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巾着

とある初夏の日。
キノコ仲間と共に岐阜県各務ヶ原の森林公園でキノコ探索をしていた。
その場所はとてもキノコ向きな環境で、あちこちに色々なキノコがあった。
何かを見付けると一斉にしゃがんで撮影を始めてしまう為に、
駐車場から50m位を進むのにも1時間くらい掛かる程だった。

 

そんなこんなで山道を歩き始め、ふと道の脇の水路に目をやる。
その水路は底も側壁も木の板で作られており
中に入ってしゃがめる程の幅と深さ。
板は結構腐朽が進んでいた様で幾つかのキノコが生えていた。
その中にとても小さな、直径4〜5伉の白い丸い物があった。

kinchakutake (2).JPG

 

丸くて白いキノコ、となるとホコリタケの仲間がまず頭に浮かぶ。
これもその辺りかなぁ、と推定し、取り敢えず撮影。

森蔭の中の水路の側面なのでとても暗く、
当方のカメラの性能と、当方の撮影技術ではこれが精一杯。

kinchakutake (4).JPG

 

トリミングして更にアップ。

kinchakutake (3).JPG

見た感じ幼菌だろうし、こんなに小さいと種類の判別は難しい。

周りには更に小さな丸い物が。

直径1mmも無いのもある。

それこそ発生初期の物なんだろうなぁ。


ホコリタケの仲間は種類は多いのに図鑑にはあまり載っていない。
多分「正体不明菌」として処理せざるを得ないだろうなぁ。

なので、簡単に撮影しただけで終わらせようと思ったのだが
何となく、それこそ本当に何となく、その中を見てみたくなった。

 

白くて丸いキノコ、と言う事で

単純にホコリタケの仲間を思い浮かべたのだが

所謂「腹菌類」の仲間には様々なタイプのキノコがある。

また、「塊菌目」と言う一群のキノコもその名の通り、丸い塊のキノコで

世界3大珍味のトリュフもその中の一つだ。

どれも丸い塊のキノコ、と言う特徴は共通している。

なので、外見だけでの判別はとても難しいが

中の様子を見ればある程度は種類の範囲を狭められるかも知れない。

 

近くを見ると、色が淡い褐色になった個体があった。
色が違うから成菌なのだろうなぁ。
それを手に取り、指で裂いてみた。

kinchakutake (1).JPG
すると、小さな豆みたいな物が出て来たのでびっくり!
すっかりホコリタケの仲間だと思い込んでいたので
まさかこんな物が出て来るとは全くの予想外。


気を付けて周囲を見ると、

袋が破れて中の豆が外にこぼれている個体もあった。

kinchakutake (5).JPG

 

 

こう言う豆状の物、と言えばチャダイゴケの仲間が真っ先に思い浮かぶ。
チャダイゴケの仲間はカップの中に豆が詰まった形が特徴のキノコだ。
こちらはハタケチャダイゴケ。

hatakechadaigoke (5).JPG

hatakechadaigoke (3).JPG
幼菌の段階では蓋がされた状態。

 

成熟すると蓋が破れ、中の豆が見えて来る。

hatakechadaigoke (4).JPG

hatakechadaigoke (2).JPG

この豆状の物は小粒塊(ペリジオール)と言い、中に胞子が詰まっている。
雨粒がこのカップを直撃すると、その衝撃で小粒塊が外に飛び出し
それによって胞子を飛散させている。

 

成熟しても直径5伉度のとても小さなキノコ。

だが、画像の様に群生する事が多いので発生すると結構目立つ。

hatakechadaigoke (1).JPG

 

こちらは小粒塊を飛ばし終わってカップが萎れた状態。

hatakechadaigoke (6).JPG

これだけの群生で、全ての小粒塊を飛ばし終わったのだから

この周辺は小粒塊だらけだったのだろうなぁ。

物が小さいし、色も黒いので気付かなかったのだけど。

 

以前、とある場所でチャダイゴケに水を垂らし小粒塊を飛ばす、

と言う実験に立ち会った事がある。
その結果、小粒塊は物によっては

50〜60cm離れた場所の物に張り付いていた。

その障害物が無かったら1mは飛んでいたかもなぁ。

 

50〜60cmと言うと大した距離では無いと思うかも知れないが

元は直径5伉度のキノコから発射された

直径2mmにも満たない様な小粒塊なのだ。

キノコ本体の大きさの100倍の距離は飛んだ訳だ。

これはかなり凄い事だと思う。

 

実はチャダイゴケはカップの形状が
雨粒の衝撃によって小粒塊を上手く遠くに飛ばす様な、
絶妙な形状をしているのだとか。

何故、どうして、そしてどうやってそう言う風に進化したのだろうかなぁ。
本当に不思議で仕方無い。

 

