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マスタケはややこしい

以前、ヒラフスベの事について記事を書いた(→こちら)。
その中で、アイカワタケ、ヒラフスベ、マスタケの3種の関係は複雑だ、として
論文要旨の紹介をした(→こちらの論文要旨の2段目)。
(以下、その内容の引用 改行:まねき屋)。 

日本産のアイカワタケ属3分類群
(アイカワタケ‘Laetiporus sulphureus var. sulphureus’auct. jap.,
マスタケ L. sulphureus var. miniatus,
ヒラフスベ L. versisporus) の関係を
分子系統解析および交配試験によって明らかにした.
核リボソームDNAのITS領域,elongation factor 1αおよび
βtubulin領域の系統解析の結果,
日本産のアイカワタケ属菌は,管孔が黄色いタイプのマスタケ,
管孔が白いタイプのマスタケ,
アイカワタケ/ヒラフスベ Iグループ,IIグループの4つに分かれた.
ヒラフスベはアイカワタケと同一のクレードに属することから,
アイカワタケのアナモルフであることが明らかになった.
アイカワタケ/ヒラフスベの菌株の中には,
1菌株内にDNA多型がみられるものがあった.
また,3領域で,グループI および IIに属する菌株の
組み合わせが異なった.
アイカワタケ/ヒラフスベグループは二つの個体群が交雑して
形成されつつある個体群である可能性が示された.
単胞子分離菌株を用いた交配試験では,
管孔が黄色いタイプのマスタケ,管孔が白いタイプのマスタケ,
アイカワタケ/ヒラフスベの3グループに分かれた.
以上の結果より,日本産のアイカワタケ属菌は
従来の解釈とは異なる3分類群に分けられることが明らかになった.

論文の文体に馴染みが無く、専門用語を良く知らず
加えて読解力に欠けていた為に
判った様な判らない様な、やっぱり良く判らないなぁ……と思っていた。

マスタケとアイカワタケは外見上とても良く似ている。
当方はアイカワタケにはまだ出逢った事は無いのだが
マスタケは何回か画像に収めている。
(この画像のキノコ葉シロカイメンタケだと思われます。2012.10.27追記)
こちらは2006/09/09、岐阜県内にて撮影した物。


長辺が30cm近い、大きな個体だった。

見上げると、雄大に感じた。

所で、マスタケと、幼菌のシロカイメンタケは
外見上とても良く似ている、と言う(→こちら)。
外見で見分けるポイントとしては
シロカイメンタケはあまり重生しない、環紋が無い点、との事。
上のマスタケ画像は、その点シロカイメンタケとやや判断が難しいが
多分マスタケで合っていると思う。
(この画像のキノコ葉シロカイメンタケだと思われます。2012.10.27追記)


こちらの画像は典型的なマスタケだと思う。

2004/09/19、岐阜県内にて撮影。


『日本のきのこ』では、 マスタケは針葉樹生、
アイカワタケは広葉樹生、ヒラフスベは材上生と一応書かれているが、
実際にはマスタケの項に

アイカワタケとは傘の色の違いと針葉樹生の点で区別されるが
中間型とみなされる物もある

と、悩まされてしまう事が書かれている。

『原色日本新菌類図鑑』では、

マスタケはアイカワタケの変種とした

としながらも、「再検討が必要である」とも記述されている。
また、世界各地、日本各地からの採取例を上げ
両種の分類について問題提起をしている。

その後に刊行された『北陸のきのこ』ではマスタケの項で

以前は広葉樹に発生し
黄色子実体のものをアイカワタケ、
針葉樹に発生し朱色のものをマスタケとして区別したが
最近の研究結果から統一された

と記述されている。 

その上で、上記の論文を読むと、何だか良く判らなかったのだ。


所が、『緑化樹木腐朽病害ハンドブック』と言う本を見ていたら
その辺りの事が、非常に簡潔に記されていた。

【アイカワタケの解説文より】
従来アイカワタケとヒラフスベは別種と考えられてきたが
最近の遺伝子解析による研究で同じ種であることが明らかにされた。

【マスタケの解説文より】
最近の遺伝子解析を用いた研究により、
針葉樹に発生するマスタケ、広葉樹に発生するマスタケ、アイカワタケは
それぞれ別種らしいことが分かってきた。

つまり、ヒラフスベはアイカワタケの別形態であり
実は同一種だったのだ。
そして、マスタケには針葉樹タイプ、広葉樹タイプがあり
広葉樹タイプのマスタケが、アイカワタケと混同されたのが
混乱の原因だった様だ。

だから、以前の日記で当方が

 アイカワタケ、マスタケの中の
 厚膜胞子を形成する性質が突出して進化したのが
 このヒラフスベなのかも知れないなぁ。

と、偉そうに書いた部分は明らかに間違っていた事になる。

ヒラフスベが管孔を滅多に形成しない、有性生殖をしない、と言うのも
アイカワタケが無性生殖をする為に成長した物が
ヒラフスベだった訳なのだから、それも当然だろう。

常に新しい情報を元にしないと
この様に間違った事を書いてしまって
恥をかく事になる、と言う典型的な事例だなぁ……

過去記事を今更全面改訂も出来無いので
此処に訂正させて頂きます。
ヒラフスベ達に対して
誤解を与えてしまっていましたらお許し下さいませ。


所で、最近また
「白いキノコ」「白いきのこ」の語句での検索が増えています。
ヒラフスベの幼菌をその語で検索している例もある様です。

こちらは2005/08/09、東京の井の頭公園にて撮影。
ご参考まで。
 

 

ややこしいシリーズをまとめてみました→こちら

 


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| 多孔菌科 | 00:00 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
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コメント
どうもです☆
先人達はその見た目とかで俗名をつけたり
それが定着化したあとに、
近年の遺伝子解析で新たな発見があったり、
別種だったものが同一種だったりと……。
ここらで全てリセットしたいもんですね。

それにしても執念のようなものが感じられましたw
神だな、こりゃ。
| gikusa | 2009/06/06 3:52 PM |

>>gikusaさん
どもですw

遺伝子解析の結果、
「科」が消えたり、新たに作られたり、と
エライ事になっているのだそうです。
当方の様な下々の者には判りませんがw

マスタケとヒラフスベにたまたま出逢っていたので
色々気になって調べてしまったのです。
これも全てキノコヌシ様の思し召しかとw
| まねき屋 | 2009/06/06 11:18 PM |
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