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手抜きの逞しさ
画像はヒラフスベ。
2008/10/25、名古屋市内にて撮影。

広葉樹から、この様にモコモコとした
餅の様な不定形な膨みで発生するのが特徴のキノコだ。


このヒラフスベは樹種不明の立ち木の
約2mの高さに発生していた。
どの方向から撮っても
必ず逆光になってしまう位置だったので
どうにも撮影がし難く、
更に足場の不安定な場所で
少し背伸びをしないとフレームに収まらない高さの為、
どうしても画像がピンボケになり勝ちだった。

このキノコに出逢ったのは10/25だったのだが
数日前にこの場所に来た時には全然気が付かなかった。
キノコ探索ではどうしても地面を中心に見てしまうので
この様な高さに発生していると中々気付き難い物だ。
この個体では既に褐色を帯びているが
新鮮な状態ならこの様に真っ白だった筈だ。


こちらは2005/08/09、東京の井の頭公園にて撮影。
この個体は、柵の向こう側の桜の木から発生していたので
これ以上近付けなかったのが残念だった。

色付き始めているとは言え、まだ弾力はあった。



この様に、指で押すと凹んでしまった。

一部、もぎ取ってみた。

まるで和菓子の様だ。


中は栗餡の様で、ますますもって和菓子に見えてしまうw

表面には管孔が見える。

ヒラフスベはサルノコシカケの仲間なのだが
実は管孔では滅多に胞子を形成しないらしい。
では、どうやって繁殖をしているか、と言えば
子実体を形成している菌糸が成熟すると、
分裂して「厚膜胞子」と言う胞子に変化し、
それを飛散する事によって繁殖しているのだ、と言う。

上の画像で栗餡の様になっているのが
菌糸が既に胞子になり始めている状態なのだ。
図鑑によると、管孔を形成する事自体が少ない事の由。
画像の個体は、ほぼ全面に管孔を形成しているので
珍しい方の個体なのかも知れない。


こちらは4日後、10/29の様子。
全体に色が濃くなっている。


近寄って見てみると、表面に分解水が滲み出ていた。


黒い程に濃い赤が毒々しい。
まるで小さな甲虫が群がっている様にも見える。

「分解水」とは、菌が成長し養分を吸収する際に
加水分解作用により生成、排出される水分の事。
一部のキノコは、子実体表面に
分解水を多く分泌する事が知られている。
キノコの種類によって分解水の色が違っており
透明な物(→こちら)、淡い色の物(→こちら)、
そして毒々しい色の物まである(→こちら)。
だが、ヒラフスベがこの様に
分解水を分泌する事はどの資料にも無かったので
これはちょっと意外だった。
それだけこの個体は成長が旺盛、と言う事なのかも知れない。

試しに分解水をティッシュに吸い取らせてみた。



そうしたら褐色だった。
思ったより赤くなかった……

ヒラフスベが、幼菌の時は白いのだが
成熟するに連れ褐色がかって来る、と言うのは
この分解水によって
着色される、と言う事なのかも知れないなぁ。
ただ、井の頭公園での個体の表面には
透明な水滴が付着していたので
分解水は成長段階によっても
色が変わる物なのかも知れない。


こちらはその3日後、11/01の様子。
分解水はすっかり消えていた。


表皮もすっかり硬くなり、一部ひび割れていた。


表面の管孔もくっきりと見える。
だが、其処で胞子が形成されているのかどうかは判らない。


こちらは9日後、11/10の様子。


ひび割れが大きくなり、一部穴が開いていた。


こちらは3週間後、12/02の様子



もう完全に老熟状態。
穴も大きくなり、中身の胞子も減っていた。

一部、表皮を剥ぎ取ってみた。



中身は成熟した胞子がぎっしり。

一部を手に乗せて潰してみる。



少し手応えがあったが、さらさらの粉末になった。

Webで検索すると、
表皮が消失して胞子の塊だけの
状態になっている個体の画像もあったが(→こちらの3枚目画像)
この個体の表皮はかなり丈夫な様だ。

この様な生態から、ヒラフスベは当初、
ホコリタケの一種と考えられていたらしい。
確かに無理も無いだろう。
ホコリタケの仲間で、良く似た名前のオニフスベも、
白いもこもことした色・形と言い(→こちら)、
成熟すると胞子の塊になってしまう点と言い(→以前の日記、こちら
生態的にも似ているものなぁ。

通常のサルノコシカケの仲間では
管孔で担子胞子と言う、有性生殖の胞子を形成するのだが
このヒラフスベは、先に書いた様に
菌糸が変化した厚膜胞子で繁殖する。
つまり、有性生殖を放棄し
無性生殖での繁殖に特化しているのだ。

