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反省と言い訳

当blogでは当方が採取したり
遭遇したキノコを題材に記事を書いているが
今回はまだ遭遇も採取もしていないキノコの事を

取り上げるのをご容赦願いたい。

 


さて前回、地下生菌に寄生するキノコの事を書いた。
それを当方は「ハナヤスリタケ」と同定し、
「何故ハナヤスリタケと言うのか」から
命名に対してイチャモンを付ける

展開の記事にした(→こちら)。

所が、コメントで「これはハナヤスリタケではなく
タンポタケモドキではないのか?」とご指摘を頂き
当方の同定が間違いである事が判った。


今更の言い訳だが、実を言うと当方もこのキノコが
ハナヤスリタケなのかタンポタケモドキなのかには
かなり迷った。
自分なりに検討し、ハナヤスリタケだとしたのだが
それが間違いだった、と言う訳だ。

 

だが記事内容は、そのキノコが
「ハナヤスリタケ」である事が前提だったため
全面的に書き換える事が不可能で
かと言って記事を削除するのもアレだったので

記事冒頭に「これはハナヤスリタケではなく
タンポタケモドキだ」との一文を加え
その上でこの記事を読んで欲しい、と
但し書きをしなければならない羽目となった。

 

これは実に恥ずかしい。
普段、偉そうに記事を書き
誰かに「このキノコが何か教えて欲しい」と言われたら
「このキノコを見分けるポイントは云々」と
偉そうに言っていたのに、この体たらく。
全く持って恥ずかしい事この上ない。
そこで、何故間違えてしまったのかを検証し
当blogを読んで下さっている皆様にも
当方と同じ間違いをしない様に注意をしていただければ、と
反省と自戒を込めて以下書いていく次第。

書いている内に思いの外長くなってしまったのはお許しの程。

 


前回、当方が間違ってしまったキノコはこちら。

hnysrtk180930 (1).JPG

hnysrtk180930 (11).JPG

これを当方はハナヤスリタケだと思ってしまった。

 

で、典型的なハナヤスリタケがこちら。

                 迷写真館ねいちゃーさんのサイトから引用
柄が細く、こまかくなって繋がっている。

 

 

そして典型的なタンポタケモドキがこちら。

                    遊々きのこさんのサイトから引用

寄主のツチダンゴからいきなり生えている。

 

こうやって見ると当方が掘り出したキノコは
タンポタケモドキとしてはかなり異例の発生の仕方だ。
なので混乱し、間違ってしまったのだ。


そもそもがハナヤスリタケの掲載されている図鑑は

はっきり言って多くない。
そして、タンポタケモドキの掲載されている図鑑は
更に少ない。
それはweb上でも同様で、とにかく情報が少ない。
その少ない情報の中でも
掘り出した状態を撮影していない画像も多い。
つまり地上部分だけの画像が多いのだ。
その少ない情報を元に同定しようとした場合
発生の仕方が典型的でないと
どうしても判断が難しくなってしまう。

 

以下、図鑑から引用。

 

まずはハナヤスリタケ。

こちらは『カラー版 冬虫夏草図鑑』家の光協会刊より。

hnysrtk-01.jpg

「地際から地中の柄は細分岐。

 この部分が朱色を帯びるのがいちじるしい特徴である」とある。

 

こちらは『山渓カラ―名鑑 日本のきのこ』山と渓谷社刊より。

地中部への言及は無し。

 

こちらは『京都のキノコ図鑑』京都新聞社刊より。

hnysrtk-02.jpg

「地中は柄が黄色で著しく細かく枝分かれの根状柄となり(略)」

とあるが、掘り出した画像は無し。

 

こちらは『原色日本菌類図鑑』保育社刊より。

hnysrtk-03.jpg

「基部は根に分かれて寄生体と連なる」とあるが

画像ではそう見えない。

 

こちらは『山渓fieldbooksきのこ』山と渓谷社刊より。

hnysrtk-04.jpg

「地下部は細根状で橙黄色」とある。

 

こちらは『青森県のきのこ』東奥日報社刊より。

hnysrtk-05.jpg

「基部は急に細まり、橙黄褐色で分岐し、

 地中のツチダンゴと連なっている」との文章のみ。

 

 

こちらは『続 北海道のキノコ』北海道新聞社刊より。

hnysrtk-07.jpg

地中部への言及は無し。

 

以下2件は『冬虫夏草生態図鑑』誠文堂新光社刊より。

hnysrtk-08.jpg

hnysrtk-09.jpg

「地中部は細根状に分岐し、黄褐色から朱色」とある。

 

 

そしてタンポタケモドキ。

こちらは『カラー版 冬虫夏草図鑑』家の光協会刊より。

tnptkmdk-01.jpg

「基部は白色。直根状に寄主とつらなる。」とある。

だが、典型的な発生状態とは言えない画像だ。

 

こちらは『山渓fieldbooksきのこ』山と渓谷社刊より。
tnptkmdk-03.jpg

「基部は白色。直根状に寄主とつらなる。」との事。

 

