こちらはキイボカサタケ。
夏〜秋に林内地上に発生する。
林の中で鮮やかな黄色はとても良く目立つ。
名古屋東部ではこのキノコの発生がとても多い。
名前の由来はその見た目から。
傘の先端が過剰に尖るのが特徴だ。
そのイボには個体差があり、時としてイボが無かったり
殆ど目立たない事もある。
その場合、識別は難しくなるが
全体的な特徴でそれと判断出来る。
こちらはイボが二つに見える個体。
だが実際には傘の真ん中で丁度二つに割れてしまった状態の物。
イボが1か0はあるが、2以上と言うのは無い様子。
こちらは妙に足が太いタイプ。
このタイプは珍しいのか、あまり見ない。
勿論、DNA的にどうなのかは当方には知る由も無い。
このキイボカサタケには色違いの仲間が存在する。
それがこちら、シロイボカサタケ。
そしてアカイボカサタケ。
この3種は発生環境も共通している様で
同じ地点に混生して居る事もある。
こちらは滋賀県栗東市内にて。
某森林公園にキイボと
すぐ近くアカイボがあった。
こちらは名古屋市内にて。
某森林公園にもキイボと
アカイボがあった。
こちらは岐阜県飛騨市内にて。
キイボと
アカイボがあった。
こちらも飛騨市内の別の場所にて。
アカイボと
シロイボがあった。
こちらも飛騨市内、別の日に。
キイボと
シロイボが
そして離れた場所にアカイボがあった。
webで検索すると3色が同じ場所で発生している事例も見られ
実際に家の光協会刊『カラー版きのこ図鑑』では
3種が混生している状態の画像が掲載されている。
だが当方は今の所、一枚の画像の収まる範囲で
混生している場面には遭遇した事が無い。
何時かは3色揃い踏みの場面を撮影してみたい物だ。
所で先に「この3種は発生環境も共通している様で」と書いた。
図鑑でもそう書かれているのだが、本当にそうなのだろうか。
それは最初に書いたが、当方が見た限り名古屋東部では
キイボカサタケだけの発生がとても多いからだ。
今迄に当方が名古屋東部で撮影した
イボカサタケの色別の画像の数で比較すると
「キ:シロ:アカ」の比率は「12:1:2」となった。
勿論、当方が名古屋東部に発生したイボカサタケ全てに
遭遇出来た訳では無いし、年によっての変異はあるだろうが
凡その傾向が表れている、と考えて良いのではないだろうか。
同様に、飛騨市内某所周辺では
「キ:シロ:アカ」の比率は「1:1:2」と、
栗東市内某所では
「キ:シロ:アカ」の比率は「1:2:2」となった。
当方の行動範囲で当方が撮影出来た内容で、
と言うとても狭い集計ではあるが
地域毎の各種の発生数に違いがある様だ。
イボカサ3種の発生環境にはかなり多くの共通点はあるが
矢張り微妙に発生用件の差異があるのでは無かろうか。
名古屋東部の環境は
シロイボカサタケやアカイボカサタケに比べると
キイボカサタケの発生にとても優位に働いている、
と言えるのでは無いだろうか。
当方が観察した限りではそう思えてならない。
所で上記で「イボカサ3種」と書いた。
実際、図鑑には3種が掲載されているが多く、
3種全てが掲載されていない場合でも
「色違いで3種ある」旨の記述がされている事が多いのだが
フィールドで見ていると中間的な色合いの物も少なくない。
例えばこちら。
古くなってくすんだキイボカサタケかも知れないが
肌色にも見えるよなぁ。
また、チャイボカサタケと言うのもあるとの事で
それが色褪せた物とも見えてしまうよなぁ。
上掲の画像でも色褪せた為に
種類が判然としない物も少なくない。
また、露出や光線の加減でどっちとも言えない感じに
写ってしまっている物もある。
当方がフィールドで観察した時点では見た目の色合いだけで
キイボカサタケ、シロイボカサタケ、アカイボカサタケと
各々判断しているので、その点はご容赦頂きたい。
こちらはアカイボカサタケにしか見えないが
傘の質感が違う。
上掲のアカイボカサ画像では表面は繊維状の物で覆われているが
これに比べたらかなりスベスベな質感だ。
色々調べた所、oso氏のサイトで
ダイダイイボカサタケと言うのがある事を知った。
曰く、「傘表面が滑らかで、微毛状になるアカイボとは
決定的に異なって」いるとの事。
また「柄はねじれることが多」いとの事。
となると、当方が今迄「赤っぽいからアカイボカサタケだ」と
無条件に信じていた物がそうでは無かった、
と言う可能性はかなりありそうだ。
実際、これ↓
なんかは微毛状では無いのでアカイボカサタケでは無く
ダイダイイボカサタケなのかも知れない。
ダイダイと言うにはかなり赤い様に思うが
色だけでは判断出来無い、と言う事の様子。
まぁ、別のアカイボカサタケの近くに生えていたので
これもアカイボカサタケと推察したのだが
イボも目立たないし、傘のフリンジは妙に目立つので
そもそもが別種なのかも知れないけれど。
色々な図鑑に掲載されているアカイボカサタケも
良く見ると傘表面が微毛状でない物が散見される。
今後、表記や掲載画像が変わって行くのもあるのだろうなぁ。
尚、きのこびとさんのサイト、及びosoさんのサイトによると
シロイボカサタケはキイボカサタケとはDNA的にかなり近く
キイボカサタケの変種、また同一種としている研究者も居るとの事だが
近年、ちゃんと別種として地位が確立されたらしい。
そしてアカイボカサタケはDNA的にはやや離れた位置に居るらしい。
