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三河黒網足猪口
今年の6月の事。
何時ものフィールド歩いていた。
一通り回って帰ろうかな、と思った時、
こんなキノコに遭遇した。
mkwkramasigc (2).JPG
これはひょっとして???

管孔もこの様に変色する。
mkwkramasigc (3).JPG
mkwkramasigc (4).JPG

傘の質感はこんな感じ。
mkwkramasigc (7).JPG
図鑑の解説ではフェルト状、とのだが
それよりはちょっと粉っぽい感じを受けた。

そして何よりもこの柄の外観。
mkwkramasigc (6).JPG
二重構造の網目模様。
大きな網目の下に更に網目模様が見える。
これはミカワクロアミアシイグチの大きな特徴だ。

ミカワクロアミアシイグチは2000年代初頭、
愛知県西尾市で発見・報告された新種のキノコだ。
その為、掲載されているキノコ図鑑は今の所
橋本確文堂刊『追補北陸のきのこ図鑑』と
学研刊『日本の毒きのこ』しかない模様。

名前に「ミカワ」とあるので
愛知県民としては是非一度は遭遇したかったキノコ。
それがやっと今年初遭遇出来た。
mkwkramasigc (12).JPG
折角なので記念に持ち帰る事に。
現在、凍結して乾燥標本作成中。

たまたま近くに、良く間違えられると言う
モエギアミアシイグチが生えていたので並べて比較してみた。
左がモエギ。右がミカワ。
mkwkramasigc (8).JPG
同じ黒系のマットな質感だが
モエギはキメが細かく、ベルベットの様な艶さえ感じられる。
それに対し、ミカワはやや粉っぽいフェルト状。

全体像はこんな感じ。
mkwkramasigc (9).JPG

柄の部分の違いは明らかだなぁ。

モエギの方はその名の通りに萌黄色。
そして網目もあっさりした構造。
mkwkramasigc (13).JPG
比べると差異は明らかだが
枯れて萎んだ個体だと見分けは付き難いかもなぁ。


その約一か月後。
別のフィールドを探索中、
幾つものミカワクロアミアシイグチに遭遇した。
今年はミカワクロアミアシイグチの当たり年だったのか知れない。
mkwkramasigc (14).JPG
mkwkramasigc (16).JPG
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mkwkramasigc (18).JPG
mkwkramasigc (19).JPG
mkwkramasigc (21).JPG
mkwkramasigc (20).JPG
ただ、どの個体も最初に遭遇した個体に比べると柄がかなり細かった。
その為、二重構造の網目も画像ではちょっと判り難い。
これだと確かに場合によっては
モエギアミアシイグチと間違えてしまう事もあるかもなぁ。


因みにミカワクロアミアシイグチは猛毒キノコだ。
ミカワクロアミアシイグチは発見されて程無く
成分分析に回された、との事。
その結果、毒性分であるボレチン(N-у-グルタミルボレチン)と、
イミン化合物(2-ブチル-1-アザシクロヘキセン イミニウム塩)が
単離された、と2002年に名古屋大学の研究グループから発表された。
因みに、その致死量は「不明」の由。

毒の強さを表すのに「致死量」と言う概念が使われる。
それは毒性分を複数のマウスに注射し
半数のマウスが死ぬ濃度を計測するのだ。
実際には、どの濃度にまで毒性分を薄めれば
マウスが死ななくなるか、を調べて行く事になる。
つまり、ひたすらマウスを殺し続けるのだ。
で、このミカワクロアミアシイグチの場合、
どれだけ薄めてもマウスが死んでしまった為に
可哀想なので実験を途中で中止した由。
その為「致死量不明」になったのだとか。
つまり、それ程毒性が強い、と言う事になる。
ひょっとしたらミカワクロアミアシイグチは
世界最強最悪の毒キノコなのかも知れない。

そのキノコが毒キノコなのか、そうでは無いのかは
通常は食べた人が中毒するかどうかでしか判別出来無いのだが
このミカワクロアミアシイグチは
食べた人が居ないのに毒キノコと判明した
とても珍しいキノコ、と言う事になる。
ただ、口に含んで味見をした人はいたらしい。
それによると味見をしただけで口が痺れた、との事。
矢張り、人間に対してもかなりの猛毒キノコの様子。