こちらは『カラー版きのこ 見分け方・食べ方』家の光協会刊より。

「基部は寄主のツチダンゴに直結する」とある。

今回気付いたのだが、この画像は

上掲の『山渓fieldbooksきのこ』の画像の個体を

掘り出した状態の物の様だ。

 

こちらは『岩手・青森のきのこ500種』トリョーコム刊より。

tnptkmdk-02.jpg

「柄は細長く黄色味を帯びる」との事。

 

こちらは『信州のキノコ』信濃毎日新聞社刊より。

tnptkmdk-04.jpg

地中部への言及は無し。

 

こちらは『山渓カラ―名鑑 日本のきのこ』山と渓谷社刊より。

tnptkmdk-05.jpg

地中部への言及は無し。

 

こちらは『冬虫夏草生態図鑑』誠文堂新光社刊より。

tnptkmdk-06.jpg

この画像の他に『山渓カラ―名鑑 日本のきのこ』と

同じ画像も掲載されている。

「宿主から直生」との事。

 

 

 

以上、ズラズラと図鑑の画像を列挙。

「掲載されている図鑑は多くない」と書いたが

掲載されている図鑑は幾つもあった。

とは言え、マツタケやヒラタケの様に

どの図鑑にも必ず載っていると言う訳では無い。

矢張りマイナーなキノコと言う点は間違い無いだろう。

 

因みに当方が調べられた範囲では他に

 『標準原色図鑑全集14 菌類』保育社刊

 『冬虫夏草ハンドブック』文一総合出版刊

 『阿寒国立公園のキノコ』前田一歩財団刊

 『青森県産きのこ図鑑』アクセス21出版

 『北国のキノコ』トリョーコム刊

があったが省略。

 

 

上掲画像を見ても判る様に、図鑑によって

掲載されている物の様子はかなり差異がある。

色々な図鑑を調べると余計に混乱してしまいそうだ。

なので当方が採取したキノコはどっちにも見えてしまう。

hnysrtk180930 (10).JPG

これは間違ってしまうよなぁ。

ボク、ワルクナイモン!


で、コメントで指摘されたのが
「地中部は白色を呈し、オレンジ色に染まることはありません」

と言う点。


掘り出した直後の画像で見ると確かに地下にあった部分は白い。

hnysrtk180930 (5).JPG
これがこのキノコがハナヤスリタケでは無く
タンポタケモドキである根拠である、との事。

確かに「基部は白色」と書かれている図鑑はあった。

 

そして、数時間経って帰宅し

クリーニングした時には地中の根状の部分と同じ

橙黄色に変色してしまっていた。

hnysrtk180930 (7).JPG

その時は単に「あぁ、変色したんだなぁ」としか思っていなかった。

そして、柄が橙黄色だったので

このキノコはハナヤスリタケだと判断したのだ。

 

キノコの観察において、採取直後の色合いの記録は重要だ、と言われている。
それはこの様に空気に晒されることによって

変色してしまう事があるからだが、
掘り出した直後の柄の状態が
ハナヤスリタケかタンポタケモドキかの同定をするに当たって
そんなに重要な要素になるなんて思いもしなかったよ。

「地下部分は白いが変色する」と言うのは
どの図鑑にも書かれていなかったしなぁ。

 

所で実は図鑑にも重要な一文があった。

『信州のキノコ』のタンポタケモドキの解説文に
「ハナヤスリタケは本種に似るが、頭部付近の粒子が大きい」

との記述があったのだ。

そして『カラー版 冬虫夏草図鑑』の画像でも

子実体の質感に関して

の様に描き分けられていたのだ。

これはまさに『信州のキノコ』の記述通りだ。

 

これも実は同定に迷っていた点の一つ。

図鑑やwebのハナヤスリタケは確かに粒子が大きく

当方が採取した物は粒子が細かかったのだ。

だが、図鑑でもwebでも質感は色々だった。

タンポタケモドキとされている物でも

粒子が大きく見える物が幾つもあるのだ。

その点でもとても悩んでしまった。

各々の粒子の大きさの差異が個体差の範囲なのか、

実は両種が混同されているのかは当方には判らない。

 

 

取り敢えず、もっと色々な情報を仕入れて
勉強しておかないとなぁ。
こうやって偉そうにキノコblogを書いている以上、
それはもっと心して置かないとならないよなぁ。

 

因みに、色々検索したところ
当方の他にもハナヤスリタケとして掲載した後に
「タンポタケモドキに訂正」としていたblogがあった。
やはり紛らわしい発生の仕方をしやすいのかも知れないなぁ。

 

 

 

以下は蛇足の話。

 

所で、「タンポタケモドキ」と言うからには
「モドキ」じゃないキノコもある筈だ。
それがこちら、タンポタケ。

                 Wild Mushrooms From Tokyoさんのサイトより引用

 

タンポタケとタンポタケモドキの外見的な違いは子実体の形。

丸いか細長いか、で判別出来る。

どちらも寄主のツチダンゴからニョキッと生えている。

 

