


私事だが昨年夏に転居をした。
それまでマンション住まいだったのだが
築40年の賃貸とは言え、一軒家に移ったのだ。
そしてそこに庭とも言えない様な、ちょっとしたスペースがあり
洗濯物干し場に使っている。

4月の雨上がりの晴れの日。
洗濯物を干していて
ふと植え込みのカイヅカイブキを見たら、妙な物が目に入った。
あれ?これは?
akaboshi-1.JPG
akaboshi-3.JPG
葉に橙色のぷよぷよした物が絡まっている。
一見アカキクラゲの仲間か何かに見えるが
これは実は「ナシ(リンゴ)の赤星病の冬胞子」と言う物だ。

辺りを良く見ると、冬胞子の小さな塊が幾つもあった。
akaboshi-4.JPG
akaboshi-7.JPG
 
赤星病は梅雨〜夏頃にナシ・リンゴ類の葉に
赤く良く目立つボツボツを発生させる寄生病で
ナシ・リンゴ果樹の重要な病害とされている。
その為、栽培農家の多い地域では
その防御に大きな力が注がれている。
nasi-akahosiha2.jpg
nasi-akahositawasi.jpg
(上掲の2画像は「あいち病害虫情報」サイトより引用→こちら


以前、こぶ病の記事(→こちら)で触れたが
多くの植物寄生病は春〜夏と秋〜冬とで、
全く別の種類の植物の間で胞子を行き来させる
「異種寄生性」と言う独特の生活環を持っている。
各々を「夏胞子」「冬胞子」と呼び
それぞれ全く違う形態をしている事が多い。
赤星病は夏胞子が色と形態的に目立ち
寄主のナシ・リンゴが重要作物でもある為に
「ナシ(リンゴ)の赤星病」が種名となっている。

そして、赤星病の生活史で冬の時期の過ごし方が
先の画像の、カイヅカイブキの橙色のブヨブヨなのだ。
余程大きな個体でないと
赤星病に比べて目立ちにくい為に
見落とされている事も多い、と思われる。

実際、乾燥時はこれ ↓ が
akaboshi-5.JPG

これ ↓ の様に
akaboshi-5-d1.JPG
akaboshi-5-d2.JPG

これ ↓ が
akaboshi-6.JPG

これ ↓ の様に
akaboshi-6-d1.JPG
akaboshi-6-d2.JPG
とても小さくなってしまうので
雨上がりに水分を含んで十分に膨らんだ時でないと
まったく目立たない。

小さな個体だと、乾燥時は
葉の枯死部分と殆ど見分けが付かない。
こちらが乾燥した冬胞子のある枝先。
akaboshi-9.JPG

こちらは何も無い枝先。
akaboshi-11.JPG
予め冬胞子があった事を知らなければ見分けが付かない。
だから当方もこの雨上がりの日まで全く気付かなかったのだ。

で、うちにこの冬胞子がある、と言う事は
何処か近くに夏胞子を発生させている樹木がある筈だ。
ナシ・リンゴ類とカイヅカイブキが隣接していて
両者の間を胞子が行ったり来たり
出来るからこそ赤星病が発生しているのだ。

ただ、この「隣接」と言うのが癖者で
別にすぐ近くに隣合っていなくても良いのだ。
一説には、そのカイヅカイブキを中心に
半径1kmの中にナシ・リンゴがあれば十分、との事。
それだけの距離があっても両者の間を
胞子が行ったり来たりが出来る、と言うのだ。
そのため、ナシ・リンゴを栽培している地方では
地域を挙げてカイヅカイブキを植えない様にしており、
あった場合は切除をし、徹底的に排除して
赤星病の発生を押さえているのだと言う。
 
うちのこのカイヅカイブキを中心に
半径1kmと言うと結構な広さだ。
その中にどれだけの家があって
どれだけの樹木が生えている、と言うのか。
その中のどれがナシ属の樹木なのだろうか。
そして、それをどうやって探せば良いのだろう。

一軒一軒回って「お宅に赤星病ありませんか?」
て聞いて回る、てのもなぁ。
赤星病の無い家で聞いてたら、それこそ不審者だよ。
万一その家にあっても
その人が赤星病の事を知らなかったらそれまでだし
知っていたとしてもやはり不審者だよなぁ。
そもそも、所謂「近所付き合い」と言う物を
全くと言って良い程にしていないのだ。
ご近所との距離感があり過ぎるよ。
何時何処で発生するかどうかも判らない植物寄生病の為に
半径1kmの住民と仲良くする、てのも変な話だしなぁ・・・・・・

今後、外を歩く際には
半径1kmの各家の庭木を注視しないとならない。
あまりジロジロ睨んで警察に通報されない様にしないとなぁ。
因みに、今年はそれを捜し当てる事は出来無かったよ。
また来年に期待しよう。

逆に、「お宅に冬胞子ありますか?]と
尋ねてくる人が居たら喜んで招き入れるんだけどなぁ。
その人とは美味い酒が飲めそうだよ(^−^)


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| 植物寄生菌 | 00:10 | comments(4) | trackbacks(0) | pookmark |
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