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<< 黄足 | main | 反省と言い訳 >>
花鑢

※記事中のキノコはハナヤスリタケでは無く、
 タンポタケモドキでは無いか、とのご指摘を頂きました。
 検討し直したところ、タンポタケモドキであると判明しました。
 当記事は植物のハナヤスリと工具のヤスリを中心にした内容の為、
 全面的な書き換えは出来ませんので
 記事中はハナヤスリタケの記述のままとしますが
 実際にはハナヤスリタケでは無く、タンポタケモドキです。
 その点お含みの上、お読み頂けます様、お願い申し上げます。

 

 

6月末のこと。

ヤマドリタケモドキを求めて何時ものシロを徘徊していた。
かなりの不猟で諦めて帰り掛けた所、こんな物に遭遇。

sepe-akymdr200930 (2).JPG

ヒポミケス菌に寄生されたキノコだ。

その手のは今までに結構な数を撮影している。Hypomyces菌まとめ→こちら
なので一度は「あぁ、あれね・・・・・・」と通り過ぎてしまった。

 

だが、全てのキノコは一期一会。
このヒポミケス菌罹患キノコも今この時でないと撮影出来無い。
なので、せっかくなら、と少し戻って撮影する事に。
時期的にホストはアカヤマドリの可能性が高い。
だとしたらヒポミケス菌に罹患したアカヤマドリは多分初遭遇。

 

撮影しようと近づくと、キノコにユミアシキマワリ?が
陣取っているのが判った。

sepe-akymdr200930 (3).JPG

sepe-akymdr200930 (1).JPG

これはこれで面白い。


良い絵が撮れたなぁ、と満足してふと周りに目をやる。
と、こんな物が目に付いた。

hnysrtk180930 (1).JPG

ぱっと見はマメザヤタケだと思った。

 

マメザヤタケは枯れ木に発生するキノコだ。

本来、広葉樹の枯れ木に発生するのだが

これは孟宗竹の古い切り株に発生していた物。

 

その外見から「死者の指」の異名を持つ。
東大阪時代は普通に目にしていたのだが名古屋転居後は未遭遇。
世界的に分布している種類の木材腐朽菌でも

地域差が結構あるのだなぁ。

 

そのマメザヤタケに名古屋で初遭遇か!?
だが、どうも雰囲気が違う様子。
試しに一つ手に取ってみる。

hnysrtk180930 (2).JPG

マメザヤタケとは違うなぁ。
あれ?これは!?
これはひょっとしてハナヤスリタケ?

 

ハナヤスリタケは冬虫夏草の仲間だが
昆虫ではなく地下生菌のツチダンゴに寄生する、と言う菌寄生菌だ。
だとしたら初遭遇。
これは是非掘り出したい。

 

で、出てきた物がこれ。

hnysrtk180930 (3).JPG

hnysrtk180930 (4).JPG

hnysrtk180930 (5).JPG

思わぬ初遭遇に興奮してしまい
掘り出し前の状況や、掘り出し中の様子を
撮影するのをすっかり忘れてしまっていたよ・・・・・・

 

帰宅後、泥をクリーニング。

hnysrtk180930 (12).JPG

hnysrtk180930 (11).JPG

hnysrtk180930 (10).JPG

hnysrtk180930 (7).JPG

hnysrtk180930 (6).JPG

ホストのツチダンゴが思いの外大きかった。
団子状では無く、靴みたいな形だしw

にしても中々立派だ。

 

図鑑やwebで画像を見ると地上部とツチダンゴの繋ぎ目が

細い物が多い様で「掘り取りに注意を要する」とあったが

今回の個体は幸い頑丈だったので

当方の雑なやり方でも綺麗に掘り取れて良かった。

hnysrtk180930 (9).JPG

ホストのツチダンゴが大きかったので

栄養が十二分だったからかな。

 

 

上にも書いたがキノコの中には「地下生菌」と言う物がある。
地下で発生し、成熟すると匂いを発し
その匂いに誘われた昆虫や小動物に食べられる事によって
胞子を飛散して貰う、と言う生態を持つ。
高級キノコのトリュフもその一つで
何しろ地下に発生する為に発見するのが難しい。

 