ハナヤスリタケについては
「何故ハナヤスリタケなのか?」について追求した。
では、タンポタケは何故「タンポタケ」なのだろうか。

 

タンポタケのタンポは
「タンポ」と言う道具から来ている様だ。
そして「タンポ」と言われる物には何種類かある。

一つはタンポ槍。

tanpo4.jpg

tanpo5.jpg

                    チームアズラさんのサイト「武器ペディア」より引用
棒の先を布で巻いて安全性に考慮した練習用の槍だ。

 

更に、拓本用の道具のタンポ。

tanpo1.jpg

                     武蔵野美術大学さんのサイト 造形ファイルより引用


拓本とは石碑などの文字や文様を和紙に写し取る技術で
湿らせた和紙を写し取る対象の凹凸に馴染ませ、
そこに墨を乗せる際に使用される。

tkhn.jpg

                        天来書院さんのサイトより引用

 

そして刀剣の手入れに使用されるタンポ。

tanpo2.jpg

                            勝山剣光堂さんのサイトより引用
刀剣を保管する際には錆を防ぐ為に
表面に丁子(チョウジ)油を塗布するのだが
丁子油は古くなると却って刀身に取ってよろしくないので
時々塗り代える必要がある。
古くなった丁子油を除去する為には

砥石の微粉末を刀身に振りかけ布や和紙で拭い取る、

と言う作業が必要で、その際に使用されるのがタンポだ。

砥石の微粉末を布で包んだ物で刀身を軽く叩く事によって

適量の粉を振りかける為の道具で、
時代劇などで良く見る、刀をポンポン叩いているシーンの、あれだ。

tanpo3.jpg

                        「人生の中の日本刀」さんのサイトより引用

因みに、正式にはこれは「タンポ」では無く「打ち粉」と言う、との事。

 

 

思うに、タンポタケのタンポは
槍や拓本のでは無く、刀剣手入れ用のそれなのだろう。
タンポタケの命名は『日本産菌類集覧』によると

日本菌類学の先駆者、川村清一によるとの事。

だが、正確な命名年は不明の様だ。

 

川村清一の生没年は1881〜1946との事なので

命名されたのは戦前なのは確実だろう。

当方はあくまでも聞いた話でしかないが

当時は好戦気分は鼓舞する為に「武士道」が称揚されていたと言う。

武士には刀剣は欠かせない。

そして軍人と刀剣の関係も深い。

 

実は当方の祖父と大伯父は陸軍の将校だった為、

実家には軍刀があった。

軍刀は刃の付いていない模擬刀とは言え、手入れの道具も揃っていた。

子供の頃、遊びで軍刀にタンポをぽんぽん、と

時代劇を真似て良くやっていた物だ。

なので、当方はタンポに馴染があった為、

タンポタケの名には何の疑問も持たなかった。

 

命名時の時代状況と言い

当時すでに高齢であったろう命名者の状況と言い
棒状の物の先端に丸い物のある形状を見た時に
真っ先に浮かぶのが刀剣手入れ用のタンポだったであろう事は

想像に難くない。

むしろ当然と言えよう。

 

ただ、今の時代に「タンポ」と言って
それが何を指しているかを解説無しで
理解できる人がどれくらいいるのだろう。
タンポを日常的に見る機会なんてまず無いもんなぁ。


もしタンポタケの命名者が

音楽家だったら「モッキンノバチタケ」、

又はその品名の「マレット」から「マレットタケ」に、

mallet.jpg

                        musics .percussion さんのサイトり引用


報道や放送関係者だったら「マイクタケ」に

                  パナソニックさんのサイトより引用


ボードゲーム好きの人だったら
「ジンセイゲームノコマタケ」なっていたかも知れないよなぁ。

                   タカラトミーさんのサイトより引用

 


現代にこのキノコが新種として命名されるとしたら
何になるのか想像も付かないが
少なくとも「タンポタケ」にはならないのでは無いだろうか。
キノコの命名には時代背景が大きく影響しているのだなぁ。

 


取り敢えず、行く行くはちゃんとハナヤスリタケを採取したいな、と。
タンポタケモドキもちゃんと

「これはタンポタケモドキだ!」と認識した上で採取したいな、と。
そしてタンポタケも採取したいな、と。
勿論、それ以外のキノコも当然そうなのだけど。

 

今後もフィールド探索は続けていく予定。

 

 

 

 

※おまけ

こちらは『北陸のきのこ図鑑』橋本確文堂刊より。

tnptkmdk-07.jpg

タンポタケモドキとあるが、この画像の物は

どうしてもエリアシタンポタケに見えてしまうのだが

どうなのだろうかなぁ・・・・・・

 

 

 


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| 子嚢菌類 | 19:30 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
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コメント

はやく、こっちの世界へ戻って来いよ……w
| きのこ堂  ちば! | 2018/11/01 8:24 PM |
  
>>きのこ堂 ちば!さん
こっちと言うのがちば!さんの世界なら行きたくない・・・・・・

(∩;゚皿゚)ヒイィィィッッッ!
| まねき屋 | 2018/11/02 2:03 PM |
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