所で、このミカワクロアミアシイグチ。
発生状況をwebで調べると愛知県以外では
岐阜・三重・兵庫・山口で発生の確認がされていると言う。
今の所、静岡以東では発生報告が無い様だ。

似た様な発生状況を示している物にオオコゲチャイグチと
ティラミステングタケ(マクツバコナカブリテングタケ)がある。
オオコゲチャイグチは新潟・石川・愛知・岐阜・三重・滋賀・京都・
奈良・大阪・兵庫・広島・島根・鳥取・山口・大分での発生報告がある。
静岡以東の長野・埼玉・千葉での発生報告もあるようだが、
その数は極めて少ない。
ティラミステングタケは岐阜・愛知・三重・京都・奈良・大阪・兵庫・
長崎での発生報告がある。
つまり3種とも、西日本の中北部に分布域を持ちながら
その発生の中心は東海地域と近畿中北部、と言う
特異な分布状況を持っている事になる。
調べれば、他にもそう言う分布域を持つ種類が
あるのかも知れないなぁ。

東日本と西日本を分ける物、と言えばフォッサマグナがある。
糸魚川静岡構造線と新発田小出構造線・柏崎千葉構造線に
挟まれた地域の東西で地質が大きく異なるのだ。
そして西日本の中北部を包括する区分と言えば
中央構造線の北側、西南日本内帯がある。

           大鹿村中央構造線博物館HPより引用)

上図で見ると、千葉はちょと微妙だが
東海・近畿中北部・山口・大分・長崎は元より
新潟・長野・埼玉も西南日本内帯に見事に含まれる。

と言う事は、キノコの分布にもフォッサマグナや
中央構造線が影響しているのかも知れないなぁ。
だとしたら数千万年、いや億年単位の遥か昔からの
日本列島の成り立ちに関わる、かなり壮大な話になる。

もっとも、web上での発生報告が
そのままそのキノコの分布状況を表している、と
即断するのは間違いだろう。
食べられもしないキノコの事を
自身のHPやblogに書き込む程のキノコマニアが
全国的にどの様に分布しているのかを
考慮しなければならない筈だ。

東海と関西に、たまたまそう言うマニアが
多く分布しているだけなのかも知れないのだ。
例え全国的に広く発生していても
それを見付る人が居なければ報告に上がらない。
ミカワクロアミアシイグチだって今まで発生し続けていた筈なのに
当方は名古屋に居を移して7年目の今年、初めて遭遇したのだ。
キノコに出会うのはとにかくタイミングが全てなのだ。
一つのキノコの全貌を捉えるのは中々容易な事では無い。

因みに、ミカワクロアミアシイグチからは
胞子紋が採取される事は無い、との事(→こちら)。
通常だったら紙の上にキノコの傘を伏せて置いておくと
放出された胞子が紙の上に積り、模様を描くのだが
何故かこのキノコからは胞子が殆ど放出されておらず
胞子紋が採取された事が無いのだとか。
その為、ミカワクロアミアシイグチが
有性生殖をしているのかどうかも疑わしい、とまで言われている由。
キノコの全貌を捉えるのは本当に困難な事なのだなぁ。

  (2015年12月28日訂正)
※胞子紋の件の記述は間違いだった様です。
 詳細は「気分はきのこ」の「おしゃべりボード」をご覧下さい(→こちら)。
 2015年12月28日時点で5ページ目の下方、
 「黒いイグチ」の記事中に詳細が書かれています。
 gorosukeさん、ご教示有難う御座居ました。



以上、少ない情報を元に考えを広げると
とんでもなく大げさな推論=暴論が成り立ってしまう、と言う一例。
これも素人だからこその楽しみ方、と言う事でお許しを。

それはそれとして、今後もミカワクロアミアシイグチだけでなく
色々なキノコに注意して探索・観察して行きたい。
そして、また暴論を考えてみたい物だ♪



所で、とあるサイトでこのキノコの和名について
ミカワでは無く(より知名度の高い)「オワリ」の方が
良かったのでは、と言う意見があった。
他地域からしたら、まぁそうなのかも知れないなぁ。
だが、最初の発見地は西尾市なのだ。
そこは「三河」であって「尾張」では無い。
同じ愛知県でありながら三河と尾張は仲がよろしくない。
どの地域にも良くある、局所的な諍いだ。
なので、三河で最初に発見されたキノコに
尾張の名を冠したりしたら
三河のキノコマニアが黙ってはいないだろう(なのかな?)。



