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<< 赤団子を求めて 番外篇その3 | main | 2019名古屋ヤマドリタケモドキ事情 >>
キヌガサタケの事

ある日の事。
悪魔の囁きを聞いた。

 


「キヌガサタケが生えて来てるよ・・・・・・」

 


キヌガサタケは「キノコの女王」と言われるとても華やかなキノコだ。
当方、実はキヌガサタケを実見した事が無い。
キヌガサタケは孟宗竹の竹林に発生する、と言う独自の生態を持つ。
だが、当方の行動範囲には孟宗竹の大きな竹林が見当たらない為に
今まで見る機会が無かったのだ。
なので一度は見てみたい、憧れのキノコの一つだったのだ。

 


「キヌガサタケが生えて来てるよ・・・・・・」

 


そのキヌガサタケが生えているのを
見に行かないか、とキノコメイトから誘惑されてしまったのだ。
その場所は京都府南部、との事で
当方在住の名古屋からはかなり遠い。
行こうと思ったら新幹線を使うにしてもかなり早起きしなければならない。
だが、今のこの時期に行かないと見れない。
当方の周辺で生えている環境を今シーズン中に見付けられる保証も無い。

 


「キヌガサタケが生えて来てるよ・・・・・・」

 


キヌガサタケは見たいなぁ。
でもその場所は何分遠いしなぁ。
相当早起きしないと行けないしなぁ。
交通費もかなり掛かるしなぁ。
どうしようかなあ・・・・・・

 


「キヌガサタケが生えて来てるよ・・・・・・」

 

「キヌガサタケが生えて来てるよ・・・・・・」

 

「キヌガサタケが生えて来てるよ・・・・・・」

 


( ・o・)ハッ! と気が付くと
当方は某所の竹林内に立っていた。
つい、悪魔の誘惑に負けてしまったのだ。
事ほど左様にキヌガサタケの魔力は恐ろしい。

そして目に飛び込んで来たのはこんな光景。

kngstk (0).JPG

kngstk (1).JPG

これが憧れのキノコの女王、キヌガサタケだ。

キヌガサタケはご覧の様に大きなレースのマントが特徴的なキノコ。

なので、キノコを擬人化した際には

キヌガサタケはほぼ100%女性として描かれる。

 

その竹林にはキヌガサタケがそこここに生えていた。

kngstk (2).JPG

 

上から見るとこんな感じ。

kngstk (9).JPG

全く不思議な、そして綺麗な形だよなぁ。

 

それにしても本当にいきなりこんなのが竹林の中にあるんだもんなぁ。
これがキノコだと判っていてもびっくりしてしまうよ。
まして、キヌガサタケの事を知らない人がいきなりこれに遭遇したら

怖いとか気持ち悪いとか思っても仕方無いだろうなぁ。

 

こちらは新鮮な個体と、朽ち果てた個体。

kngstk (3).JPG

朽ち果てた方は柄以外が綺麗に無くなっている。

 

こちらの古い個体はレース部分のみが無くなっている。

kngstk (4).JPG

上部にほんの少し残骸が残っている点から見ると

多分、虫やナメクジなどに食べ尽くされたのだろうなぁ。

レース部分は柔らかくて食べやすいのだろうなぁ。

 

こちらは卵(幼菌)の状態。

kngstk (5).JPG

知らなければ爬虫類の卵にしか見えないよなぁ。

 

こちらの卵は孵化?直前なのだろう。

kngstk (6).JPG

外皮が薄くなってキノコ本体の頭頂部が透けて見えている。

 

こちらは頭部を取り去った状態。

kngstk (7).jpg

これを乾燥させた物が中華料理の高級食材、

「竹孫(ツーソン・本字は竹冠に孫)」だ。

頭部が外してある理由は後述。

一度だけ食べた事があるが

ふわふわシャクシャクとした歯触りが何とも言えず

如何にも高級食材!と言う感じだった。

 

所でそのマント部分、軸の長さに対応して

裾がちょうど地面に着く様な長さになっているので

卵の上に枯葉が思いもよらず厚く積もっていたりすると

この様にスカートを引き摺る様な状態になってしまう事もある。

kngstk (11).JPG

 

何か障害物があるとこんなスカートをめくられたみたいな状態に。

kngstk (8).JPG

 

斜めに生えるとマントも偏った状態になってしまう。

kngstk (13).JPG

何か、とても残念な感じだ。

 

折角ならこんな風に綺麗に開いてほしい所だよなぁ。

kngstk (1).JPG

 

さて、このキヌガサタケ。

暗緑色の頭頂部の笠とそれを支える軸(柄)、

そしてレースマント部分(菌網)からなる。

笠の暗緑色部分は胞子を形成する組織(グレバ)で

成熟すると胞子を含んだゲル状になり

これが強烈な悪臭(モロにウ●コ臭)を放つ。

それに誘われたハエにゲルを舐め取らせる事により

胞子を拡散させるのだ。

 

