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ツノシメジの事

2005年の事。
岐阜山中でキノコ探索をしていた際に
こんなキノコを見つけた。
tsunosimeji2003.JPG

tsunoshimeji2005 (1).JPG

tsunoshimeji2005 (4).JPG

tsunoshimeji2005 (3).JPG

tsunoshimeji2005 (2).JPG
毛羽だった鱗片がとても顕著な中型のキノコ。
その前年、この近くでヌメリスギタケモドキを
採取していたので、
外見から初見ではスギタケの仲間かな、と推定した。

腐朽木から発生するスギタケの仲間は主に

 ハナガサタケ 
 スギタケ 
 スギタケモドキ 
 ヌメリスギタケ 
 ヌメリスギタケモドキ 
がある。

残念ながら当方には手持ちの画像が無いので

リンク先でご覧頂きたいが、外見的にはどれもとてもよく似ている。

更に、良く似た未知種もある、との事なので

その辺りなのかなぁ、と見当を付けた次第。

 

こちらはヌメリスギタケモドキの老菌。

numerisugi-old.JPG

傘の鱗片が良く見える。
この様な訳で、褐色で鱗片の顕著なキノコ、と言えば
スギタケの仲間がすぐに思い至る。
でも、それにしては鱗片と言うより「毛羽立ち」て感じだし

その量もとても多いなぁ。
色も濃いし、スギタケの仲間にありがちなヌメってる感じも無いし。
まぁ、乾燥気味で鱗片の感じが変わってるのかもなぁ、と
疑問に思いながらも取り敢えず採取。

帰宅後、瓶詰めにするべく水煮に。
だが、多くのスギタケの仲間なら出る筈のヌメりは一切出ない。
どうやらこれは別種のキノコのようだ。
だが、正体がまるで判らない。
それらしいキノコを図鑑で見つけられない。
なので廃棄処分に。
後学のために保存して置くべきだったかも知れないが
その時の状況もあったので仕方ない。
それにしても何て種類だったのか、気に掛かるなぁ・・・・・・

 


それから何年も経った頃、
ネットで何かを検索していた時に
例の謎のキノコそっくりの画像を偶然見つけた。
それが「ツノシメジ」だった。
(Googleの画像検索結果→こちら


ツノシメジはスギタケの仲間では無く、実はキシメジ科。
キシメジ科はツルっと、またはヌラっと、
もしくはスラっとした外見のキノコが多いが
この様な、そこそこ大きいのに
こんなにも激しく毛羽だったキノコはとても珍しい。

「ツノシメジ」と言う和名は

この顕著な毛羽立ちを「ツノ」に見立てたのだろう。


ツノシメジの事を予め知って居ないと
スギタケの仲間に間違えるのは仕方無いと言えるだろうなぁ。

因みに、日本で知らない人は居ないだろう、あの「マツタケ」も

キノコマニアで知らない人はいないだろう「ナラタケ」も

キシメジ科だ。


ツノシメジとスギタケの仲間とは分類学的には近い訳では無い。
即ち、

 

 担子菌門ハラタケ綱ハラタケ目モエギタケ科スギタケ属
 担子菌門ハラタケ綱ハラタケ目キシメジ科ツノシメジ属

 

の様に違っている。
「科」が違う、と言う事は人間を中心に考えると

同じ霊長目の括りではあるが
キツネザルやメガネザルくらい離れている、と言う事になる。

猿に顔や雰囲気の似た人間は少なくないが

実際には全く別の生き物な訳で

取り敢えず、キノコの見た目程には近く無い、と言う事で。

 


日本で最初にツノシメジの発生が報告されたのは
1989年との事で、比較的新しいキノコと言える。
近年は発生報告が多い、との事で
それがそのまま、環境の変化等によって
発生量が増加した事を意味しているのか、
又は、近年は当方の様なキノコマニアが多くなったので
このキノコに遭遇する人が以前より増えただけ、なのかは判らない。