トリュフ探しの場合は訓練された犬や豚に

匂いを嗅ぎつけさせて見付けるのだが
日本ではその様な犬や豚はまず居ないので
ありそうな場所を人手で探すしかない。
当方もトリュフの探索はしているのだが今の所発見には至っていない。

 

で、今回のツチダンゴ。
これは食用キノコで無い為にツチダンゴをわざわざ探す人はまず居ない。
だが、ハナヤスリタケの様にツチダンゴに寄生して
子実体を発生させるキノコが複数種ある為に
それによって「此処にツチダンゴがあったのだ」と
結果的に見付かる事が多い。

 

地下生菌はとにかく見付け難い為に研究があまり進んでいないらしい。
だが、それでも近年は多くの新種が発見され
分類も進んで来ている、との事。

 

何回も書くが、地下生菌は地下に発生するために発見するのが難しい。

だが、発見するのが難しいだけで、
実はそこら中に発生して居るかも知れないのだ。
実際、当方が数え切れないほど通っていた道路脇に
こうやって発生して居たんだもんなぁ・・・・・・

 

それにしても、意外な場所にあったもんだ。
緑地の辺縁部とはいえ、結構な交通量のある道路の
歩道脇の植え込みだもんなぁ。

hnysrtk180930 (13).JPG
まさかこんな所にあるなんて予想もしていなかったよ。
正にキノコは神出鬼没。
ほんと、キノコは侮れないよなぁ。

 

 

 

以下は蛇足の話。

 

所でこのキノコ、ハナヤスリタケと言うのだが
そもそも「ハナヤスリ」って、何?

 

調べたところ、どうやら「ハナヤスリ」という植物が由来らしい。

ex-hnysr (6).jpg

        rsytw766さんの山野草図鑑歳時記3 より引用

ハナヤスリはシダ植物の一種で
ハナヤスリ目ハナヤスリ科と言う
世界でも70種程の小さな一群を形成している、との事。

 

多くのシダ植物は所謂「シダ状」の葉の裏に胞子嚢を形成するが
ハナヤスリは大きな一枚葉が茎を包むように開き、
その茎の先端に胞子嚢を形成する、と言う点が大きく異なる。
その為、一見すると普通の植物の様で
胞子嚢も花のつぼみの様にも見える。

ex-hnysr (7).jpg

                   (同上)
知らなければそれがシダの仲間だとはとても思えないだろう。

 

で、茎の先端の胞子嚢が並んでいる状態が
まるで工具のヤスリの様だ、と言う事で
「花鑢(ハナヤスリ)」と命名された由。

 

所で当方は昔、金属工芸に携わっていた時期がある。
金属の加工にはヤスリが欠かせない。
で、多くのヤスリはこの様な形をしている。

ex-hnysr (4).jpg

                     丸半金物.com より引用

ハナヤスリとはかなり違う形状だ。

 

実はハナヤスリの様な形のヤスリもあるにはある。
それがこちら。

ex-hnysr (3).jpg

               切削工具製造 株式会社オリエント より引用

ex-hnysr (2).jpg

               彫金工具資材専門店CAST HAUSE より引用

「コテヤスリ」と言う工具だ。

通常のヤスリと違い、凹んだ曲線部や
細かい部分を研磨する時に使用される特殊工具だ。

 

更にハナヤスリのヤスリ目は平行線の縞状で
普通のヤスリ目とは異なっている。

実は縞状のヤスリ目、と言うのもあるが
それは仕上げや繊細な研磨に使用される「単目」と言われる特殊なヤスリだ。

更に断面を考えると「丸」でも「角」でも「平」でも無いだろう。
恐らく「楕円」が形としては近いだろう。

ex-hnysr (5).jpg

                      コトバンク より引用

 

なので、ハナヤスリの胞子嚢部分を簡単に「ヤスリ」に例えるのは
金属加工の経験者からするとあまりにも大雑把でどうにも頷き難い。
より正確に例えるとしたら
「ハナダエンタンメコテヤスリ(花楕円単目鏝鑢)」とするべきか。
まぁ、門外漢がこんな事を言っても仕方無いのだけど。


所で実は、ヤスリよりもっと近い形の物がある。
それがこちら。

ex-hnysr (1).jpg

             ニトリのステンレスウロコ取り

魚のウロコ取りだw
ハナヤスリの命名者がこのウロコ取りの事を知っていたら
「ハナウロコトリ」となっていたかも知れないよなぁ。
まぁ、殆どの学者は男性だからウロコ取りの存在自体知らなかったかもね。