こちらの画像で、笠の暗緑色部分が無くなり

白い地が見えているのはグレバが全てハエに舐め取られたからなのだろう。

kngstk (4).JPG

そのハエ達によって胞子が撒かれた事により

また来年キヌガサタケが生えて来てくれるのだろうなぁ。

 

キヌガサタケを食材にする為には

悪臭のグレバが本体に付かない様に

慎重に取り外さなければならない。

この画像で傘部分が丁寧に取り外されていたのはそれが理由。

kngstk (7).jpg

竹孫は高級食材とは言え、中国や香港では

大袋にガサッと入れられた普及品も売られているのだが

そう言う物はややウ●コ臭がしてたりしている。

多分、グレバの取り外しの際の扱いが雑なのだろうなぁ。

だからこそ一袋ナンボの安価で売られているのだろうけど。

 


竹林の少し奥に行くと
近縁種のアカダマキヌガサタケも生えていた。

akdm (1).JPG

 

アカダマキヌガサタケは卵の部分が暗赤色なのが特徴。

akdm (10).JPG

akdm (5).JPG

 

中にはこんなにアカダマの卵が密集している場所も。

akdm (6).JPG

これが全部開いたらさぞ壮観だったのだろうなぁ。

 

こちらは萎れて倒れた個体。

akdm (7).JPG

この個体にはまだ結構グレバが残っているなぁ。

志半ばで倒れた、感じがしてちょっと寂しい。

 

 

因みにキヌガサタケのグレバはウ●コ臭がするが
アカダマキヌガサタケは臭くない、と言う。

そうなのかぁ、と思って実際にニオイを嗅いでみたら
やはり異様なニオイがする。
当方はそのニオイを
「野菜や大きなキノコが古くなって腐って溶けた時のニオイ」と感じた。
ウ●コ臭とは違うが、それもハエ等をおびき寄せる種類のニオイだ。

 

実際、撮影していた時も

グレバ部分にショウジョウバエがたかっていた。

akdm (8).JPG

矢印を付けてみたが判り難い・・・・・・

 

また、別の個体には撮影中ゴキがやって来た。

akdm (9).JPG

これが、臭気に引き寄せられたからのか、
たまたまなのかは不明。

 

 

所でこのキヌガサタケのレースマントの部分。

何故この様な構造の物があるのかは実は良く判っていないと言う。

グレバはハエ等を呼び寄せ、舐め取らせる為に臭気を放っているが

歩いて来る虫を登らせる為にマントがあるのだ、と言う説もある由。

だが、アカダマキヌガサタケのマントはキヌガサタケと比べると短く

地面には接して居ない様だ。

また、雑木林に発生する近縁種のマクキヌガサタケは

アカダマ以上にマントが短く、完全に宙に浮いている(→こちら)。

また、別の近縁種のスッポンタケにはマントが完全に無い(→こちら)。

そうなると益々マントに意味が判らないなぁ。

 

因みに、色々画像検索をして見ているとマントの短い種類は

マントの長い種類に比べると圧倒的に少ない。

それはビジュアル的な問題で

ネット上にアップされているマントの短い種類の画像が少ない、

と言う事もあるのかも知れないが、

ひょっとしたら進化の最終形として長いマントがあり、

短いマントはその途上にある、と言う事なのかも知れない。

ま、これは当方の勝手な想像なのだけど。

 

 

所で日本には他に全体に黄色いウスキキヌガサタケがある(→こちら)。

世界に目を向けるとマントが赤みを帯びた物(→こちら)や

緑色を帯びた物もあるのだとか(ネットでチラッと見た話なので

実在するかどうかは不明、画像は見付けられず)。

中にはこんな変わった形になる物もある由(→こちら)。

本当にキノコは思いもよらない物があるよなぁ。

 

 

因みにキヌガサタケとは「衣笠(絹笠)の様なキノコ」の意。

衣笠とは貴人が外出する際に

付き人が後ろから差し掛け長柄の傘の事(→こちら)。

とても優美な名前だよなぁ。

余談だが「衣笠」で検索すると「衣笠祥雄」ばかり出て来るのが閉口物だった・・・・・・

そして別名は虚無僧タケ、シケダケとの事。


虚無僧タケは、マント部分の形態から来た名称。

虚無僧は臨済宗の一派・普化宗の修行僧が托鉢行脚をする際の扮装で

その際に頭に被る籠状の深編み笠に

キヌガサタケのマントを見立てた物だ。

  いらすとやフリー素材より引用

 