 

と、話はずれたが、小粒塊と言う同じ特徴があるので
恐らくチャダイゴケに近い仲間なのだろうなぁ。
その線で調べてみよう。

 

で、色々調べた結果、

「キンチャクタケ(巾着茸)」もしくはその近縁種、と言う事が判った。
「巾着」とは今で言えばポーチに当たるのだろうか。
小銭や薬等の小物を入れて持ち歩く為の、日本古来の布の袋だ。
恐らく小粒塊を小銭に見立てたのだろう。
風流でユーモアの利いた命名だと思う。

 

名前が判明してから見たら

山渓刊の『日本のきのこ』に載っていたので逆にビックリしてしまった。
全然気付かなかったなー
そう言えばこんなの載ってたっけなぁ。
説明文を良く読んでいなかったのと
画像だけを見て、もう少し大きいキノコだと勝手に思い込んで居たのもあって
各務ヶ原で遭遇したこのキノコと
図鑑のこれが結びつかなかったよ。
もっとちゃんと読み込まないとダメだなぁ……

 

さて、この「キンチャクタケ」。
チャダイゴケと違って小粒塊を飛ばす事はしない由。
成熟すると袋が破れ、昆虫などに食害される事によって
胞子を飛散するのだとか。
雨や風で飛ばされたりもするのだろうかなぁ。

 

ただ、この「キンチャクタケ」は垂直面に発生していたので

この様に下に落ちるだけだ。

kinchakutake (6).JPG

あまり「飛散」はしていないなぁ。

でも、これが昆虫などに食害されて

胞子があちこちに運ばれる訳なのだろうなぁ。

 

考えてみれば、最初にこの「キンチャクタケ」が

この場所に発生する事になったのも

昆虫か何かによって最初の胞子が此処に運ばれて来た訳なのだろうし。

だから小粒塊を殊更に遠くに飛ばさなくても

良いのかも知れないよなぁ。

 

そうなると、少しでも胞子を遠くに飛ばそうと

涙ぐましい努力をしている多くのキノコ達の

立つ瀬が無いかも知れないけれど。

まぁ、キノコそれぞれで胞子の飛散方法が違っている様に

胞子の性質や構造もそれぞれ違っているだろうから

一概には言えないのだろうけれど。

 

 

所で、この「キンチャクタケ」。

2002年の京都府のレッドデータブックでは

「絶滅寸前種」とされている(→こちら)。

その選定理由は

「小型のため発見するのが困難で情報が不足している」との事。

確かに小さいから中々見付け難いだろうなぁ。

 

所が2015年版では「要注目種」となっている(→こちら)。

改定理由として

「稀産ではあるが、発生基質・環境とも減少要因はない。

 積極的に絶滅寸前種に挙げる要因に欠ける。」

との事。

これもつまり

「小型のため発見するのが困難で情報が不足している」

からなのだろうなぁ。

今回は板に発生していたので見付ける事が出来たが

落葉の中の落ち枝に生えていたら見付けられた自信は無い。

今後も注意はして行く積りだけれどね。

 

 

で、小型のため発見するのが困難で情報が不足している、と言う

この「キンチャクタケ」。

その為、web上での情報もとても少ない。

国内のサイトの画像検索で出て来るのも

2017年9月29日現在、上掲の京都府レッドデータベースと

「旭川きのこの会」のサイト(→こちら)くらいしか無い模様。

当方のこのblogが3件目になるのだと思われる。

これはちょっと自慢したくなるなぁw

 

まぁ、キンチャクタケの事を検索しようとする人が

日本中でどれ位居るのかは判らないけれど。

 


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| チャダイゴケ科 | 00:06 | comments(4) | trackbacks(0) | pookmark |
コメント
まねき屋さんて、キンチャクタケよりも「マメ」だったのねw
毎回、驚いてますわ。

こちらも更新しないとレッドデータになりそう……
| きのこ堂  ちば! | 2017/09/30 2:17 AM |
キンチャクタケ
私も見つけて自慢したいなぁ(*´∀`)♪

まねき屋さんの文章は キノコに対する愛情がそこここに感じられて嬉しくなります。
| yuuko | 2017/09/30 8:54 AM |

>>きのこ堂さん
女性に対してはシャイなのであまりまマメは出来無い分、
キノコにはマメにしようかとw

キノコ堂blogは絶滅寸前!?
国に保護して貰わなくてはw
| まねき屋 | 2017/09/30 9:05 PM |

>>yuukoさん
有難う御座居ますー(_ _*)ゞ ポリポリ

キノコの形にしても生態にしても、
一々が愛おしくなってしまいますねー♪
| まねき屋 | 2017/09/30 9:05 PM |
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