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ツエタケはややこしい

2009年6月8日の事。
何時もの場所を探索していた時、
とある一角の小さな木の根本の硬質菌が気になった。


どうせ正体不明だろうなぁ。
でも念の為、撮影だけはして置こう、と近寄った所
そばにあるキノコの幼菌に気が付いた。


マットな質感で、ずんぐりとした形。

以前、この周辺では
チャニガイグチ(→こちら)を見た事があるので
その辺りかなぁ、と見当を付けた。

かわいいので早速撮影。
すると、近くの別の幼菌にも気付いた。

これは是非、成長後の様子も撮影しよう。
そう決めて、その日はそれで帰宅した。

4日後、成長した様子を撮影する為に
再び現場を訪れた。
すると、例の幼菌は
こちらの画像の様な状態になっていた。


イグチでは無く、全く姿形の違うキノコだった。
あまりの意外な事態に、
暫しあっけに取られてしまった。
しかも、かなり大きい。

見上げると雄大な感じ。

こんなキノコには今迄出逢った事が無い。。
これは一体何だろう……

この柄の長さと細さ。
ひだの形。
傘中央部の妙にしわっぽい感じ。
これは何処かで見た感じだなぁ……

はた!と閃いた。
この感じはツエタケだ。
そして表面全体のビロードの質感。
すると、これはビロードツエタケか?


実はこの日、別の場所で
大きなツエタケを見たばかりだったのだ。
今まで当方はツエタケを何回も見ていたのだが
それは傘径がせいぜい3〜4cmの
小さな個体ばかりだった。

因みに、ツエタケは細い柄と、ちょっとシワっぽい傘、


そして湿時に傘が強くヌメるのが特徴。

更に、柄は地中に深く伸び、
埋もれ木に繋がっている、と言う。


だが、この日に見たのは傘径7〜8cmの
割と大きな個体だった。
しかも、老菌で既に倒れてしまっていた為に
最初はツエタケだとは気付かなかった。




だが、全体的な特徴でツエタケだと判った。
図鑑ではツエタケの大きさとして
傘径4〜10cmと書かれている物が多いので
特に大きな個体では無い様だが
当方はこんなに大きな物は初めて見た。

で、その数時間後に先程のキノコに出逢った訳なのだ。
ツエタケの特徴を復習した所だったので
この大きなキノコもツエタケだと気付いた次第。
でなければ、この個体がツエタケの仲間とは
中々気付かなかったかも知れない。

だが、帰宅後、図鑑やネットで調べると
ビロードツエタケとして掲載されている画像の物は
当方の見た個体とはかなりイメージが違っている(→こちら)。
図鑑等では柄の色は黄色で、
傘に比べてかなり明るいのが特徴、との事。
だが、当方の出逢った個体は
傘も柄も、全てが暗褐色だ。
そして、何よりも大きさが違い過ぎる。
図鑑ではビロードツエタケは
「傘は径2〜5cm」とあるが
当方が撮影した個体は傘の径が20cm近い。
これは明らかにビロードツエタケでは無い。

疑問に思い、色々と調査をしてみた。
どうやらツエタケの仲間は
近年、幾つかの種類に分割されたらしい。
そう言えば『日本のきのこ』のツエタケの項に
「従来 O.radicate の学名のもとに1種とみなされていたものは、
 最近では数種に分割されている」
とあったっけなぁ。
他にも、「日本には1、2の近縁種があることが知られている」と
記述されている図鑑もあった(『原色日本新菌類図鑑』『東北のキノコ』等)。

調べてみると、大型のツエタケは
別種の「オオツエタケ(仮称)」として分類された、との事(→こちら)。
更に、オオツエタケの中でも
傘にヌメリが無いのが「オオツエタケ」で
ヌメリがあるのは「サトヤマツエタケ」だ、との事(→こちらの6月22日の項)。
以前、「ツエタケはとても大きくなる事がある」と聞いた事があった。
また、
 「中には違う種類かと思うような大きなサイズまで存在する」(『阿武隈のきのこ』)
 「菌蓋5〜23cm寛」(Mushroom of Taiwan)
等と、図鑑に依って大きさにの表示にバラツキがあったのは
ツエタケとオオツエタケ、サトヤマツエタケが
混同されていた所為だったのだろう。