シケダケは「湿気タケ」の意味で、
湿気の多い梅雨時に発生するからと言うのだが
当方はそれを「師家タケ」では無いか、と考えていた。

「師家(シケ、シイケ)」とは「師匠」の意味で
宗教の分野では修行の指導をしてくれる先生。先達を指す。
そして、尊崇の念を込めて「お師家さん(オシケサン)」と呼ぶ。
虚無僧姿の宗教者を「師家」と呼ぶ地域、または時代があり
そこから「師家タケ」と呼ぶ様になったのでは、と考えたのだ。

 

だが、この日は雨上がりと言う事もあり物凄い湿気だった。
不快指数は個人的には完全に100%。

時としてメガネが曇ってしまう程だった。
やはり「シケダケ」は「湿気タケ」なのかなぁ、と実感した次第。

 

 

 

 

さて、折角なので卵を幾つか持ち帰ってみた。

akdm (2).JPG

 

試しに一つを分解してみる。

akdm-bunkai (1).JPG

 

まずは真っ二つに。

akdm-bunkai (2).JPG

 

グレバの部分の内側に軸とレースに当たる部分が
圧縮されて収まっているのが見て取れる。

akdm-bunkai (3).JPG

 

陰影を強調してみた。

akdm-bunkai (3) のコピー.jpg

笠(グレバ)部分の内側に

柄とマントの組織が見えるのが判るだろうか。

このキノコの場合、卵が割れて伸びるのは
所謂「成長する」と言うより
圧縮されていた状態の物が伸長し展開する、と言うのが正しいのだろう。

 

 

更に分解。
卵の外皮部分と中身を剥がす。

akdm-bunkai (4).JPG

akdm-bunkai (5).JPG

 

柄の根元部分の保護膜?を剥がす。

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akdm-bunkai (7).JPG

 

グレバ部分を外す。

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グレバ部分の内側にマントが綺麗に収まっていた。

 

笠の内側がなんだか綺麗。

akdm-bunkai (9).JPG

キノコとしてはこのグレバの所だけが
胞子を形成する点で必要な部分な訳で
軸もマントも必要不可欠とは言えないオマケみたいな物になるのだが
それでもわざわざ軸とマントを形成しなければならない理由が
このキヌガサタケ達にはあるのだろうなぁ。

謎だ・・・・・・

 

 

さて、別の卵は育ててみる事にした。

akdm-seichou (1).JPG

たっぷり水を含ませたミズゴケに埋めて観察する事に。

毎日観察していたのだが中々変化は現れず。

 

と、育て始めて5日目の朝。

いきなり卵が割れて本体が伸び出していた。

akdm-seichou (2).JPG

 

2時間後、マントが伸び始めて来た。

akdm-seichou (3).JPG

これからの展開がワクワク♪

 

だが当方、基本的に在宅で仕事をしているのだが

この日は出掛けなければならない日だった。
なのでギリギリの時間まで待ったのだが此処でタイムリミット。

 

用事を済ませて帰宅後、こんな状態に。

akdm-seichou (5).JPG

akdm-seichou (6).JPG

完全に伸長は終わってしまっていた。

普段ずっと家に居るのに何でこんな日に限って。

嗚呼・・・・・・

 

折角ならこれを食べる事に。

akdm-coock (1).JPG

 

ウ●コ臭では無いとは言え、慎重にグレバ部分を取り外す。

akdm-coock (2).JPG

 

因みに卵部分はこんな感じ。

akdm-coock (3).JPG

上掲の分解作業画像の「柄の根元部分の保護膜?」は

実際に成長した際にはこの様に卵の側に取り残される組織だ。

 

柄とマントを鍋で煮る。

akdm-coock (4).JPG

 

鳥ガラスープで味付け。

akdm-coock (5).JPG

彩りに細かく切った人参も入れた。

 

で、実食。

乾燥品とはまた違った柔らかい食感で(゚д゚)ウマー♪

 

いやぁ、早朝から交通費を掛けて京都まで行った甲斐があったよ。

色々な観察も出来たし、中々得難い経験だった。

 

今後の目標は名古屋東部でキヌガサタケの発生坪を探す事だな。

そして今度こそは成長段階を最後までちゃんと観察したい物だ。

そしてまたあの食感を味わいたいなぁ・・・・・・

 

 

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| 腹菌類 | 00:08 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
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コメント
 当店の近くの里山も、竹林だけは沢山あるので、いつかは見てみたいと思いつつ、20年経ってしまいました。
 その間、カゴタケやイカタケのように一度しか見たこともない茸も多いので、キヌガサタケもいつか見てみたいものです。
 最近はスッポンタケも、あまり見なくなりました。
| 古本まゆ | 2019/07/15 3:49 PM |

>>古本まゆさん
あの場所にはイカタケ、カゴタケもあったのですか!
それらも中々遭遇出来無い憧れのキノコですねぇ・・・・・・

キヌガサタケは豊田に出る、とある人から聞きました。
来シーズンは探索してみたいと思っています。
| まねき屋 | 2019/07/21 1:38 PM |
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