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| イグチ科 | 00:05 | comments(10) | trackbacks(0) | pookmark |
コメント
いつも楽しく拝見しております。
近年においてもよく新種が記載されるというキノコの世界は奥が深いですね。
イグチの仲間にも恐ろしい毒キノコがあるのですね。
| Blue Wing Olive | 2015/12/26 10:04 AM |

>>Blue Wing Oliveさん
コメント有難う御座居ますー

こんなに大きくて存在感のあるキノコでも
つい最近発見される、と言うのですから
本当に奥が深くて不思議ですよね。
しかも猛毒とか……

だから楽しくて辞められませんね♪
| まねき屋 | 2015/12/26 2:51 PM |
自分が過去に撮影した中に「もしや……」というのが一本。
ttp://i.imgur.com/NkkrowM.jpg
ttp://i.imgur.com/5ixRBAD.jpg
2013年8月13日に愛知県犬山市明治村にて撮影。
あの時は単に黒っぽいイグチとしか思わなかったけど、もし件の猛毒な奴だとしたらドキドキします。
| ぱ | 2015/12/27 8:25 PM |

>>ぱさん
コメント有難う御座居ますー

画像のキノコ、柄に緑色が見えますのでモエギアミアシイグチの方だと思います。
モエギも幻覚毒のキノコ、との事ですので
どちらにしても食べない方が無難かと(^-^)
| まねき屋 | 2015/12/28 4:17 PM |
まねき屋さん

まねき屋さんも黒いイグチを見つけましたか。愛知県では夏にクマゼミが大合唱するような比較的温暖な地域に分布します。日本には糸魚川静岡線より西に分布するきのこが何種かありますが、今のところこのきのこも該当します。

>胞子紋が採取された事が無い
私は発見者からそう聞いていましたが、そうでもないようです。詳しくは「気分はきのこ」の「おしゃべりボ-ド2014.7.19」を見てください。

| gorosuke | 2015/12/28 10:44 PM |

>>gorosukeさん
矢張りキノコの分布にフォッサマグナなどが関係しているかも知れないのですね。
本当にキノコは面白いですねー

胞子紋の件、ご教示有難う御座居ました。
本文の方、修正致しました。
勉強になりました。
重ねて有難う御座居ました。
| まねき屋 | 2015/12/29 2:45 AM |
>> まねき屋さん
モエギの方でしたか。残念?
まぁどちらにしても野生のキノコを自分だけの判断で口にはしない
ようにしているのでご安心ください。
東山植物園とかよく行くのですが、あそこでもドクツルタケか何かの
中毒者が出ていますししね……。
| ぱ | 2015/12/29 3:25 PM |

>>ぱさん
実は1本目のミカワは東山公園内なのでした。
あそこも探すと結構色々な毒キノコが出てますね。
うっかり食べない様にお互い気を付けましょう(^-^)
| まねき屋 | 2015/12/30 8:11 PM |
皆様

このきのこについては問い合わせが多いのでもう少し補足します。

発見者が採取した標本は池田良幸氏にも送られ、「追補北陸のきのこ図鑑」に記載されました。その内容は私の観察結果と矛盾しません。

また、発見者によると柄の太いものと細いものがあるそうです。

そして、もしモエギアミアシイグチやオオクロ二ガイグチなど良く似たきのこと見分けがつかなかったら顕微鏡でシスチジアを観察するのが早道です。ミカワには有色のシスチジアがあります。
| gorosuke | 2015/12/30 10:29 PM |

>>gorosukeさん
ご丁寧に有難う御座居ます。

ミカワには柄の太いのと細いのの2系統あるのですね。
当方はその両方に遭遇出来た訳なのですねー

また遭遇してもっと観察したいと思います。
ご教示どうも有難う御座居ました。
| まねき屋 | 2016/01/01 2:28 AM |
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