当方の出逢ったこの個体は
全身ビロード状なので雨の後でもヌメリが出るとは考え難い。
なので、この個体達は
オオツエタケと考えて良いのかも知れない。
その中でも濃色タイプなのかも知れないなぁ。


また、他に「マルミノツエタケ」「ミヤマツエタケ」
「コツエタケ」等もあるらしい。
属名の「Xerula(近年、Oudemansiellaから変更されたらしい)」で
検索すると、32種もの学名がhitした。
更に、本来のツエタケの学名 Xerula radicata で見ると
6種類もの変種が登録されていた(→こちら)。
その中には勿論日本には無い種類もあるだろう。
だが、とにかく沢山の種類に分割された、と言う事だけは判る。
そうなると、当方が今迄「ツエタケ」だと思っていた個体が
本当にツエタケなのかどうか判らなくなって来る。
以前見ていた「3〜4cm」の個体と、今回の「7〜8cm」の個体も
果たして同じ種類なのかどうかも判らない。

因みに「ツエタケ」「Oudemansiella radicata」
及び「Xerula radicata」で検索をすると
大小、濃淡様々の画像がhitする。
明らかに別種が混じり込んでいる様だ。
また、オオツエタケにしか見えない画像に
「Xerula furfuracea」の学名が当てられているが
同じページに、どう見ても
オオツエタケでは無い画像も掲載されている(→こちら)。
更に、その名で検索すると、様々なタイプのツエタケの画像が出て来る。
同定の面で、Web上ではまだ混乱している様だ。
当方も、今回調べるまで
ツエタケがこんなにややこしい事に
なっていたなんて知らなかったよ……


こちらの画像は7日後の様子。

オオツエタケ?は斜面から転げ落ちてドロドロに腐り果てていた。

元、生えていた場所を見ると
近くに大きなツエタケが生えていた。



こちらには傘にビロード状の質感は無い。
こちらの個体はひょっとしたら
サトヤマツエタケの方なのかも知れないなぁ。

確認の為、試しにちょっと根本を掘ってみる。
すると、掘り始めた途端に倒れてしまった。


この場所は斜面で地盤が弱い為に
足場が不安定だったのだろう。
元々、これだけ傘が大きく重たいのに柄が細い、と言う事は
かなりバランスが悪い、と言う事だ。
そんな場所にそんな構造の物があれば
転げ落ちてしまうのも当然と言えるだろう。
先のオオツエタケ?も
同じ理由で転げ落ちてしまった、と考えられる。
と言う事は、オオツエタケ達は
風等で倒れてしまう事も多いのかも知れない。
それも、ちょっと考え物だよなぁ。


※7月27日追記
井口潔さんからツエタケの分類に関しての論文をご紹介いただきました。
http://rms1.agsearch.agropedia.affrc.go.jp/contents/JASI/pdf/society/73-1142.pdf
英文ですが、最後のページに日本語での要旨があります。
それによると、どうやら Xerula radicata は
日本の「ツエタケ」では無いかも知れない、との事。
ビロードツエタケも同様なのだそうです。
ツエタケは当方の想像以上にややこしい事になっている様です……
 

 

ややこしいシリーズをまとめてみました→こちら

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| キシメジ科 | 00:10 | comments(10) | trackbacks(0) | pookmark |
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コメント
わしは先日、財布の中身が200円しかなかったのに(
笑)10倍のカネを撮影に投資したのね……