ただ、全国的に見て発生の多い種類では無い様だ。
「"ツノシメジ"」で検索しても658件。
学名の「"Leucopholiota decorosa"」でも2230件だ。

                      (何れも2017年6月30日現在)
これは情報がかなり少ないキノコ、と言えるだろう。
その為か、掲載されている図鑑も極めて少ない。
当方の知る限りでは

 

 『見つけて楽しむ きのこワンダーランド』

        大作晃一・吹春俊光著 山と渓谷社刊

 『追補 北陸のきのこ図鑑』 池田良幸著 橋本確文堂刊

 

そして今年(2017年)5月28日に発刊されたばかりの

 

 『検証キノコ新図鑑』 城川四郎著 筑波書房刊

 

の3冊のみだ。


発生環境は『検証キノコ新図鑑』によると

 

 北米、欧州、日本の冷温帯上部〜亜寒帯域に分布が知られている。
 日本では長野、栃木、岐阜などの各県のシラカバなど広葉樹倒木に発生。
 まれ。

 

との事。
当方がこのツノシメジに遭遇したのは
岐阜山中、1000m地帯のシラカバ倒木上だったので記述と良く合致する。

上掲の3書では食毒不明、となっているが
ヨーロッパでは食用にされている由。
日本では食べた人はいないのか、と思ったら

白川渓一郎氏の「きのこギャラリー」と言うサイトでは
『食味:☆☆』となっていた(→こちら)。
やはり食べられるようだ。

尚、平成26年6月1日刊の『追補 北陸のきのこ図鑑』では
ツノシメジは所属科未確定となっていたのだが
平成29年5月28日刊の『検証キノコ新図鑑』ではキシメジ科となっている。
その数年の間に研究が進んだ訳なのだなぁ。

因みに学名の Leucopholiota decorosa。

 Leucopholiota は「leuco(白い)+pholiota」。

pholiotaはスギタケ属の属名。

「pholis(ウロコ)+otos(耳)」で

スギタケ属の外観からその学名が充てられたのだろう。

で、スギタケ属は胞子が茶色なのだが

ツノシメジは胞子が白色なので「白いスギタケ」と表現された様だ。
decorosaは「美しい」の意味との事。
この褐色の毛羽の派手なキノコが「美しい」とは思えないが
decorosaがデコレーションと同根の言葉なのだとしたら
「毛羽で派手に着飾っている」と言う意味合いなのかも知れないなぁ。

 

 

その後、暫く遭遇は無かったのだが
2014年と

tsunoshimeji2014 (1).JPG

tsunoshimeji2014 (2).JPG

tsunoshimeji2014 (3).JPG

tsunoshimeji2014 (4).JPG

 

2015年にツノシメジに連続して出逢った。

tsunoshimeji2015 (1).JPG

tsunoshimeji2015 (2).JPG

tsunoshimeji2015 (3).JPG

tsunoshimeji2015 (4).JPG

やはり近年は発生が増えているのだろうかなぁ。
それにしても相変わらず毛羽毛羽しいキノコだ。

高地にしか発生しないキノコ、との事なので中々その機会は無いが
今後も色々と観察して行きたいと思う。
今度遭遇出来たら食べてみたいと思わないでも無いような気が
しないでも無い、みたいな・・・・・・

 

 

※続編があります。よろしければお読み下さい→こちら

 


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| キシメジ科 | 00:04 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
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コメント
ハナガサタケを思い出しましたが、違うんですね。奥が深いです、キノコ。
| なかやま | 2017/07/10 1:15 PM |

>>なかやまさん
コメント有難う御座居ます。

やっぱりその辺りのスギタケの仲間に見えますよね。
どうしてもキシメジ科には見えませんよねー

本当にキノコは知れば知るほど奥が深いです・・・・・・
| まねき屋 | 2017/07/18 11:04 AM |
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