キノコは胞子を形成、飛散させる為の器官だ。
胞子を形成する細胞をより多く並列させる事で、
より多くの胞子が形成され、
種の生存の可能性はより高くなる。
その為キノコは、胞子形成部の表面積を
大きくする為の様々な工夫をしている。
その多くは「ヒダ」と言う形で
より広い表面積を確保している。
ヒダは、例えばシイタケがそうである様に
柄を中心にして放射状に配置している場合が
圧倒的に多い。
だが、中には柄を中心にして
ヒダを同心円状に配置している変わり者が居る。
それが「ウズタケ」と言うキノコだ。
ウズタケの発生は稀だと言う。
掲載されている図鑑も少なく
Webでの情報もとても少ない。
2010年8月25日時点で
"ウズタケ"でGoogleで検索すると55件。
学名の"Coltricia montagnei"で世界中を検索しても
581件しかhitしない。
まして、画像となると更に少なくなる。
ウズタケに関しては以前も書いた事がある(→こちら)。
その時は残骸に遭遇しただけで
しかも撮影が下手だった為に
とても残念な結果になり
かなり悔しい思いをしたのだった。
また撮影出来る機会があれば良いなぁ。
でも、二度と出逢えないかも知れないよなぁ、と
漠然と思っていた。
そして2010年8月22日の事。
岐阜の山中で出逢ったのがこれ。
一見、何と言う事の無い地味なキノコだ。
あまりに地味なので
当方も最初はスルーしようかと思っていた。
だが、念の為近寄って見てびっくり!
ヒダが同心円状になっているでは無いか!
これはウズタケ以外考えられない。
前回の残骸と違って、今度は新鮮な個体だ。
そんな状態のウズタケと出逢えるなんて感激だ。
近くにはもう一つ、別の個体もあった。
折角なので、片方を記念に持ち帰る事にした。
帰宅後、詳細に撮影してみた。
傘の中心には剛毛?が生えている。
近縁種のニッケイタケに似ているなぁ。
ニッケイタイケは当方の行動範囲では割と発生が多い。
最初はこのウズタケも、
ニッケイタケ辺りの大型個体か何かに見えたので
スルーしようかと思ってしまったのだ(^ω^;)
発生地で見た時には真っ白だったヒダの縁が
持ち帰った時にはくすんでしまっていたのは
ちょっと残念だった。
このヒダの並びは何度見ても面白いなぁ。
これを渦に見立ててその名が付けられた訳だ。
う〜む、これは正に”渦茸”だなぁ。
この個体はたまたま柄が偏心性だが
柄が中心にあれば
それこそ渦潮の波紋の様に見える筈だ。
因みにニッケイタケの裏側は網目。
表面積を増やすのに、
かなり多くの種類のキノコが網目構造を採用している。
実はウズタケ、ニッケイタイケの含まれる多孔菌科は
殆どが網目構造で、ヒダ構造なのは極一部だ。
所で「キノコ」と言われる物は
日本中で5000種とも10000種とも言われている。
その沢山のキノコの中で
この様に、同心円状のヒダを持つキノコは
このウズタケの他にもう一種類しか無いと言う。
それがワヒダタケだ。
たまたまこんな小さな個体しか無かったのでアレだが
小枝にちょこっと張り付いている様にみえるのが
ワヒダタケの子実体。
2009年6月23日、名古屋市内にて採取。
一見、カワラタケの仲間、
色合いからしてチャカイガラタケか何かに見えるのだが
裏を返すと、この様にヒダが同心円状になっている。
子実体が小さいのでちょっと判り難いのが残念だ。
この個体はぽつんぽつんと
数個の子実体しか無いが
通常は、それこそチャカイガラタケの様に
密集して発生するらしい(→こちら)。
因みに、こちらがチャカイガラタケ。
チャカイガラタケのヒダは放射状だ。
同心円状のヒダを持つ、この2種のキノコ。
折角なので、並べて記念写真を撮ってみた。
数少ない似た者同士。
名古屋市内と岐阜山中の出身。
この思わぬ出逢いに2種ともきっと喜んでいる筈……
なのかどうかは判らないけどw
取りあえず、世界的にも珍しいキノコ同士の2shot写真。
とても貴重な一枚なのには間違い無い筈だ。
まぁ、他にこんなアホな事を
しようと言うヤツも他に居ないだろうしなぁ。
つまり、当方は「世界的にも稀なアホ」、と言う事になる。
これはちょっと自慢して置こう♪
※関連記事も併せてお読み頂けましたら幸いです
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