その距離の差がアカイボカサタケの傘表面の毛に表れているのではと。
となると、毛の無いダイダイイボカサタケの方が
DNA的にはキイボカサタケに近い、と言う事なのかなぁ。
まぁ、外見だけでDNAが決まる訳では無いのだけど。
また更に橋本岳文堂刊『北陸のきのこ図鑑』によると
ササクレキイボカサタケ、シロイボカサモドキ、
トキイロイボカサタケと言うのもある由。
当方の揚げた画像のキノコもそのどれかなのかもなぁ。
これ↓なんか柄の感じからすると
ササクレキイボカサタケだったりするかも知れないよなぁ。
また、キイボカサタケと思われる物も
傘の表面がスベスベと
マットな感じと
質感の違う物が混じっている。
アカイボカサタケとダイダイイボカサタケの様に
実は別種なのかも知れないなぁ。
勿論、顕微鏡を持たない当方には
判断のしようも無いのだけれど。
所で、イボカサタケに近い種類の更に色違いで
ソライロタケと言うのがある。
名前の通り、空色のキノコで
キノコとしては珍しい色合いがマニアには人気のキノコだ。
以前、ガチャガチャのキノコフィギュアにも採用されていたので
それで知ったと言う人も少なくないだろう。
他のイボカサタケの仲間に比べると発生は少ない様で
当方は今の所一度遭遇しただけだ。
某所でこれを目にした時は思わず「おお〜〜〜っっ!!」と
声を上げてしまったよ。
ただ、空色が綺麗なのは若い内だけ。
古くなったり傷付いたりすると黄褐色となり
空色の鮮やかさを失って古びた感じが
ちょっと切なかったりする。
当方が撮影した範囲ではキ、シロ、アカが
広葉樹林内地上から発生しているのに対して
このソライロタケは竹藪の斜面で発生していた点からすると
他のイボカサタケ達とは発生用件はかなり違っているのかも知れない。
ソライロタケの傘は全体が微毛で覆われている。
となるとスベスベの別種のソライロタケもあるのかも知れないよなぁ。
あるのだとしたら何時かは探し出してみたい物だ。
さて、このイボカサタケ達。
ご覧の様に華奢で可憐な姿だが、実は毒キノコだ。
シロイボカサタケからはムスカリン類が検出されているとの事。
となると、幻覚作用がある事になるのだろうなぁ。
キイボカサタケ、アカイボカサタケからは
毒成分不明だが胃腸系の中毒症状を起こした事例が報告されている由。
チャイボカサタケ、ソライロタケに
毒成分があるかどうかの詳細は不明だが
近い種類なので同様の成分が含まれている可能性は極めて高いだろう。
因みに、2007年に日本で死亡事故が発生している。
▼中毒:毒キノコを食べ、東海の女性死亡 /愛知(7月24日・毎日新聞)
県知多保健所に23日入った連絡によると、
東海市内の女性(86)が今月22日、
大府市内の公園で採った毒キノコを食べ、
食中毒による脱水症で死亡した。
県によると、県内で毒キノコによる死者が出たのは2年ぶり。
女性は19日午前、同市内の知北平和公園を散歩中に、
毒性のあるキイボカサタケを採取。
同日夕方、ラーメンに入れて食べたが、
20日朝になり、吐き気や下痢を訴えた。
東海市内の病院で「食中毒の疑いがある」と診断され、
点滴を受けたうえで、自宅で静養していたが、
22日午前10時ごろ、寝室で死亡しているのを家族が見つけた。
毒キノコを食べたのは女性だけだった。
家族の話では、女性は今年に入って、2-3回、
同公園内で採ったキノコを食べていたという。(後略)
知多半島でも名古屋東部と同様に
キイボカサタケの発生が多いのだろうかなぁ。
因みにこの知北平和公園と言う所には実は斎場が隣接している。
その斎場で当方の親族を荼毘に付した事もある。
そんな場所で良く知らないキノコを採取するのかー、と思ったのだが
その公園自体は割と広く、桜の名所でもあるので
斎場から離れた位置に生えていたから気にしなかったのかなぁ。
とは言え、キノコマニア以外には知られたキノコでは無いので
その女性がキイボカサタケの事を知っていたとは思えない。
それまでの2〜3回に何を採取して食べていたのかは判らないが
たまたま毒でないキノコに当たっていた為に油断したのだろうか。
色が綺麗だったので食べてみたくなったのだろうかなぁ。
華奢だから毒キノコに見えなかったのか、
または華奢だから毒も大した事は無い、と思ったのか。
何にしてもキイボカサタケをラーメンの具にする、と言うのも
中々無い発想ではあるよなぁ。
所で症状を見るに、直接キイボカサタケの毒で死亡したと言うより
胃腸系の中毒症状を起こし、その結果衰弱死した物と推察出来る。
86歳と言う年齢的な事情もあったのだろう。
なのでキイボカサタケは「致死毒のキノコ」とは言えないと思うのだが
「致死例のある毒キノコ」と言う事にはなるのだろうなぁ。
何にせよ、注意はしなければならない事には変わりない。
それにしてもキイボカサタケを煮たら
色がどう変化するか、は気になる所。
鮮やかな黄色のタモギタケ、
鮮やかな朱色のトキイロヒラタケなど、
(めざせ!きのこの伝道師さんのサイトより引用)
色鮮やかなキノコでも火を通すと色が抜けてしまう物は少なくない。
今度イボカサタケ達に遭遇した際には収穫して煮てみたい。
キ、シロ、アカがどのような変化をするのか見てみたいなぁ。
可能ならばソライロタケもどうなるのか試してみたい物だよ。
勿論食べはしないけどね。