(# `皿´)ノキィーーーッ!
| きのこ堂 | 2009/07/25 7:44 PM |

>>きのこ堂さん
1000円は使い回しですよ……

それでも5倍かw


フフン( ̄∀ ̄)♪
| まねき屋 | 2009/07/26 2:39 AM |
カワイイ(・∀・)♪で済まなかったようですね。
それにしても、最初はホントにイグチっぽいですね。
イグチ→カワイイ(・∀・)♪→ツエタケと変わっていく様は
出世きのこですかねw
| gikusa | 2009/07/26 4:20 PM |

>>gikusaさん
ヘタに種類が推定出来てしまうと
カワイイ(・∀・)♪では済まなくなってしまうのが困ったもんで……w

出世キノコ!
イイ(・∀・)!ですねw

イグチ→カワイイ(・∀・)♪→ツエタケ→オオツエタケ→ツエタケメガMAX

とかどうでしょうw
| まねき屋 | 2009/07/26 8:48 PM |
 KinokoLaboを主催しておりますが、専門は子嚢菌…のイグチでございます.

 ツエタケ類に関してはhttp://rms1.agsearch.agropedia.affrc.go.jp/contents/JASI/pdf/society/73-1142.pdf
がもっとも参考になるかと.

 英文ですが、論文の末尾に日本語による抄録がございます.これによると、日本国内では、厳密な分類学的定義による「ツエタケ」や「ビロードツエタケ」はないかもしれない、とのこと.

 私が活動している関東南部では、マルミノツエタケ・オキナツエタケ・チェンマイツエタケなどが比較的よく見出され、まれにフタツミオキナツエタケも採集されることがあります.
| イグチ 潔 | 2009/07/26 10:43 PM |

>> イグチ 潔さん
コメント有難う御座居ます。

KinokoLaboは何時も色々参考にさせて頂いています。
御著作も拝見させて頂いております。

ツエタケの論文のご紹介、有難う御座居ました。
想像以上にややこしい事になっているのですね……
絵合わせでの判断しか出来無い当方の様な素人には
限界を遥かに超えてしまっています……

この旨、本文に追加させて頂きます。
ご指摘、有難う御座居ました。
| まねき屋 | 2009/07/27 2:31 PM |
そういえばキノコの季節だわ〜、と思って伺いました
私もお久しぶりです

ツエタケはややこしいのですね
我が家の周りにもツエタケは沢山出ていますがとても小さくて食べる気になれません

10年ほど前に札幌の植物園に行きました
あそこは倒木もそのままにしてあるので楽しいのです
太い倒木にとても美しいキノコが出ていて・・・
それがビロードツエタケでした
そばにはまねき屋さんが撮られたと同じような幼菌が沢山あって感激したんですよ
でも、そう単純には決められないのですね

懐かしいことを思い出させていただきました
| yuuko | 2009/08/22 6:34 PM |

>>yuukoさん
お久し振りですー

昨日買った最新のキノコ図鑑では
また新たなツエタケが掲載されていました。
見た目は普通のツエタケと見分けが付きませんでしたが
新種、との事でした。
ほんと、ツエタケはややこしい事になっているみたいです……

その植物園、倒木がそのままなんて、面白いですねw
近くにあったら毎週通ってしまいそうです♪
| まねき屋 | 2009/08/22 10:33 PM |
こんばんは。ミクシィの、きのこLOVEコミュニティから来ました。

ツエタケのお話、勉強になりました。

わたしも、きのこを観察していて、「しいて言えばツエタケ」とでもいうべききのこをよく見るので、「なるほどそういう事だったのか!」と、たいへん面白く、拝読いたしました。

ありがとうございました。
| kiyodono | 2009/11/11 11:39 PM |

>>kiyodonoさん
コメント有難う御座居ますー
あちらでは当方もお世話になっていますw

キノコは本当にややこしくて難しいですね。
他の色々なキノコも
きっとこう言うややこしい事態になっているのでしょうね……

図鑑の絵合わせだけでは限界がありますよね。
でも、それだからこそ面白くもありますね♪
| まねき屋 | 2009/11/12 4:47 PM |
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