ヒラフスベはアイカワタケマスタケに極近い種との事。
アイカワタケ、マスタケは通常、
管孔で有性生殖の担子胞子を形成しているのだが
時としてヒラフスベと同じく、
菌糸が変化した厚膜胞子を形成する事があるらしい。
アイカワタケ、マスタケの中の
厚膜胞子を形成する性質が突出して進化したのが
このヒラフスベなのかも知れないなぁ。
 因みに、この3種の関係は複雑との事。
 興味ある方は、こちらを参照して下さい(→こちらの論文要旨の2段目)。

多くの生物が有性生殖をしているのは
異なる性の遺伝情報を掛け合わせる事によって
多彩な遺伝子の組み合わせを生み出し
環境の変化などに対応して
種としての生存の可能性を図る為なのだが
無性生殖はクローン作成になる為に
遺伝子の多様性は望めない。

アイカワタケ、マスタケでは
有性生殖をしていたのに
ヒラフスベではその能力を退化させてしまった。
言わば「手抜きの繁殖方法」と言える。
クローンだけで繁殖する、と言うのは
つまり、ヒラフスベはクローンによる繁殖だけで
様々な環境の変化に対応出来るだけの逞しさを
身に着けた、と言う事なのだろう。
厚膜胞子と言う、
名の通り、厚い膜に包まれた胞子を形成する、と言うのも
丈夫な胞子で環境の変化への対応している、
と言う事なのかも知れない。

ただ、ごく稀にヒラフスベも
有性生殖する為に、
普通のキノコの形態になる事もある由。
こうなると、アイカワタケ、マスタケと
外見的な区別は殆ど出来無い(→こちら)。
クローンで繁殖出来無い、何かの理由が
この個体にはあったのだろうか。
または、何かの理由で
たまたま先祖返りをしてしまったのだろうか。
それとも、刺激を求めてのちょっとした遊びなのか。
当方には窺い知れない、
何かの理由はあるのだろうけどなぁ……



所で、このヒラフスベ。
とても食べられそうに無い様に見える。
実際、どの掲載図鑑にも「食不適」と書かれている。
だが、実はとても美味なキノコなのらしい。
特に天ぷらとホイル焼きが絶品、の由(→こちら)。
ただ、それは恐らく
菌糸が胞子に変化する前の、極若い内の間だけだろう。
この個体では、当方が出逢った時点で
既に胞子になってしまっていたので
もう遅かったと思われる。
次回は是非幼菌に出逢って、試食してみたい物だ。
アイカワタケ、マスタケも極若い内は食用、との事なので
同じく美味しいのかも知れないなぁ。



※マスタケに関しては新たな情報を元に
  別の記事を書きましたので
  よろしければそちらもご覧下さい(→
こちら)。


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| 多孔菌科 | 00:59 | comments(6) | trackbacks(0) | pookmark |
コメント
分解水って言うんですね!(・ ・)
現在自宅でしいたけを育てているんですが、
少し褐色の水玉が染み出ているのが不思議でした。

野外でもキノコから水滴が出てるのを見たことがあり、
毒だったら怖いなーとか思ってました。笑
| liquidfish | 2009/01/31 3:11 PM |

>>liquidfishさん
当方は菌学をきちんと習った訳ではありませんので
用語の使用法が本当に合っているのかどうか、と聞かれると
ちょっと不安になりますが
多分「分解水」で合っているのでは、とw
「代謝水」とも言われているみたいですねー

エリンギの栽培では、「吐水症状」と呼んで
新陳代謝異常の良くない状態とされているみたいです。

毒では無いと思いますが
この時は嘗めてみる勇気はありませんでした(^ω^;)
| まねき屋 | 2009/01/31 10:03 PM |
どうも〜、お久しぶりです。
ボクも分解水にひっかかりましたw
ボクも昨秋にサルノコシカケの仲間のきのこが
したたるような水滴がいっぱい付着した固体を発見し
なんだろうとずっと考えていました。
しかしあの毒々しい分解水のやつは
触りたいとも思いませんね〜。

天ぷらを食べた人もいるのですか?
すごいですね。
なんか影響されそうですw
| gikusa | 2009/02/02 4:02 PM |

>>gikusaさん
お久し振りです♪

ヒラフスベの場合、通常は水滴として出ないで
何となーく表面にじわじわ滲み出て
子実体全体を着色させているのでしょうねー
その意味では、こう言う風に水滴になるのは
代謝異常なのかも知れませんね。

しかし世の中にはチャレンジャーが居る物ですねw
当方はそこまでの勇気はありません……
| まねき屋 | 2009/02/03 10:12 AM |
 茸に付いている謎の水滴の正体が、やっと判りました(^_^)。
 近くの丘で観察している範囲では、ヒラフスベは、もっともよく分解水が出ている茸のようです。こちらのHPの写真でも、分解水が写っています。
| 古本まゆ | 2009/02/07 6:55 PM |

>>古本まゆさん
貴サイトのヒラフスベ、拝見致しました。
水滴だらけでしたねw

矢張り、成長段階で分解水の色は変わるのですね。
どうも有難う御座居ました(^−^)
| まねき屋 | 2009/02/09 4:37 PM |
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