さて、植物のハナヤスリはまぁ、良いとしよう。
だが問題はハナヤスリタケだ。
植物のハナヤスリは百歩譲って「花鑢」だとしよう。
だが、ハナヤスリタケの子実体はヤスリには見えない。

hnysrtk180930 (8).JPG

そもそもがヤスリ的要素が全く無いし。

これは幾ら何でも「ヤスリ」とは呼びたくないなぁ。


当方にはマッチの先端か、綿棒にしか見えないよ。

ex-hnysr (8).jpg

                            ピクト缶フリー素材の画像

ex-hnysr (9).jpg

                    フリー素材ドットコムの画像

 

もしくはキリコのマネキンか。

ex-hnysr (10).jpg

     MUSEY「不安を与えるミューズ達」より引用

 

だからと言って「マッチタケ」「メンボウタケ」
「キリコノマネキンタケ」の命名が良いとは思わないけれど。
今更変えられないし、当方にはその権限がある訳も無いしね。


そもそも植物のハナヤスリ自体が知名度の低い植物だ。
何故そんな物を当て嵌めてしまったのだろうなぁ。
それが風流もしくは風雅と思ったのかなぁ。
勿論、今となっては知り様も無い。

 


「ハナヤスリタケ」と言う種名に
こんな悶々とした思いを抱えているのは
世界中でも当方だけだろうなぁ。

これからもハナヤスリタケを見付けたいとは思うよ。
見付ける度に悶々とするのだろうけど・・・・・・

 

 

※続編があります。併わせてお読み下さい→こちら

 


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| 子嚢菌類 | 00:04 | comments(4) | trackbacks(0) | pookmark |
コメント
まぁた、んな気色が悪いモノ採って来て!
終いにゃ訳解らん工具や絵まで持ち出して!

って、ママが怒っていそうw
| きのこ堂  ちば! | 2018/09/30 5:08 AM |

>>きのこ堂 ちば!さん
ママが怖いのでこっそり保管しています・・・・・・

(∩;゚皿゚)ヒイィィィッッッ!
| まねき屋 | 2018/09/30 5:42 PM |
興味深く拝見しました。
写真の菌生冬虫夏草はハナヤスリタケではなくタンポタケモドキのように見えます。

ハナヤスリタケは愛知県では春に発生(冬に発生し始め、4月から5月に成熟)するのが
普通で、地中部は写真の個体のように白色を呈することはなく、黄色で部分的にオレンジ色
となります。

タンポタケモドキは直根状にツチダンゴから生じることが多いですが、土質やツチダンゴの
深さによっては細根状に分岐します。地中部は白色を呈し、オレンジ色に染まることは
ありません。こちらは成熟する時期が6月上旬から7月上旬です。

なお、タンポタケモドキは愛知県内で大正時代に梅村甚太郎氏によって採集されたのが最初で、
その標本をもとにアメリカのLloydが新種として発表しました。昔はヤマトタンポタケという
和名で呼ばれていましたが、小林義雄博士が和名を変更したようです。
ヤマトタンポタケについては下記リンクの文献に梅村が述べています。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/965177?tocOpened=1
また、下記論文にあるように、かつて愛知県の天然記念物に指定されていました。
http://jats-truffles.org/wp-content/uploads/truffology/vol_1/T2017-3_Yamamoto&Orihara.pdf

なお、一つ目の文献中にハナヤスリタケも登場しますが、ツクツクボウシの幼虫に生じるとあります。
実はこの「ハナヤスリタケ」は、のちにウメムラセミタケとして新種記載されました。
| K.Y | 2018/10/01 11:02 AM |
 
>>K.Yさん
詳細で丁寧なご指摘有難う御座居ました。

実は当方もどちらかかなり悩みまして、ハナヤスリタケと結論付けたのですが
細根の方に目を奪われてしまい、柄の基部の色彩を見落としてしまっていました。
タンポタケモドキもこの様な発生の仕方をする事があるのですね。
とても勉強になりました。

内容的に記事の全面改正は出来ませんので、冒頭部に注意書きを加えました。
本当にどうも有難う御座居ました。
| まねき屋 | 2018/10/01 2:01 PM |
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